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それが、あなたの――

 今回はいつもと毛色がまったく違います。
 ただの妄想小説であり、唄を題材にした物語です。
 ど素人の作品ですが、お時間がある方は、もしよければお付き合い下さいませ。
 ※ネタバレあります、ストーリークエスト10章の。注意。







 世界を一人渡り歩く旅人が、死の刹那に交わったのは、ただの偶然か、導かれた必然か。其れは今を持って尚、判断はできなかった。

大地の先端、容易く崩れる地に腰掛け、少女は独り、赤く、狂おしい紅の地を見下ろしていた。
 その瞳に色はなく、ただ、頬を伝い落ちる雫だけが、感情を色濃く示す。
 流れる風は冷たく、其れに載せて紡がれ逝く音の葉もまた等しい。
 残された者が時折見せる、終わり逝く姿を前にして、その場へと居合わせた放浪者は、ただ、問いかけた。
「――終わる気か? クーナ」
 呼び掛けた言葉に、少女――クーナが跳ね返ったように振り向いてくる。紡がれていた音も消え、世界が静寂に包まれた。
 一切気付かなかったのか、色の無かった瞳の奥に、明らかな驚愕が見てとれた。
「ヴァントさん。どうして、ここに?」
 クーナは未だ、崖の淵。紅へ落ちうる位置から動かない。
 その問いかけに、放浪者――ヴァントは肩を竦め、静かに歩み寄りながら答えた。
「君を探していたと言ったら? この一週間以上もの間、連絡手段すら断ち切られて、心配しない理由もないしな」
「……探してくれたのなら、嬉しいですね。今、私を知って私を探す人なんて、いる筈ないから」
 壊れた笑顔で、彼女が笑う。其処に生者の意思はなく、まるで死んだ体だけが動いているようだ。
 否、間違いではないのだろう。彼女はまだ、死んでいないだけなのだから。
「――どうしてここにいるのか、聞かないんですか?」
「送った場所だろう、と当たりはついていた。何をしているのかについては、まぁ、見れば分かる」
 ヴァントは、警戒されない速さでクーナの近くに歩み寄ると、彼女と同じ様に腰掛けた。
 遥か眼下に広がる、灼熱の世界。火山洞窟を要する、龍族達の住処――アムドゥスキア。その星上、大地より遥か離れた地に浮かぶ、浮遊大陸。
 この場所から堕ちてゆけば、如何にアークスがフォトンの加護を受けているのだとしても即座に死する場所。
「……危ないですよ?」
 死に魅入られた者の囁きに、放浪者はただ半眼を送り返した。
「同じ場所にいる人間が、その言葉を話す資格はあるのか?」
「ありますよ。あなたは、私と違って」
「『生きているんだから』――とでも、言うつもりか」
 彼女の言葉を先読みして、一言一句、同じ言葉を叩き返す。
 クーナの表情に、また驚きの色が戻る。が、その反応も即座に消えうせ、又喪失者の表情へと帰る。
 少女は、そうして黙した。少年も、又黙した。
 彼女の言葉を引き出すために。彼女の意思を知るために。

「――もう、十分頑張りました」
 その沈黙が潰えたのは、十数分も経過してからの事。
 クーナが静かに呟いた言の葉には、静かな悲しみが滲み出ていた。
「私、もう、沢山頑張りましたよ? ハドレットが――ずっと一緒に居た弟を、自分の手で、殺してから」
「勘違いするな。ハドレットを仕留めたのは俺だ――君はその手助けをしただけだ」
「いいですよ、結局私の依頼なんですから。それから、ずっと、頑張ってきましたよ?」
 失われていた感情が、表情が、少しずつ少女の瞳に溢れ出す。
 一粒の輝きが頬を伝い落ちたと同時に、堰を切って零れ始めた。今まで堪え続けてきた反動のように。
「アイドルだって、もっと若い人達が出てきた。始末屋の仕事も、もう、今はなくなった。其れに、ハドレットの仲間達は、あなたが率先して送ってくれた――」
「だから、もういい。とでも、いうつもりか? 周囲の人間に何も告げずに、逝くつもりか」
 ヴァントは、静かに問いかけながら、少女の横顔を見つめた。
 彼女の独白は止まらない。雫を流し続けて、其れでも尚言葉を止めない。
「『あたし』でも『私』でも――『わたし』が何かも分からないまま、それでも頑張って来れたのは、ハドレットがいてくれたから」
 其処に居たのは、「アイドル」でも「始末屋」でも「六芒均衡」でもない、ただの「クーナ」だった。
「ハドレットがいてくれたから、笑う事が出来ました。ハドレットと共にいられれば、どんなに辛い事をされても、耐える事だって――」
 小さな背丈で懸命に頑張り続けてきた、ただ一人の「少女」にしか見えなかった。
「――そのハドレットすら、もう居ません。『わたし』が生きている意味も、理由も、失った――」
 生きていく意味を失って――
「――もう、静かに眠りたいって思うのは、おかしい事ですか?」
 命すら投げ出そうと願う、小さな「少女」にしか。
「――『私』が消えても、誰も覚えていないのだから」


 ほんの一歩、ほんの数秒。
 何かの意志が働けば、彼女が動き出せば、刹那の間に全てが終わる。
 其れが、少女にとっての幸せならば、少年の意志が介在する余地はない。
 されど――
「――俺は、逝かせたくはないな。それで、君が静かに眠れるのだとしても」
 其れが、少女にとっての幸せであろうとも。
 少年は、言葉と共に、死を願う少女の手を掴み取った。

「邪魔しないで下さい、私は――」
「――俺は、理由になり得ないか」
 静寂――沈黙。
 其れが破れたのは、ほんの十数秒後の事だった。
「――え」
「――これは、俺の我侭なのかもしれないが。死を望む君に生を強いるのは、酷い話かもしれないが――」
「どうして、ですか? どうして、あなたが、そんなことを――」
 ほんの微かに上ずった、震えた声のクーナの問いかけ。
 それに対して、放浪者は、小さく呟き言葉を零す。
「――今、君が生きている事を、俺は覚えている。この舞台で、ハドレットを送った事も覚えている」
 彼女と一時は共に歩んだ者の想いを、一欠片ずつ紡いでいく。
 彼女に、伝わるように、緩やかに、緩やかに。
「君が消えても、俺はずっと覚えている。其の小さな体で、何もかもを抱え込んで苦しんでいる君を、ずっと覚えている――君には、笑っていて欲しい。今は笑えなかったとしても、いつかの未来では」
 其れは、少年の本心であった。
 ただ相対した敵を切り裂いて、血飛沫の中を放浪し続けた者の。
 いつか芽生えた、大切な想い。
「――でも、もう、『アイドル』でも『始末屋』でもないのに――」
「――『アイドル』でも『始末屋』でもないのなら、君はただ、『クーナ』として生きればいい」
 人が一人、消えるということ。其の重みを、少年は理解していた。
 時々手助けをし、されていた赤髪の先輩も、何も分からない頃から色々と話をして、懸命に前を向き続けていた黒髪の少女も、戦場にしか己の意思を生み出せなかった戦闘狂も――
 誰かが居なくなる事の意味は、十二分に理解していた。大切な誰かが居なくなって壊れ逝く様も、理解していた。
「――君が生きる場所が必要なら、幾らでも其の場所を探すのに力を貸す。だから――『クーナ』には、生きていて欲しいんだ」
 だから、少年は少女の手を掴み取った。
 泣き続けて、消えようと願った少女の手を取った。
 彼自身の意思に従って。知らず芽生えた想いに従って。


「――良いの? 『わたし』が抱えてる物は、とっても重たいよ?」
「構うか。君に支えられて、俺が支えられない道理もない」
「――良いの? ヴァントにどれだけ迷惑をかけるのかも、分かった物じゃないよ?」
「迷惑なんぞ幾らでもかけろ――君が笑えるようになるのなら、幾らでも」
「――あり、がと。ありがとう――」
「――どういたしまして」

 一人、放浪を続ける少年の隣に、死人だった少女が一人。
 少女は少年に手を引かれ、少年は少女の手を引いて。
 そうして二人、少年と少女は歩き始めた。この世界の中を又、生き始めた。




 ――あとがき。
 以上、妄想小説終了しました。
 ここまで読んでくださってありがとうございました。

 全てが終わった後、クーナにとって生存理由って、最早何一つ存在していないと思うんですよ。
 で、自分が元々自殺志願の気があるのか、そういう立場に立った事を考えると、即座に死を選ぶだろうなと。
 其の中で、この作品を書き上げたのは、一つの曲と出会ったからなんですね。
 其の曲は私にとって、結構な衝撃でもあり、かつ、自分自身にも壊れかけた人にでも送りうる歌でした。
 其れを形に出来ないかなと考えた結果、こんな事になりました。
 チラ裏でしたが、読んで頂いてありがとうございました。翌日以降はまたいつものノリに戻ろうかと思います。
 それでは、また。

 使用曲:HeavenzP『それがあなたの幸せとしても』
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元ネタがわからないやw

マタボがまだ進んでないから...

まぁ、なんだ...

存在理由何て考えてる段階で、まだまだ瞑想中だよw

理由なんて関係無いし
存在してるかどぅかだからね(^_−)−☆

訪問返しにきましたo(^-^)o

創作小説読ませていただきました。マター5までしか進めてないので、クーナさんの事余りわからないのですが、ひとつの物語として惹き込まれました。
喪失感や存在意義…考えさせられるお話です。
ヴェントさんが男前でした('◇')ゞ

…ヴァントさんでした…失礼しましたm(_ _)m

No title

<り~ぜさん
 まだまだ瞑想中ですか……難しい;
 一度悪い方向に考え出すととことんまで悪いほうに悪いほうに考えてしまいますからね人間……まぁ、まだ存在している以上、とにかくも気にしすぎないほうが良いのでしょうけどね。

<雪猫さん
 訪問返しありがとうございます^^
 クーナのキャラクターは知れば知るほどに引きこまれる気がしますよ。喪失感は自身の経験上、結構洒落にならないダメージがあったりする場合もあります。
 そして自キャラ名とHNを同じにした事を今しがた後悔しましたw
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ヴァント

Author:ヴァント
 PSO2世界を旅する、気楽な放浪者の綴り草です。
ツイッターやってます。

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