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君と私でよかった。――前




 ※久しぶりの投稿になります、ご覧になっている方は少ないかと思いますが、もし継続してご覧になってくださっていたならばありがとうございます。
 そして申しわけございません。今回の話は、PSO2ではありません。
 それでもいいよと仰ってくださる方は、どうぞ続きからご覧下さい。





 月明かりに照らされた、人気の無い崖の上。
 静まり返った夜の海を眺めながら、少女は一人瓶を傾ける。
 誰もいない世界、たった一人で訪れた彼女はいつも通り静かに命の水を嗜む――
 されど其の日は、ほんの少しだけ違っていた。
「――おや。珍しい所に来る人も居るもんだね」
「……人の事は言えないと思うが」
 薄暗い月光の下、殆ど視界も利かない世界。
 相手が誰かも分からぬままに交わされた会話。
 其れは、小さな日常を、特別な時間へと塗り替える魔法のようで。
「まぁ、ゆっくりしていくといい。君がその手に持った瓶がウォッカなら最高なんだけれどね」
「人の物を盗ろうとすんな――生憎、安いウイスキーだ」
「そりゃ残念」
 お互いを知らぬままに投げあわされた会話は、とても軽やかで楽しげであった。




 ――バーンッ!
「響、おはよう! 今日から、新しい司令官が来られるって!」
 騒音、そして大音響。
 わくわく、という擬音が一緒についてきそうな大声で、少女――響は最悪な目覚めを迎えた。
「……雷、ちょっとうるさい……少し頭が痛いんだ、声のトーンを押さえてくれ」
 ズキズキとした痛みを放つ頭を抑えながら、ゆっくりと体を起こす。
「そうなの? なら、冷たいお水貰ってくるわね!」
 ――その声のトーンを抑えてくれたら大丈夫なんだが。
 言葉にする間もなく扉の前から気配が消える。
 どうせ飲みたかった所ではあるし、元気な妹――母親を相手にする気分になるけれど――の好意に甘える事にする。少々、浮かれて飲みすぎた。
 ――司令官か。
 寝巻きを脱ぎ捨て、制服に袖を通しながら、内心で呟く。どんな司令官なのかは知っておきたい。
 以前この鎮守府に着任していた司令官は、役所仕事のように正確な仕事だけを求めてくる、机の上だけで仕事をしている司令官だった。決して悪い人間ではなかったが、結局任期切れと共に本部の方へと戻っていった――其の際にどんな報告をしたのか知らないが、この鎮守府には後任の司令官が中々着任しなかった。
 深海棲艦の侵攻ルートからは外れていたから少数の艦娘しか居なかったし、現状維持なら司令官抜きでも行えたから問題は無かったけれど――
 ――頭が痛くて仕方が無いな、これは。
 響いてきた鈍痛に思考回路が強制的に途切れる。
 どうせ後で出会うだろうから、今は体調を回復させることを優先させるべきか――
 ――バーンッ。
「お待たせ! 貰ってきたわよー!」
「……あ、りがとう。声、落として――」
 ――回復するだろうか、これは。
 頭の中で轟音が跳ね回る感覚に吐き気すら覚えながら、そう呟くのが精一杯だった。


 ――キィ。
「――響ちゃん、新しい司令官さんが到着したのです。その、動けるのです?」
 とても控えめな声――雷から聞いたのか、とてもありがたい――で呼びかけてくれる妹――電の呼び声。窓際に座って休息していた響は、静かに部屋の入り口を振り返った。
「大丈夫だよ、電……ちょっと、ふらふら、するだけさ」
「大丈夫じゃないのです!?」
「冗談さ、ちゃんと自分の足で動けるよ」
「あの、完全に足がふらついてるのです……」
 慌てて助けに来てくれた電にしがみつく。思ったよりも回復しなかったらしい。
「電は、暁ちゃんと雷ちゃんと一緒にご挨拶したのです。ちょっと、体調悪そうだったのですけど、優しそうな人だったのです!」
「なら、私も早く行かないとね……ありがとう、電」
「どういたしまして、なのです!」
 はにかみ笑う妹に連れ添われ、ゆっくりと部屋の外へ。
 活動を始めた蝉の声が煩く響き、一々思考を穿ってくれる。じっとりと蒸し暑い空気の中、流れ落ちる汗を拭う。
「……熱いね」
「なのです……新しい司令官さんに、冷房入れて欲しいとお願いしたいのです……」
「予算の関係で却下されるのがオチだろうけれどね……」
「世知辛いのです……」
 たわいも無い会話を交わしながら、司令官の部屋――かつて使われていた、今日から使われる執務室の前に立つ。
 ノックしようとした所で、気付いた。中から聞こえてくる、誰かの話し声――
「――ではな。いつでも力になってやるから、何かあれば遠慮なく言って来い」
 そんな誰かの声と共に、扉が開く。其れに併せて横に。
 中から出てきたのは、立派な髭を蓄えた、海軍将校の制服を着ている初老の男性だった。
 不意に其の目が響達を捉えて、静かに微笑んだ。
「ん、君は……電君か」
「はい! さっきお話してた、響ちゃんを連れてきたのです!」
 ――この人が司令官、なのか?
 いつもの挨拶をしようとして、しかし、ふと思い留まる。確か、部屋の中にいる誰かに声をかけていた。
 良く見たら電も敬礼もしていない――なら、違う可能性の方が高そうだ。
「初めまして、響だよ」
「ひ、響ちゃん」
「そうか、響君か、初めまして。電君、響君、あいつは馬鹿息子で頼りない奴かもしれないが、どうかよろしく頼むよ」
 どうやら正解だったらしい。新しい司令官、と呼ぶには制服の勲章が余りに多い。だからと言って響に口調を改める気もないが。
 そして、中に居る新しい司令官は、どうやらこの男性の息子のようだ――艦娘の生意気さにも気さくに応じ、物扱いしない男性の息子。少なくとも、酷い人ではなさそうだ。
「はい、お任せ下さいなのです!」
「ありがとう、どうかよろしく頼んだよ」
 そのまま、テクテクとゆったりとした歩みで去っていく。
 其の姿が消えるのを見送ってから、そっと隣の電に問いかける。
「今の人は、提督のお父さんか何かなのかい?」
「なのです、とっても偉い人だって聞いたのです。電達艦娘に対してもとっても優しかったのです!」
 にこにこと笑って電が話す。実際、余り裏表のなさそうな優しい感じのする人ではあった。
「あ、そうなのです。司令官への挨拶を済ませないと」
 見送った電が扉をノックして開く。そのまま、即座に扉を開いて中に入っていくのについていく。
 少し前まで埃に塗れて何も無かった執務室には、山のようなダンボールと最低限の応接セットや執務机が配置されていた。
 そのダンボール達を前に若干疲れた様子の男性――きっと、彼が新しい司令官なのだろう。
「失礼します、響ちゃんを連れてきたのです」
 電の呼び声に、改めて気付いた、とばかりに此方を振り返ってくる。
 彼はにこやかに笑いながら、口を開いた。
「やぁ、初めまして――」

 ――あぁ、何となく予想はしていたさ。
 寝起きの自分と同じように若干青い顔をして、ダンボールの群れの中に立っている青年。
 とてもさわやかに笑って、聞き覚えの有る声で話しかけてきながら、言葉に詰まった彼に対して、響は平静を装ったまま敬礼を返した。
「『初めまして』司令官。響だよ、よろしくね」




「――やぁ、君か。また会ったね。それとも、司令官、でいいのかい?」
 月の見える崖――響が眠れぬ夜を過ごす場所。
 二回目の侵入者――月下の下こちらへ歩み寄るのは、今日から配属された、新たな提督。
 響はいつもの酒を片手に笑いかけた。
「あぁ、全く……好きに呼んでくれ」
「なら、適当に呼ぶさ。それとも、お兄ちゃんとでも呼べば喜ぶのかい? 男はそんなものなのだろう?」
「喧しい。どっから仕入れたそんな知識」
 岩に腰掛けたままからかうと、憮然とした顔で言い返してくる。
 綺麗に返って来る言葉の掛け合いを心持ち楽しみながら、響は静かに瓶蓋を開いた。
 今日はグラスも持ってきたから、其方に静かに移しながら、司令官へと話しかける。
「それにしても、随分昼間と口調が違うじゃないか」
 昼間の口調――『初めまして』の言葉を思い出しながら呟く。
 正確に言えば、初めましての時だけではなく、鎮守府にいる間の彼の言動は、いわゆる紳士的という奴だった。
『ん、どうかしたのかい? あぁ、別に報告書の誤字くらい構わないよ、次は気をつけてね』
 誰に対しても優しく、艦娘が少々のミスをしても頭ごなしに叱ることは無く。
 女性の扱い方を弁えている、というよりは、紳士的という方が明らかに正しかったと思う。
『冷房か、確かに随分と廊下は暑かったね。申請してみよう、君達が気持ちよく過ごせるなら、それが一番さ』
 キザったらしい台詞は似合ってないような気もしたが、それでも明確に艦娘の事を最優先に考えてくれて。
『それじゃ、挨拶回りに行って来るから、後を頼んだよ』
 秘書艦――今日は雷だったらしい――に仕事を頼んで出て行く姿も、様になっていて。彼が出て行った後は艦娘達が黄色い声で勝手な想像をして盛り上がっていた。
 正直、こんな場所で酒を飲むような人間には全く見えない。響も、昨夜に出会っていなければ、きっとこんな一面があるなんて知る余地もなかっただろう。
 そんな響の感想に対して、彼は隣まで歩いてきてから、疲れたような声を返した。
「そーいう風に教育されてたんでな、紳士的であれ、って。別に嫌じゃないんだが……一人の時まで、気ー張りたくはない」
「で、昨日たまたま私に出会ったと」
 答えると、彼が思い切り嘆息して肩を落とした。そのまま草むらにしゃがみ込む。
「まさか明日からの同僚とはなー……面倒だが、部下扱いの方が良いのか?」
「少なくとも非番の時まで上司と部下になりたくはないかな、私は」
「俺も堅苦しいのは遠慮したいし、適当な方がいい」
「りょーかい、こちらもその方が好ましいよ」
 力なく呟く彼に適当な敬礼で答えておく。
 弱みを握ったとも思わないけれど、誰も知らない一面を知っている、なんて思うと少しだけ面白い。
「――お前、また同じの飲んでるのか? 飽きないか?」
「命の水だからね、飽きるなんて事はないさ。君は……今度はなんだい? 缶?」
 右腕にぶら下げた袋を見ながら問う。
「麦酒だ。毎日ウイスキーを飲む気にはならん」
「高給取りだねー、毎日飲むお酒変えれるなんて、全く」
 常に第六駆逐隊の皆から隠れて、一番安いウォッカを購入し続けている響からすれば、選べるだけでも羨ましい話だ。
 しかし、彼はプルタブを起こしながら、静かに響から顔を背けて、ぼそりと言葉を呟いた。
「……賞味期限間近で安かったんだ」
「司令官、怒らないから正直に言って欲しいな? 今日何の為に外に出たんだい?」
 彼は答えずにじっと空を、満月を眺めて、ぽつりと言った。
「……月が綺麗だな、響」
「ほぅ? 誤魔化す為とは言え女性相手に其の言葉を選ぶのかい、君は」
「あー、流石に失礼だったか?」
「いや、気にしてはいないさ。配属初日でそんな行動よく取れたな、って感心してる位だよ」
「怒ってるようにしか聞こえないが……ちょうど昨日で飲み干しちまったからなー、仕方ない」
 うんうん、と誤魔化す様に頷く司令官に、響も仕方ないな、と肩を傾げて同意した。
「成程、それは仕方ないね。女性を誑かす悪い司令官だときっちり理解しておこう」
「其の言い方はやめてくれ!」
「だが断るよ。それこそ、君の『月が――』の返しなら、優しい仕返しじゃないかい」
「声真似上手いなお前……わーった悪かった」
 どこか力の抜けた表情で笑っている司令官に、響もまた同じように笑っていた。
 何故か、わからないけれど。こんな下らない、意味も無い掛け合いを楽しんでいる自分がいた。
「最高級のウォッカを持ってきてくれたら、私はそれで許すよ」
「其れを許してるって言うのか、子悪魔め」
「こんな可愛い女の子にいきなり求婚した事実を消して上げようとしてるんだ、其の位安くはないのかい?」
「あー、分かったよ、仕方ねぇ……マシな奴準備しといてやるよ、いつかな」
「Спасибо(ありがとう)。早めに頼むよ」
「すぱしーば?」
「海外艦も増えてるんだ。指揮する者として語学も重要な要素だよ、司令官」
 半眼で呟きながら、ウォッカを静かに嗜む。
 分かる訳が無いと思いながら言ったのは、心の中にそっとしまって。
「さ、今日はとりあえず飲もうじゃないか。君も飲みに来たんだろう?」
「なんか釈然としないんだが……まぁ、ホントに良い月だしなー。飲まないのも馬鹿らしい」
 呟きながら、司令官が缶を煽る。
 そうして吐き出した吐息はどこか満足げで、とても自然な笑い方。
 だから、響は思ったままの言葉を口にした。
「君はそんな風にしてる方が似合ってるよ。無理に笑ってる似非紳士なんかより」
「……誉められてるのか?」
「勿論。さ、まだ夜はこれからだよ」
 呟きながら、命の水をまた喉へ。
 喉頭が焼ける感覚を味わいながら、響は司令官ににんまりと笑いかけた。


 ――あぁ、全く。また少し、飲みすぎたかな。
 真夜中――夜戦馬鹿の絶叫が物理的に沈黙させられる頃。
 部屋に帰りついた後、窓から薄暗く光る外灯を眺めながら、ほんの少し前の会話を思い出す。
 二日目の――司令官と艦娘、としては初めての――夜を静かに飲み明かしながら、紡いでいた軽口の交し合い。
 それはとても暖かくて、とてもとても楽しかった。
 それに、何よりも。普段の響――第六駆逐隊の響ではなく、ただ一人のウォッカが好きな少女で居られるのが、嬉しかった。
 ――私も、司令官と同じ。
 皆の事が嫌いな訳じゃない。皆と居られる事。助けられなかった、守れなかった姉妹達と共に過ごせる日々――其れは幸せな日々。
 なのに、思い出す――喉を焼くウォッカの味と共に過ごしていた日の記憶。風雪に晒される、極寒の地で乗組員達が楽しんでいた酒宴のイメージ。
 今の、四人で居られる瞬間は間違いなく好きで。それでも、良いとか悪いとかではなく、ただただ訳も分からず、飲みたくなる事がある。
 けれど、姉妹達を心配させる訳にも行かなくて――だから、普段は心を隠すようにした。
 ――けれど、司令官と一緒なら、あっさりと心を開けた。
 勿論、夜の間で二人だけだから、とも言える。煙草は吸わず、人目を隠れてお酒を飲む。そんな、ちょっとだけ悪い事をしてる二人だけの時間。
 それは、第六駆逐隊の艦娘から、ウォッカが好きな一人の少女になって無邪気に笑えた、初めての事だったから。
 ――また、ウォッカを調達しておかないといけないな。
 酔いが回る頭を押さえながら、響は一人、静かに笑った。



 それからも、毎晩、という事もなかったけれど――気がつけば其の場所へ足を向けるようになっていた。
「やぁ。今日は僕の方が遅かったのか」
「早くに終わらせたんでな」
 鎮守府の裏、切り立った崖に苔むした岩と、伸び放題の雑草。お世辞にも綺麗な場所ではないその世界。
「ほれ、響。言ってた奴だ」
「おぉ……Спасибо。実に良い日だ、今日は」
「俺の財布が大破したことを除けばな」
「私のような美少女と一緒に呑めるんだ、其の位安い物だろう?」
 月明かりだけが綺麗な場所で、小さな岩に腰掛けながら、草むらに座り込む司令官と言葉を交わす。特別でもないけれど、ちょっと変わった二人だけの時。
「やぁ、響。すまないが、一仕事頼めるかな?」
「構わないよ、司令官。その青い顔をどうにかしろというなら、今すぐに吐かせて上げよう」
 昼の間、皆の前では別に秘書艦をしている訳でもない、単なる司令官と艦娘。
「……ふむ、たまには悪くないね。ウイスキーという物も」
「ウォッカは俺にはまだ早いみたいだな……ウイスキーより喉を焼きやがる……」
「君はまだ喉がお子様なのかな」
「お前にゃ言われたくねぇ」
 月が空に輝く頃には、艦娘と司令官ではない、気心の知れた一人と一人になって、くだらない言葉と酒を楽しんでいる。
 お互いに仮面を外して、無邪気に笑っていられる、特別な時間――それはとても心地よかった。



「なぁ、響」
「なんだい?」
 この司令官と初めて出会ってから、優に一月は経過した頃。
 仕事場でもないのに珍しく神妙な面持ちでの問いかけに、ショットグラスを飲み干してから返答。
 何を聞かれるのか、少し緊張しながら答えを待つ――
「明日、ちょっと付き合えるか? お前、確か非番だったろ」
「あぁ、暁は遠征、雷と電は哨戒任務予定だしね。お陰で暇が確定しているよ、狙ったのかい? 悪い人だね」
「わざわざ狙ってんな事しねぇよ」
「知ってるさ。それで、どこに行くんだい?」
 肩をすくめて答えると、司令官はやりにくそうに頭に手をやった。
 彼は少し苦いような、其れで居て迷うような表情を浮かべながら、手にしたグラスを一息に煽る――思い切り咳き込んだ。
「何をそんなに混乱しているのかは私には分からないが、落ち着きなよ。君はまだウォッカを一気に飲めるほど喉は強くないだろ?」
「ゲホッ、ゴホ……忠告痛み入る、とかいう奴、ゲホッ」
「で、一体何だい? 何でも、ではないけれど、私にできることならやろうじゃないか」
 軽く呟きながら、ウォッカをショットグラスに並々と注ぐ。
 其れを一息に煽って、
「なら、明日。俺とデートしてくれ」
 全部吹いた。

「……! ……! な、なんだ、って?」
 涙目になって咳き込みながら、司令官の方を見やる。
 彼は顔を少し紅くしながら、ふいっ、と顔を横に向けた。
「デート! 男と女が付き合うとかいうあれだ! ムードだの手順だのが間違ってるとか言うな俺は正直知らないんだデートとかいうもののやり方は!」
 早口でまくし立てられた言葉に、思考回路が若干パニックになる――全然落ち着かない中で、それでも必死に言葉を理解しようとする。
 ――デート、とは……えっと、逢引、とかいう奴なのだろうか?!
 自分自身全然落ち着かない、思考が纏まらない――しかし。
「――司令官、どうして相手が私なんだい?」
 不意に浮かんできた疑問に、思考がクリアになる。
 人と艦娘、違う生き物同士――などと言うつもりは無い。
 しかし、司令官の話し方が余りにも大ざっぱというか雑すぎて、どうにも単なるデートの申し込みには思えなかった。
 予想が当たっていたのか、彼は深い深い嘆息の後、自分のグラスにウォッカ――響が今日、あげた物――を注ぎなおした。心を落ち着けるように、今度はゆっくりと其れを舐めるように嗜みながら、
「そのな……もう少し先になるんだが、親から見合いをするように言われてな」
「お見合いか。確かに君もいい歳だからね」
「まだ二十代前半だっつーの。で、どうにも親の仕事絡みで持ち込まれた話で……」
「断れない、と。だが、君は他に好きな娘が居る訳ではないだろう?」
 首を傾げながら、淡々と言う。
 昼の間、司令官の事は艦娘の間でも良く話題になるが、母親のように接する雷はともかく、他の艦娘――特に提督の事が好きだと明言しているような娘達――の間では、比較的司令官の色恋についても話題に上る――特に前日の秘書艦に選ばれていた艦娘が巻き込まれているが。
 以前響も其れに巻き込まれたが、どうにも司令官に想い人の存在はなさそうだ、というのが艦娘達の中で通説になっている。
 あくまでも噂話でしかないが――彼女達のそういう嗅覚は、結構あてになる事が多い。
「もし居るとしたら申し訳ないが、少なくとも今の時点で君に悪影響があるようにも思えないが。それとも、恋愛至上主義、とかいう奴なのかい?」
「いや、そこは別にどうでもいいんだ。確かに、今恋人が居るわけじゃねぇし、うちの親も見合いらしいからな」
「成程。なら、何故私とデートしようなんて事になるんだい?」
 本題。
 そもそも、見合い相手が居るのに、其の前にわざわざ他人とデートをする奴が何処にいるのか。
 今の姿はどうあれ、昼間の艦娘達に優しい彼も間違いなく彼なのだ。
 少なくとも女遊びをするような人間ではない――できるような軽い男でもない。
 響の質問に、彼は言葉に詰まって、しかし諦めたように、訥々と言葉を零した。
「……その、自慢じゃないが、俺は今まで此処に来るまで、女子と関わったことが無いんだ」
「本当に自慢じゃないね」
「うっせぇ。それで、その……見合いの後に、ほら、気に入られたらデートをしたりするんだろう?」
「あー、まぁ……後日ではあるが、そういう話は聞いた気がするよ」
「其の時に、頓珍漢な事をやらかさないか不安でな」
 ――つまりは、デートの練習相手か。
 ほんの少しだけ、胸に痛みを感じた。気のせいだろうけれど。
「なんで相手が私なんだい? 誰だって、良いんだろう?」
「響が良いんだよ。一番、なんつーか、安心する」
「……そうか」
 間髪入れない返事に、顔が少し綻むのが分かる。さっき感じた胸の痛みも、解ける様に消えていた。
「そう言われたら断れないよ。なら明日、何処で待ち合わせるんだい?」
「え、一緒に行きゃいーだろ?」
 何を馬鹿なことを、とばかりに言い放った司令官に対し、響はただ半眼を向けた。
「明日の秘書艦にどう話すつもりなんだい君は。私とデートに行くとでも真っ正直に言う気かい?」
「え? ……あー、不味い、か?」
「そもそもデートとは、まず待ち合わせから始めるものだよ。なら待った場合や待たせた場合も想定すべきではないかい?」
 ――明日、まともなデートが出来るのだろうか。
 デートに誘われて心躍るどころか不安で一杯になりつつある中、響はただただ頭を振った。




 ――思ったより早く着いてしまったな。
 翌朝。
 雷と電が哨戒任務に出た直後に服を着替えて、最寄から一つ離れた町――その駅前。
 普段の艦装を外し、白のワンピースと麦藁帽子――私服として持っていたもの――を纏って、ベンチに一人腰掛けながら、響は一人空を見上げていた。
 約束していた時間の、一時間前――主に自分自身に問いかけたくなる言葉はあるが、この状況をどう打破するかの方が重要だ。何せ、見た目は間違いなく子供なのだから。
 ――全く……本当にどうしようか、この状況。
 周りから明らかに心配されている視線が向けられてるのが分かる。当たり前だ、自分だって逆の立場なら心配する。警察か、小学校にでも連絡されていてもおかしくはない。
 こうなったら、一刻も早くこの場所を離れるか、彼が辿りついてくれるのを待つかのどちらかだ。
 ただ、普通に考えれば、一旦この場所を立ち去って、どこかで彼を待つ方が――
「――響、か? 随分早いな」
 呼び声に、反射で振り向く。
 駅の方から歩いてくる、古ぼけた服を着た、響が良く知っている顔の男性。
 そして、明らかに砕け切った声――いつもの昼に見る紳士的な司令官ではない、夜に響と共に居る時にだけの、響にとってのいつもの彼。
「人の事は言えないんじゃないかな?」
 少しだけ顔を綻ばせながら、響はいつもの調子で言葉を返した。


「なぁ、響、これってそういう事じゃ――」
「違うだろう。君の意見も最もだが――」
「いや、でもよ。こいつの行動って、ほら――」
「いや其の前に、だ。司令官、これをデートの一部と言い張るのはかなり無理があるんじゃないだろうか」
「え?」
 何処の女性がデートに来たのに、男と喫茶店で適当に買った推理小説のストーリーを紐解くなんて事を望むのか。
 全力でそう突っ込みを入れたかったが、余りにも不思議そうな顔をしているので、つい言葉を捜してしまい。
「君はまず、デートという物を勉強してから来るべきではなかっただろうか」
 余計酷い言葉になってしまった。
「駄目か?」
 とはいえ、砂糖入りのブラックコーヒーを飲みながら普通に聞いてくる辺り、内心のダメージは殆ど存在していなさそうだ。あれ位で丁度良かったかもしれない。
 響は静かに嘆息して、声を控えめに、彼へと向けて話し始めた。
「初対面だったら、今すぐひっぱたいて帰るレベルかな」
「そ、そんなに酷いのか……?!」
「私だから許しているだけだよ」
 話しながら、自分で頷く。
 少なくとも、見合い相手にやっていいデートではない。
 響のように気心のしれた相手との日常を楽しむ意味合いでのデートなら、許されてもいいかもしれないが。
 暮れ掛けている夕暮れの空を力なく見つめてから、今日を振り返る心地で、響は静かに話し始めた。
「まず、お昼になった頃合の時点で、どうして昼食に誘わなかったのか」
「いや、俺空いてなかったから」
「相手の事を考えようか司令官。別に女性側から言い出す事が悪いとは言わない――ああ、ただ牛丼屋はおすすめしないな」
「響、確か嫌いじゃなかったよな?」
「確かに良く食べるし好きな味だが、初めてデートをする時に誘う場所ではないよ。相手の服装次第だけど、せめてカフェか何かにしてあげてくれ」
 注意と共に自分のクランベリージュースを飲みながら、何となくは思う。
 本番前にデートの練習をしようと思った事だけは評価しても良いかもしれない、と。
「次に、映画館を選んだのは良い――良いんだが、まずは相手にどれが見たいか聞くように」
「いや、俺ホラー系若干苦手だし」
「ならホラー以外を候補に挙げればいい」
 そもそも、相手がホラー好きだった場合はもうどうしようもない。本当にどうする気だったのか。
「第一、選んだ映画のセンスも酷かったよ」
「そんなにか? 響、かなり笑ってたじゃないか」
「余りのダメ映画っぷりに苦笑してただけだよ。どこの恋愛映画に下着を被ったヒロインが居るんだい」
「いないのか?」
「居てたまるものか。暁に見せたら泣かれそうだよ、色んな意味で」
『レディーの恋愛って……こんな事しなくちゃいけないの……?』
 とでも言いながら涙目で確認してくる未来しか想像つかない。そうなったら、とりあえず一発司令官を打ち抜いて殴り飛ばして、それから改めて暁の説得に掛かるだろうか。
「其れに、映画館の後。どこの誰がデートの途中で相手放り出して犬に構う男が居るのさ」
「いやでも、響も可愛がっていただろ」
「否定はしない、可愛かった」
 確かに犬は可愛かった。デートというのを忘れて二人でつい可愛がってしまった。
「ただ、流石にペットショップでアレをやるのは不味かったと思うな。二人とも感極まって手続きをしたあの子犬、どうするのさ」
「とりあえず鎮守府皆で可愛がれるペットにしようかとは考えていたが。あ、迎えの時間は大丈夫か?」
「まだ一時間はあるよ、その時に一通り必要な物もきちんと用意してくれるそうだ。今日は其れでいい。だが、本番では絶対やめてくれ。向こうのお嬢さんが余りにも可哀想だ」
 嘆息しながら、若干強めの口調で告げる。
 相手の女性も仕事絡みとはいえ、いやだからこそ、きっと気合を入れて綺麗な服装で来るだろう。
 気合を入れていざデートに来て見たら相手の男が犬に夢中だ、なんて事になったら余りにも哀れすぎる。
 相手がもしも犬にトラウマがあったりしたら、もう。
 ――これは断らせるほうがいいんじゃなかろうか。
 自分の感情とか何もかもを放り投げた上で、響はそんな事を考えていた。
「とにかく、君に必要なのはデートという物についての情報だと思う。女の人と二人で一緒に外に出たらデート、になる訳ではないのだから」
「……マジか」
「マジだね」
 やっぱりか、などと思いながらただただ肩を落とす。
 デートのデの字以前に女の子との交流関係がなかったと聞いている。
 そして、デートに関しての下調べよりは仕事を優先する、内面は真面目な提督だ。
 まともな知識もなく、それでも彼なりに女性相手の行動を考えた結果、とすれば――
「……そうだな、なら。今日は、これでいいさ」
「お、おぅ……今日はって事は、やっぱり、世間一般的には駄目なのか?」
 顔を伏せながら死にそうな声で呟く自分の上司に対し、響はにっこりと笑いながら頷いた。
「当たり前だよ」
「マジか」
 絶句して固まる彼に、響は静かに笑ったまま、ゆっくりと言葉を続けた。
「だから。また、誘ってくれないか?」
「え?」
「別に一回で完璧に出来る必要はないさ。だからまた今度、改めて誘って欲しい――練習でも、普通のデートでも構わないから」
 ――なんとなく、言っていて恥ずかしくは思うけれど。
 自分の心音が、どことなく大きく聞こえる。
 断られたら――そんな事を考えたら、心音が少し痛いぐらいに感じてきた。
 初めてデートを提案した時の彼も、もしかしてこんな気持ちだったのだろうか。
「むしろ良いのか? 響にとって迷惑じゃないか?」
 気遣うような声――責めるとかそういった事ではなく、明確に響を案じているというか、心配しているような。
 心音の高鳴りが心地よさに変わる。痛みを隠すでもなく、呆れるでもない感情のまま、クランベリージュースをストローで吸い尽くす。
「世間一般からしたら駄目でも、私はこんなデートも嫌いじゃないよ」
 夜の二人の関係を、そのまま昼にも持ち込んだような、恋愛とも友情とも違う繋がり。
 駄目な映画を見て笑って、可愛い犬に二人とも夢中になって。適当なお昼を食べて、三文小説のストーリーを二人一緒に紐解いて――日常でも、特別でもない不思議な時間。
 其れは、とても楽しくて、心地よかったことだから。
「だから、次も楽しみにしているよ」
 響は心から笑いながら、本心のままにそう言えた。
「――ありがとな」
「Нет проблем(気にしないで)」
 司令官が苦く、それでも嬉しそうに笑う。
 彼自身も楽しかったのなら、其れで良い――初めてのデートを、彼が嫌な気持ちとか沈んだままで終わるのは嫌だから。
「それに、今夜の食事もまだなんだ。夕食には、期待してもいいのかな」
「あぁ。上手いボルシチを出す店があるって聞いたんでな、確か好きだったろ?」
「Ура!(やった!) それは楽しみだ!」
「喜んで貰って何より――相手が好きな物を選ぶのが夕食のルールとも聞いたからな」
 今日一番に、誇らしげに彼が笑っている。楽しげで嬉しそうな笑顔に、少しだけ頬が熱くなった気がした――きっと、気のせいだろうけれど。




「――で? 今日は何が有ったんだい」
 初めてのデートから数週間が経過した、月下の逢瀬。
 いつもの岩場に腰掛けながらウォッカを煽り、響は眼前で明確に沈み込んでいる男性を見下していた。
 明らかに強い酒を煽るように飲みながら沈んでいく司令官を涼しい顔で見下しながら、ただただ返答を待つ。
 昨晩の、初デートに緊張しきっていた様子とは打って変わって明確に死に掛けている彼に、その理由を話せというのも酷な事かもしれないが、話してもらわないとそもそも何も進まない。
「失敗、したんだ」
「だろうね」
 二、三回ほどウォッカを煽った所でぽつりと零れた呟きを、響は静かに肯定した
 初のお見合いでのデートが成功していたなら、多分彼は嬉々として報告しに来ている。
 どうせ失敗したんだろうなというのは、此処に来た時の顔つきからして確定だった。
 とはいえ、少々疑問もある。練習というか、彼とのデートはあの後も数回は行った。電車で二人のんびりとした旅路もしたし、人並みには上手なデートが出来るようになっていた筈だが――
「――初対面での対応は、間違ってなかったと思うんだ」
 ややあって、若干くぐもった声で、ポツリポツリと彼が言葉を零し始めた。
「そうだね。君がそこで躓くとは正直思ってない」
 初対面時――彼と向こうのご両親も同席する中での会合だ。そして素を出す必要もない、紳士的な司令官を演じていられる場所。
 そんな場所でヘマをするほど馬鹿でも無能でもないのは、響のみならず他の艦娘も大体が知っている。
 なお、見合いがあったことについて知っているのは響を含めた極一部の艦娘のみである。
「今日のデートが終わった後、このお話は無かったことに、と連絡が入った……」
「一体何をしたんだい君は」
 どう考えても何か失敗するとしたら、やはりこの初デートのタイミング以外は有り得ない。
 響の質問に、彼は顔をうつむけたまま、思い出すように言葉を呟き始めた。
「とりあえず昼に誘って……向こうも空腹だっつったから、近くのレストランに連れて行って」
「それは所謂ファミリーレストランという奴かい?」
「そこしかなかったからな。そんで、映画館行って、彼女が見たがった恋愛映画見て」
「寝てないだろうね?」
 ジト目で見やる。其れに、彼は顔を上げてかぶりを振った。
「当たり前だろ。あー、ただ正直、映画の内容がなんとも寒くて、目のやり場に困って、話あんま覚えてないな」
「……それで、後は?」
「うろ覚えながら、喫茶店で話すことになったから、何とか向こうと話併せて、最後に駅まで送った」
「ほう。司令官、君は確か今日、車じゃなかったかい」
「ん、よく見てんな。帰りに酒買って帰るつもりだったからな。車で駅まで送ってお別れだ」
「なるほどね」
 彼の話を最後まで聞いて、響は静かに頷いた。手にしたグラスにウォッカを注ぎながら、静かに嘆息をつく。
「私ならビンタしてお別れだね」
「其処まで酷かったのか俺?!」
 愕然と顔を上げた彼を、響はただただ半眼で見下ろした。
 全く理由を分かっていない――本気で驚いている顔。
 ――君とデートさせられた相手がかわいそうになってくるね、全く。
 女心のおの字も分かっていなさそうな彼に、いいかい、と前置きを置く。その上で、問題点を羅列する。
「いい所のお嬢さんとの初デートで、ファミリーレストランに行くのはちょっとアレだ。とはいえ、まだ許せる範囲ではあったよ」
 提督の給料は安月給と聞いている。だから、高級な店に連れて行けとまでは流石に言えない。
 正し。
「――相手が見たがった映画うろ覚えで見て適当に話を併せるのは無しだ」
 其処だけは、間違いなくアウトだ。
「いや、流石に見てて恥ずかしくなっちまって……なんでキスシーンとかベットシーンとかあんなに長いんだよ、完全に年齢制限入るレベルじゃねぇか!」
「君は思春期の中学生か。そして最後だ――駅まで歩いて見送るならともかく、車で駅まで送る位なら家まで送る位はしなよ。向こうが嫌がったのかもしれないけれど、多分話を振ってすらいないだろう?」
「あ、あぁ。わりと一杯一杯で、そこまで気は回らなかった」
 予想通りの返答に、嘆息する。流石にフォローできそうもないから、本心のまま言葉を投げつける。
「相手の立場になって考えてみなよ。初めての二人きりのデートで、何処にでもあるレストランで昼食をして、見たかった映画は楽しんだけれど相手はその感動を全然共有してくれなくて、車に乗っているのに駅でお別れ――流石にちょっと酷すぎないかい。嫌われてるのかなと思ってもしょうがないんじゃないかな」
 此処まで言って、少し彼を観察する。
 彼は、少しの間目を閉じて――つぅ、と一筋の汗が頬を伝って。
 ややあって、目を開いた彼の表情は、半分凍りついていた。
「……やらかした?」
「盛大にね」
 ガクゥ、と分かりやすい程に彼の体から力が抜けた。とはいえ弁解の余地も無さそうなので、大人しく自分のウォッカを啜っておく。
 それに、どこか、安心した自分が居る――何に対してと言われたら、正確な返答は難しいのだけれど。
 ややあって、彼が静かに息を吐き出した。
「……まぁ、丁度良かったけどな。向こうから振って貰えたら、暫くは親も見合い云々言い出すこともないだろうし」
「おや、なぜだい? 美人な人じゃなかったのかい?」
「いや、間違いなく美人だったわ。俺には勿体無さすぎる位の」
 よっこらせ、と座りなおして、彼が酒をグラスに注ぐ。
「なら、なぜだい?」
「確かに綺麗な人だったけど、本音を言えば……あの人とのデートよりは、響とデートとかこうして酒飲んでる方が、よっぽど楽しい」
 静かに笑って、彼は気負い無くそんな言葉を呟いた。
 ――あぁもう全く。何でそんな言葉を、そうあっさりと言ってくれるのか。
 其の言葉の一言一句を味わいながら、響は声に出さずに呟いていた。
 体が若干熱くなって、頬が上気したみたいに暖かくなって、顔が勝手に綻んでいく。
 そんな響の状況にも気付かず、彼は涼しい顔で、舐めるように酒を味わいだしている――なんとも素知らぬ顔なのが、どこか腹立たしい。
 何となく気取られたくなくて、彼から視線を外して夜空を見上げる。
 響達を見て楽しげに笑う三日月の空を見つめて。
 少女は静かな言葉を、零した。
「……спасибо」

 ――ドォッ……!
「ん、花火か――何か言ったか?」
「――いや、なんでもないよ」
 夜空に咲く大輪の花――少し遅い時間から始まったらしい、近くの町の花火大会。
 二人以外誰もいない特等席で眺める花火は、今まで見てきた何よりも美しくて。
「――綺麗だね」
「あぁ、全くな」
 二人の間にあった会話は、それだけで。
 それだけで、十分だった。

 結局、やらかした行動の成果と言えば良いのか、それから彼に対しては一度たりとも見合い話が来ることは無く。
 その代わり、司令官と響が揃って消える日が増えたことが、時折風の噂で流れるようになっていた。


 ――あとがき。

 かなり長くなってたので前後編です。唄物で前後編って凄いひさしぶりな気もします。
 そしてPSO2ではなく、艦これです。

 えぇもうなんかすみません……今はPSO2以外は全てpixivの方に書いているのですが、書き始めてから余りにも時間が経過してしまったので、ちと心機一転的な気分で前後編に分けて投稿しようと思いまして。
 その場として、このブログに一旦投稿したものです。
 もしよろしければ、一時の楽しみとして、後編ともどもよろしくお願い致します。
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