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The changing world ~変転する世界・起~



 Possible World ――存在し得る物語――
※同時間軸、別視点の物語(相方の別ブログ)
  目を疑うべき話      
  目を開けて見るべき話 前編 後編  








 大変長らくお待たせいたしました。
 歪められた世界線を殴り飛ばす物語、始まります。










「ヴァント、ソラシズク。歴史改変、今回あんた達がやるのはやばいみたい」
 アークスシップの片隅――崩れ落ち、未だ回復にいたらない、崩壊したストリートエリア――ユキナミの消失した場所。
 未だ崩れ果てたまま、復興の目処すら立たない区域。
 人影一つ見られない筈の世界に、幾つかの影。
 その中の一人、褪せた灰色髪をポニーテールに束ねた、勝ち気な少女の発言は、酷く歪んで聞こえてきた。
「サラちゃん、それはどういう意味ですか?」
 諷雫の問いかけに、サラとよばれた少女は一つ頷いて、
「今から説明するわ。ヴァント、この子のサポートからの情報あるでしょ? それ、あたしに回して」
「これか?」
 ヴァントは言われるがままに、自分用の端末を展開した。そうして、該当データを開いたまま、サラへと見せる。
「それそれ。でもって、当時のデータがこれで、あたしが集めた現場のデータと、シャオの予想データを照らし合わせて――やっぱりね」
「……一人で納得せずに、さっさと話せ」
「分かってるわよ――当時、あの場には大型ダーカーが三体いた。二体は倒したっぽいけど、一体が自爆した。そんなデータが出てるわ」
「……自爆? 一体、どんな奴が」
 サラの呟きに疑問を覚え、そのままに口に出す。自爆を行うようなダーカーは、今まで放浪を続けた中でも、一切見かけたことはない。
 されど、ヴァントの疑問に、彼女は静かに頭を振った。
「あたしにもそれは分からない。ただ、重要なのはこいつの正体じゃなくて、ここにいた三体が同種である可能性が高いということ――つまり、三体とも自爆が出来るの」
「三体、とも?」
 諷雫が口に手を当てて驚く。その横で、ヴァントは冷たい汗が流れ出したのを感じた。
「――おい、まて。それは――」
<――最悪の結果に繋がるね、君たちにとって>
 言い淀んだ問いを引き継いだのは、最後の人影――シャオ。
<そして、その自爆を起こすタイミングを決めてるのはおそらくルーサーだ>
「つまり、椿君が言っていた罠は、私達が助けに行ったタイミングで自爆することですね?」
 諷雫の確認に、彼は沈痛そうな表情を浮かべて頷いた。
<だろうね。実際、一体なら周囲一帯が破壊され普通のアークスは即死>
「三体が揃ったらどれだけの規模になるか、ね」
<僕の予想では、市街地エリア半分が荒地になるかな>
「――洒落にならんな」
 淡々と話されたシャオの言葉に、ヴァントはやれやれと肩を竦めた。
<だから、君達――いや、言い直そう。ヴァント、君が範囲に入ったら、迷わず奴は自爆させる>
「つまり、俺達とバレなければ良いんだろう?」
 そんなことを話すヴァントの手には、懐かしい黄色の羽毛に包まれたスーツ。
 幸運を呼ぶ黄色の鳥に似せた、ラッピースーツ。
 二着。
「ほれ、諷雫」
「うー、リリーパちゃんはないんですよね? じゃあせめてセントラッピーちゃんで」
「あんた達それでバレないと思ってるなら本当の大バカだからね」
 実に呆れた目でサラが呟く。非常に冷たい、凍てついた声というのが正解かもしれない。
「あんた達の位置なんて、あいつにはバレバレよ。他の惑星ならともかく、市街地なら誤魔化すなんてシャオに頼まないと無理」
<でも、今回は僕が手を貸しすぎるとまずい。一度は防ぐことが出来ても、敵は何度でも同じ襲撃を行えるからね――だから、君達の手によって歴史が変わったのではなく、単純に失敗したという状況に落ち着けたいんだ>
 そうしないと、何度でも襲撃が起き、改変前よりも甚大な被害がでてしまう。
「……俺たちが直接に関与せず、失敗させろ、と」
<あえて言うなれば、君達がユキナミを直接助けることなく、彼を助ける必要がある、だね>
 シャオの表情は、酷く真剣なままで。
<その為に、いるじゃないか、君達には。君達の信頼出来る、仲間達が>
 そうして紡がれる言の葉は、僅かな躊躇いすら感じられないまま。
<彼らはあの時、ルーサーの筋書き通りに右往左往するしかなかった。君達が変えるべきは、彼らが本来の動きが出来るようにすることさ>
「それが、ユキナミを助け出す未来へとつながる、か」
<その通り――どうやら、鍵は揃ったようだね>
 シャオの言葉の直後に、運命板――シオンから引き受けた其れが輝き始めた。
 過去改変――その、全ての条件が整ったという事。
「――任せておけ」
 彼が一つ呟き、光り輝く運命板を手に取った。
 それは、流浪する未来の先行きを歪めるように、崩壊する現実を存在しない世界へと巻き戻すように、神々しく瞬いて――


 そうして、歴史改変は始まった。




「うっし、買い込んだ買い込んだー」
「ぴぴっ!」
 大きなビニール袋に、酒とアテと果物を詰め込んで。
 楽しげに踊るラピピと一緒に、部屋までの道を歩いていく。
 ユキナミとリユイのデートは十分に見送った。
 最後まで出歯亀するのも野暮という物、いつものように部屋でのんびり飲んでいるに限る。
 ――全く、いいなぁホントに――
 ピン、と。通信が繋がった音が聞こえたのは、そんな思考の直後だった。
<――リリィ、聞こえるか?>
「んぇ、マスター?」
 ――珍しい。
 通信向こうから聞こえてくる声に、内心で呟く。
 普段彼が連絡してくることなどない。用事がある時は帰ってきて直接話すし、通信を使う時は緊急事態の戦闘状態であることが多いのに。
<今どこにいる?>
「さっきまでユッキー達と一緒だったけど、今から帰るとこ」
<駄目だ>
「へっ?」
 いきなりの駄目だし。訳が分からない。
 困惑するこちらに構わず、声は無感情に続けてきた。
<そのままユキナミ達の傍を離れるな。せめて居場所だけ把握しておけ>
「どしたんマスター、いきなり」
<詳しい説明は出来ん。だが、頼む>
 ――頼む、か。
 自らのサポートには、一方的に命令を下すのが本来のマスターとしての有り様。ましてや、願うように指示する事など、サポートに対する扱いではない。
 対等な人として見るが故のお願い。それは、リリィにとっては――全てより優先するには、十分だ。
 それに、
「マスターからのお願いじゃ、リユっちに睨まれてもやらなきゃ駄目だよね」
 ――まぁ、ちょっと見たくない訳じゃないし。
<しっかり野次馬やっておけ>
 プツ、と通信が途切れる。
 よし、と気合いを入れ直して、状況説明のためにリリィは隣の相方を振り返った。
「ぴ?」
「ラピピ、良い? マスターからなんだけどさ――」



 ――これで大体完了したか。
 通信を切断し、一息つく。リリィとラピピにはユキナミ達を尾行させておいた。ストリートエリアにいた数名の友人には武器を携帯しておいてくれ、と連絡も入れた――新入り共を鍛え直す訓練に付き合ってくれと伝えただけだが。
 クーナにも連絡済みだ――流石にお忍びライブを知っていたことに突っ込まれたが、カスラから不審な情報が届いたと言えば、それだけで武器を携帯する理由になりうる。
 ――諷雫の方も完了したか。
 ちらりと隣を見やれば、彼女は心を落ち着かせるように呼吸を整えていた。
 可能な限りの手は打った。後はどう転がるか――
 刹那。
 突如として音が跳ね、
「ゆー」
 と、どこか聞き慣れた少女の声が響きわたった。
 突如としてキャンプシップに乱入してきた人物を見、ヴァントはただただ嘆息した。
「クーガ、お前何回割り込んでくる気だ」
「ゆ?」
 パーティ間にのみ伝わる程度の会話――秘匿通信よりは広いが、普段余り使うことはない――パーティ通信から帰ってきた声は、相変わらずのんびりしている。
 とはいえ――手数が足りない状況において。
 渡りに船、とはこのことだ。
「まぁいい、この際だ。お前にも働いてもらうぞ」
「ゆ?」
 よく分からない、と言わんばかりに顔をしかめて、幼女はただただ首を傾げた。




 最も早く、それらに気付いたのは誰だったか。

 作られた空が崩壊する轟音が。
 世界の終演を知らせる音色が。
「っ、ダ、ダーカーだぁぁぁ!」
 日常の終わりを予感させる絶叫が、紅の闇に響きわたって。
 その騒乱は、始まった。

「逃げろ、急いで避難しろぉっ!」
「俺達アークスに任せろ、一般人はさっさと下がれ!」
 混乱する世界に朗々と響く人の叫び。
 アークス達の言葉に、混乱極まったストリートが一時落ち着いた、そう見えた。
 が――
「転送装置、動きません!!」
「こっちも駄目だ!?」
「何で? 何で、解除パス流れてこないの?!」
 三重の悲鳴。
 安全な場所まで避難する為の、転送装置。
 非常事態に際し、アークスへと渡される筈の武器の使用制限を取り除く為の電子コード。
 その両方――非常時に重要になる筈の二つが使えない。
 異常事態にも関わらず。
 結果――
「来るぞぉ! 逃げろ、なんとか――!」
「どこに逃げろっていうのよ!? ストリートエリアの、どこに逃げれば――!」
「せめて、店内、店内に――!」
「武器、武器が――!」
 ダーカーが、そのすぐ傍まで来ているにも関わらず。
 混乱が、加速する。
 結果、其れはストリートにダーカーを溢れ返らせる結果となった。
「嫌だ、死にたくない、死にたくない」
「助け、誰か――」
「キャァァァァ!!」
 途方もない量の悲鳴。其れは侵略者にとってすれば、極上の餌を食す際の心地よい音。
 ダーカー達が、哀れな獲物達へと牙を剥いて――

 蒼が、舞った。

 通りを真っ二つに引き裂く、蒼の光。
 それは氾濫する赤黒の瞬きを瞬時に塗り潰し、直後に崩壊させていく。
 光が収まったとき、ストリート上の全ダーカーは、痕跡一つ残さずに消えていた。
「――な、な……?」
 死に触れていた男が、泣き腫らした少女が、傷ついたアークスが。
 何が起きたかを理解する間もなく、ただ、自分達が生きていることのみを実感していた。
 静寂に染まった舞台から、光が空へと消えて――入れ替わるように、その男はストリートの中心に立っていた。
 まるで最初からそこにいたかのように、泰然と。
 海よりも深い蒼髪を、羽飾りでまとめ上げて。
 その青年へと送られる眼差しは、まるで物語の英雄を見るかのようだった。

「戦えない奴は店の奥に下がってろ!」
 咆哮の後、青年が駆けだしていく。
 其れに応じたように、赤黒の光が青年の先行きに集まっていく――
「あ、あんた、死ぬ気――」
 アークスの一人が呼びかけるも、彼は一瞥をくれることすらせず、先にある広場へと駆けだしている。
 その先に集うのは、未曾有の侵略者達――
 されど。
「――散れッ!」
 轟、と。
 青年が振るった剣から、蒼光。
 地を這う小蜘蛛の群も、空を舞う巨大な蜻蛉も、暗殺者の蟷螂も、何もかも全てが、瞬時に虚無へと消し飛ばされた。
 世界を縦横無尽に飛び回る蒼光が、赤黒の輝きを飲み込んでいく。
 其れは、意志持つ津波の如く。
 巨大な炸裂音が響き渡る中、波と化す侵略者達の前に立ち、彼は鬼神のように刃を高々と振り上げた。
「命が要らぬ奴から前に出ろ!!」
 紅黒の光が、広場の真ん中、いや、彼を中心に渦を巻く。
 世界に顕現する未曾有の群れに囲まれながら、青年は、ただただ不敵に笑っていた。




「――よか、った――」
 カクン、と。少女の体から力が抜ける。
 自らの疲労も、体力も、フォトンも。何もかもを無視して放った、テクニックの反動。
 そんな少女に助けられた少年は、彼女を抱き止めながら、ただ静かに決意した。
 近くのベンチ――ダーカーの襲撃時の衝撃において破壊された公園の物――に寝かしつけて、静かに呼気を整える。
「――後は、任せて」
 言下。少年は、自らの武器――秋を断つ槍と名付けられた其れに、許容外のフォトンを流し込む。右腕が裂け、血が吹き出すのにも躊躇うことなく。
 市街地における武器の使用制限を無理矢理に破壊する、武装解除の特殊な方法。
 そうして、少年は腕の血を拭うこともなく、遠方を見つめる。彼方、道の先。宵闇色が溢れだしている、ダーカー達の襲撃地点。
 そこから溢れだしてくる、数体の蜘蛛。その奥に蠢く宵闇目掛け、刃を振りかざして駆け出し――

 飛来した無数の矢が、目に見える全てのダーカーを打ち抜いた。
 ――!?
 驚き、足を止め。
「――みっつけたぁー!!!」
「ぴーぃ――!!」
 大きく響いた誰かの――知っている声を聞いて、視線を走らせれば。
 崩れた日常の向こう側。倒壊したストリートを駆け抜けてくる、小さな影二つ。弓を手に走ってくる少女と、双機銃を手にした幸せを運ぶ鳥。
 驚きと安堵から、少年――ユキナミは一人と一匹の名前を叫んでいた。
「リリィ、ラピピ!」
 彼女達はこちらまで駆け寄るや否や、一切息も切らさずに、恨みがましい目で叫んできた。
「やーっと見つけた! どーこ行ってたのさユッキー!」
「ぴぴぃ!」
「え、いや何処って。公園――」
「まぁいい、ともかくそれは後回し! リユっちは、これどうしたの?」
 ――聞いておいてそれ!?
 されど、反発心が芽生える暇もない。
 不満など覚えている暇もない。
「えっと、テクニック無理矢理使って――」
「頭打ったわけじゃないと? ――なら今すぐ担げ! んでさっさと逃げるぞ!」
 返事は秒速だった。
「えぇぇ?! ちょ、ダーカーは!?」
「半死人担いで戦えるか阿呆!!」
 そして反論を許す暇なかった。
「だいたい、ユッキーも其の腕、無理矢理解除したろ! 余裕無い時に本陣突っ込む馬鹿がどこにいる!」
 突きつけられる言葉が図星とザクザク突き刺さる。反論すら全くない。
 第一、リリィに言い合いで勝った事なんて、ユキナミには一度もなかった。
「あたしらはクーちゃんに教えて貰って普通に使用制限解除してっから余裕はある。あんたら守って逃げる位はどうにでもできるから」
「え、えと?」
「さっさと担げい!!」
「は、はいぃ!!」
 最早ユキナミにできたのは、秋断を収納し、リリィの指示通りに動くことしかなかった。

「うし、それじゃ走るよ! ラピピ、警戒しつつ来た道戻るっ!」
「ピィッ!」
「ユッキー、リユっち落とすなよ!」
「それは勿論!」
「それじゃ、ごー、ごー、ごー!!」

 悪意によって失われる筈だった、少年の命の灯火。
 その改変は、少女と鳥の乱入によって開始された。




 ――あとがき。
 今回の物語については、同時間軸別視点から書いている相方との合作になっております。
 リンクは下記より。
 

目を疑うべき話(Re ver)            

目にモノ見せてやるべき話       

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テーマ : ファンタシースターオンライン2
ジャンル : オンラインゲーム

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