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少し遅れたクリスマス(結)


 随分とお待たせいたしました。物語の結末は、続きから、どうぞ。



 バスケットに詰めた料理を手に、リユイとマンルーンと諷雫はクーナのライブ会場へ向かっていた。
 どうもライブが大幅に変更になるので、今日のパーティは中止になってしまったらしい。
「でもお料理が勿体ないので、差し入れに行っちゃいましょー」
 ユキナミが言えば思いつきとしか思えない発言。
 しかし、事前にスタッフに連絡したり落ち込むマンルーンに料理のアレンジをお願いをしつつ提案する諷雫は、やっぱりきちんとした女の人という感じだ。
 ――クーナさん、大丈夫でしょうか。
 三人並んで歩きながら、リユイは心で呟いた。
 ずっとこの日の為に、と頑張っていた予定が狂って、望んでいた事もできなくて。それに――
「クリスマスライブだってよー」
「は? 今更?」
 道行く途中で時々聞こえてくる、彼女のライブへの心ない言葉。
「そりゃDFが来て、できなかったけど、なんかなー」
「クリスマスなんてなかった、良いな?」
「そうそうそんな感じー」
 ――そういう事言ってるから無いんでしょうね。
 嘆息しつつ、隣をそっと盗み見る。
 諷雫は彼らの言葉をただ黙って聞いていた。
 マンルーンの片手が諷雫の手を握る。それでようやく諷雫は笑って握り返した。
 それまで、柔和な笑みが消えていた。
「――ありがとう、マンルーンちゃん」
「……いえ」
 ――クーナさんの悪口を聞いてるのは、辛いですしね。
 いつもの調子に戻った諷雫の様子に安堵しながら、リユイは二人よりも心持ち後ろに下がって、テクテクと歩き続けた。




 時は僅かに遡る。
「おねーちゃん、今大丈夫ー?」
『お姉様と呼ばないと返事はしてあげないに!』
「お姉様、今お時間宜しいでしょうか?」
『勿論ですよ、可愛い妹の頼みですもの。どうされましたか?』
「……似合わないに、澪ちゃん」
『知ってるに』
 通話向こうでダンスしてそうな声。
 凜は少し頭を抱えてから、
「あのさおねーちゃん、確か前に光をテーマに写真集撮ってたよね?」
『んー、ん?』
「……レクサさんとかってモデルさんの」
『ああレクサッサちゃんね。シップ内のプールと海水浴場しか使えなかったんだけどどうしても真夏っぽく見せたくてお姉ちゃん頑張っちゃったやつ!』
「それってさー、テクニックカスタマイズ使ったって言ってなかった?」
『うん、レクサッサちゃんはアークスじゃないからウォパルに連れてく訳にいかないし、撮影の為に一カ所を夏っぽくするように温度上げたり日光調整したりしてたらとんでもない金額と労力かかるから』
「でも大変じゃないに? そういうの珍しそう」
『いや、実際前線引退したテクニック系の元アークスとかは結構テクニックカスタマイズで生計立てるタイプもいるのよ。芸術系とか演出用で』
「なるほど。――それならさ、逆にライブ会場を雪景色に変えたりするテクニックカスタマイズも作れるに?』
 ヴァントの説明したクーナのライブ事情は、聞けば聞くほど姉の撮影の時の苦労と似ていた。
 それで、もしかしたらと思ったのだ。
 が、
『ん? 凜ちゃんも?』
「え?」
 ――も?
『ちょっと待ってねー……おし、守秘義務記載なしっと。実はお姉ちゃん、今カスラさんからも似たような依頼受けてるに』
「わーお」
 これは予想以上の前進じゃないか。そのカスタマイズをカスラにも許可取ってもう一つ作って貰うか、応用すれば良い。
『DF戦のせいで延期されたクーナちゃんのライブ、クリスマスってことで雪を使いたかったらしいのにシップが冬仕様終わっちゃって難しくなったらしいのよ』
 前言撤回、まさにクーナの為の依頼だった。
『それでお姉ちゃんと何人かで頑張ってるんだけど、正直結構きつくてねー』
 曰く、ライブとなるとライトや熱気で勝手に温度が上がるから一瞬で氷漬けにしないとすぐ溶けてしまう。
 曰く、テクニックカスタマイズの設計計算を個々人のクラフト装置で分担してさせてるが未だ終わっておらず、これでは試作すら用意できそうにない。
 曰く、というか計算しなくとも会場全体を凍らせる、雪を降らせ続けるなんてテクニックカスタマイズは術者にかなりの負担がかかってしまうのでそれを使えるだけのアークスが必要。
『何人かはやる前から無理、って叫んでたんだけどカスラさんが計算とか使い手さんとかどうにかするって言うから頑張ってるのよ。でも未だにそのアシストさん達との連絡が取れないにー』
「……あと一日もないのに大丈夫に?」
『まぁ、きっとなんとかなるに。デスマーチは慣れてるからにー』
「というかおねーちゃんクーナちゃんのファンだったっけ?」
『女の子が困ってたら助けるのは当然に!』
「あっはい」
 家族だけど何か一線越えてしまってる姉に凜はそう言うしかなかった。


「という事らしいにー」
「……そうか」
 凜から一通りの説明を受け、ヴァントは思わず右手で顔を覆った。
 澪と数人が頑張っている、クラフトによる特殊テクニックの生成。その使い手――氷テクニックに長けた者。それを、カスラが必死に探しているが見つからない、連絡が付かない――という現状。
「ごめんに、ヴァントさん。あんまり力に――」
「――いや。十分、だ」
「に?」
 ヴァントは静かに手を下ろし、周囲を見回した。
 未だぐずっているラピピをあやすメンバーを見据え、そうして――
 ――まずは、あいつから。
 行動を、開始する。
「ユキナミィ!」
「は、はぃ!?」
 ビクゥ、とユキナミが背筋を仰け反らせる。
 ヴァントは即座に言葉を続けた。
「リユイに連絡とれ、俺から連絡があると言え」
「り、了解! えっと……リユイー!」
『はい、どうしましたマスター! そっち落ち着きましたかー、さっきの場所で待って――』
「あー、えとごめんまってリユイ。ヴァントさんから連絡があるんだってー」
『……え?』
「はい、ヴァントさん」
 ユキナミから渡されたそれを受け取って、即座に言葉を発する。
「――リユイ。お前、依頼は見ているか」
『え、だって今日オフです――』
「即座に見ろ。カスラさんから届いてる筈だ」
『嫌です! 今日はマスターとこの後デートの予定なんです! なんでわざわざ仕事なんか――』
「受・け・ろ」
『ヴァントさんの、鬼、悪魔――』
 ブツン、と通信を叩き切る。
 持続に強い高出力テクニック使い、これで一人。
 フォローしとけ、とユキナミに告げて、次の標的に連絡を入れる。
 こちらも返答は、即座にあった。
『はーい、どうしましたかヴァントさん?』
「諷雫。お前、今すぐ依頼を確認しろ」
『え?』
 通話の向こうで、ヴァントの知り合い中最も高範囲氷系テクニックを紡ぎ出す少女――諷雫が不思議そうに声を上げた。
「今すぐに、だ」
『んー、ヴァントさんからのはないですね。何かありましたか?』
「む。カスラさんから来てないか?」
『え? 来てませんよ』
「……そうか」
 ヴァントが知る限り、二人目のテクニック使い――正確に言えば、『ウタ』による大出力の術使い。ライブ会場を氷で一瞬にして覆い尽くすなんて荒業、他に行える奴がいるとも思えないが――
『私、あの方ブラックリストに入れてますから!』
「三英雄をブラックリストに入れるとかなに考えてんだ馬鹿野郎! 解除して確認してこいッ!」
『え――――!?』
 ブチン、と通信断絶。
「あの諷雫ちゃんからブラックリストされるって一体どういう……?」
「違うにー、諷雫ちゃんがカスラさんみたいなタイプ大っ嫌いなだけなのにー」
「諷雫氏、学者肌とか身内もだます策士タイプの人間が嫌いだっていつか言ってたんだけど……まさかそこまでとは」
 周囲の女性達がなにやら言葉を交わしているが、そこはもはや関係ない。
 これで残った問題は、後一人――
「――椿」
 さっきからこちらを一切見ようともせずにラピピに引っ付いてる最後の一人――椿を呼ぶ。
 彼はこちらを見ようともしない。其れが全ての答えを示していた。
「――お前、クラフト得意だったよなぁ」
 ヴァントは彼――というか彼が間借りしてる部屋の主とも――とは、多少の交流がある。
 其れ故、彼がちょっと所ではない戦闘能力不足を補うために、かなりのクラフト能力を持っているのも、知っている。
「確かお前のクラフト設備は企業レベルの中で最小だったよなぁ。広い範囲に対してのテクニックカスタマイズの計算だってすぐだろう?」
「違う、せっぱん」
「そうか折半して購入したか、さぞかし質の良いものだろうなぁお前らが協力して買ったんだから」
 必死にメールを確認していたクーガの一言が更に椿を追いつめる。
「――今すぐ、受けろ」
「嫌です」
「あ゛?」
「こっちだっていくつか走らせてるんです。試作品にアレンジに他にも色々、そんな企業レベルのカスタマイズなんてしたらこっちの計画全部総倒れでやり直し確定じゃないですか」
 ラピピに抱きつきながらも椿に躊躇いは一切見られない。アークスが公開しているテクニックカスタマイズだけでなく、一歩間違えたら違反になりかねないカスタマイズ開発までしている彼の場合依頼に応じるだけの『空き』は僅かしかないのだ。
 よって、まともに頼んでも快い答えが返ってくる筈もない。
「ほぉ、つまりお前はお前とマスターの友人が困っているのに助けないと」
 ならば、攻め方を変えるだけだ。
「……」
「ぴぃぃ……?」
 ――ダメ、ダメなの椿?
 ラピピの潤目が椿の逃げ場を無くしていく。
 止めとばかりに、朱雀が自分の通信機をヴァントに渡した。
「ヴァント氏ー、ほい」
「――決定打だな」
『椿くーん!!』
 通信機向こうから聞こえてきた諷雫――椿のマスターの声に、彼は黙って肩を落とした。
 其れを見届けてから、ヴァントは自身の通信機に手を伸ばした。
「――カスラさん」
『おや、ヴァントさん。どうされましたか?』
「うちの馬鹿どもが迷惑かけた」
『あぁ、成る程。いえ、こちらとしても急なお願いですからね。とはいえ、上手く行ったようで何よりです――貴方がずっと圏外でなければもっと早かったでしょうけれどもね』
「……考慮しよう」
 ナベリウス森林エリア、通信すら届かない深部にて二日間を過ごしていたヴァントは、そう答えるのがやっとであった。




 流麗なメロディ、前奏のオルゴールの旋律に諷雫はご機嫌なハミングを重ねていく。
 置き去りにされたクリスマス、忘れられたクリスマスソング。
 ――時間よ、巻き戻れ。
 皆が、ダーカーの存在すら知らなかった幼い頃へ。
 皆が、無邪気に宇宙へ希望を抱いていた彼の頃へ。
 ――優しい雪(ゆき)よ、暖かな幸(ゆき)を。
 皆が、明日のことを恐れずただ今を楽しめるように。
 皆が、昨日のことを嘆かずに明日へ旅立てるように。
 ――彼女の笑顔が、明るく楽しく鮮烈なものへなるように。
 光を浴びて輝く白い玉を、頭上に出現させる。
 正直言って、こういうのは初めてだ。でも、きっと出来る。
 ――テクニック『ラ・バーダ』並びに『ナ・バータ』を同時展開し、一つに紡ぎ直し、実行します。
「やっちゃいますよぉー!!」
 超ハイテンションな声と、白い玉が弾けて空間を氷結させたのは同時だった。
 

「ここ、どこでしたっけ?」
 一瞬だった。
 白い光は白い旋風となり、全員の視界を奪った。
 そして次に目を開けてみれば、ドームの大半が氷で覆われていた。
「『目を開ければそこは雪国だった』」
「計測完了ー、ドームのデータと一緒にすぐ椿君のクラフトメイカーに送るねー」
「客席も少し凍ってますね。リンさん、クーガさん、すみませんが客席付近の氷を溶かすのを手伝って頂けますか?」
「あ、はい」
 カスラに頷きつつ、リンは寒さのあまりトナカイの着ぐるみを着た。それが更に今回のライブに巻き込むなんて、その時の彼女は予想もしなかっただろう。
「塩、塩、塩」
「?」
「ああそうか、氷は塩で溶けるんだったね」
「スタッフに頼んでおきましょう。先に機材への簡易フォトンコードを外してからですが」
「あ、それなら僕買ってくるよー!」
「私も!」
「リユイちゃんは、ここでカスタマイズ品が来るまで待機に」
「お姉ちゃーん、私は何したら良いにー?」
「凛ちゃんはまず、脱げ」
『計算終わりました、全五種類のカスタマイズの試作品ひとまず完成です』
「イリスさん、取りに行って貰って良いにー?」
「良いよ。ここにいても手持ち無沙汰だからね」
「お願いします」
「待ってお姉ちゃん。私女の子同士は勿論姉妹は考えてもいないから。やめて、やめて、助けてレイお姉ちゃんパパママー!」
 走り去るイリスを見送る形で、さりげなく姉妹から目をそらしたカスラはやれやれと首を振った。
「曲との同期を他の方が済ませてくれていて助かりましたね」
『そもそも空調設定戻さなければ設備でどうにかなったんですがね』
「DFでの人的被害がゼロとはいえ、今回の出費はなかなか痛い」
『そうですね、僕の他のカスタマイズ設計計算は全て破棄するしかなくなってしまいました』
「しかし友人の役に立てたんです、依頼というより頼みごとを聞いたということになりますね」
『笑わせないで下さいよ。そちらは結局組織命令で本来よりずっと安価で依頼出来てるんですから。こちらにはきちんと払って頂きます、相場は調査済みですからご安心を』
「君の友人やマスターに聞かせたい所ですね」
 リンはそのやりとり全てを聞かなかったことにして、クーガと一緒に黙々と客席の氷を特殊カスタマイズしたテクニックで溶かし続けたのだった。


「皆さん、到着しました」
「ぴぃ!」
 一方ラピピとヴァント達は再びナベリウスへ。
「まさか結局雪は取りに来ないといけないとは」
「まあ我々が心配していた溶ける可能性はもう気にしなくて良いですからね」
 降り立った朱雀とライサは自分達が乗ってきたシップを見上げる。
 普段のキャンプシップよりやや大きめの、輸送用のシップ。設定通りの室温を保つそれは、カスラが手配していたものだ。
「元々舞台も雪景色だったらしいです。今から大量の雪を作っていては間に合うものも間に合わないからと仰ってました」
「軽くデザイン画を見せて貰いましたが色付きの雪もあったようですね。壇上とか雪だるまとか雪ウサギとか」
「全部作り直しって職人さん泣いてたよ。アノ人達悪クナインダカラ二回分ノ依頼料払ッテ貰エルトイイヨネ本当ニ」
 マンルーンとライサの会話に、何を思い出したのか朱雀は遠い目をしていた。椿は依頼料をもぎ取る気満々だが果たして今まさに全力を注いでいる職人にそんな気力が残るだろうか。
「マンルーン、お前はラピピが変なことしないように見張っとけ。とっとと終わらせる」
「はい。……えっと、どうされるつもりですか?」
「ん、ちょっと山登って雪を落としてく――」
「そういうのもう禁止ぃ!!」
「ヴァントさんそれ雪崩ですから」
 頓珍漢な会話を繰り広げる中で一匹、ラピピだけは再度来た雪山にテンションが上がってただただ踊っていたとかなんとか。
 雪はヴァントの知り合いの協力で数時間もしない内に回収された。協賛に「ナベリウス原生種」を加えることになって広報は苦笑い、来客アークス達はネタと思って大笑いすることになる。


 そんな事があった、翌朝のこと。
「――まーとーまーらーなーいーッ!!」
 クーナの絶叫がリハーサルの会場に響きわたった。
「……難しいですねぇ」
 頭抱えて発狂するクーナの隣で、諷雫も静かに頭を抱えていた。
 雪を紡ぎ上げる術式は仕上がった。美しく降ってくるように調整も済ませた。
 ステージも職員、職人の協力でDF戦前よりも神秘的な世界に仕上がった。
 だけど――
「……綺麗過ぎても、ライブには似合いませんよね」
 明るく激しく鮮烈に。彼女がライブで代表曲の一つを歌う度に叫んでいる、ライブという物へと向ける姿勢。
 今を、皆が聞いているこの今を、何よりも楽しんで。そう伝え、そう表現したいが為の様々な仕掛け。
 雪を使うことについても、ヴァントへと見せようと頑張った事もあるけれど――結局は彼女が表現したい世界を紡ぐため。
 その上で、今の術式――本当に自然な雪だと思えるほどに美しい氷の結晶を舞い散らせる、特殊テクニック。その仕上がりは、誰の目に見えても完璧な雪、そのもので――
「……どうすればいいのよー……」
 だからこそ、詰まってしまった。綺麗過ぎる光景は、楽しい、という以上に美しすぎて、彼女が思い描くライブには眩しすぎる。
「インパクトが、全然足りない……」
 ステージの中央で云々と思考に沈むクーナ――その肩を、ポン、と小さな手が叩いた。
「クーにゃん、少し休んだら? いい加減疲れてるっしょ」
「……リリィちゃん」
「雪降らしてるリユっちも疲れてきてるみたいだし、さ」
 くい、とリリィが示した先では、かれこれ30分以上の術式を展開し続けている、全力状態のリユイがいた――かなり悲壮感の漂っている姿で。
「……そ、そうだね」
「ん。リユっちー、暫くきゅーけー!」
 言下、リハーサル会場の雪が止んで、リユイが真正面から地面へ伏した。
「リユイちゃん?!」
「ぶっ続けだし、そりゃ疲れるよ。どうせリユっちが復活するまでどうしようもないんだし、クーにゃんもゆっくり休んでおきなよー」
 タンタン、と実に軽い足取りでリリィが倒れた少女の元へと向かっていく。
「クーナさん、今の間に休みながら考えましょう?」
「そう、ですね」
 呟いて、諷雫に支えられながら、クーナは手近な椅子に腰を下ろした。
 ――焦るなぁ……。
 周囲のスタッフを見回しながら、静かに頭を振る。いつも迷惑をかけている皆に、クラフターとして澪と椿――現在もライトで溶ける可能性等を考慮してギリギリまで調整を続けている――、術式展開にリユイ――練習用なので、彼女一人が全ての術を受け持ってくれている――に諷雫。心配して遊びに来てくれてるアークスの皆。
 自分が休んでいるだけ、彼ら彼女らをこの場所に拘束してしまう。なによりもう、本番まで時間が――
「はい、クーにゃん」
 ぬっ、と差し出されたマグカップ。湯気を立てる紅茶が半分位まで注がれている。
 それを差し出しているリリィは、柔らかく笑っていた。
「眉間に皺、寄ってるよー。アイドルがそんなんでどーすんのさ、リラックスリラックス」
「ぴぃ!」
 クッキーが載ったお盆を掲げているラピピもまた、同じように笑って頷いている。
「そだね、ありがとう、二人とも」
 飲み物を受け取って、静かに啜る。胸の奥から暖かくなって、緊張が解れていくのが分かった。
 ただ、飲み終えてから気づいたが――
「……リリィちゃん、これウィスキー入れたでしょ」
「そりゃ入ってる方が気ーおちつくっしょ」
 スキットルを開けて、中身――明らかにアルコール臭しかしない――を飲みながら、リリィが呟く。忘れてたけど、彼女は歩くアルコールだ。こうなるのも有る意味当然だったか。
「別にクーにゃん飲めない訳じゃ無いんだし、細かい事は気にしないでゆっくりすりゃいいよー」
「ぴぴぃ」
 座り込んでリンゴを食べながら、ラピピ。どこに持ってたのかはもう聞かない方が良さそうだ。
 ――……悩んでるのがバカらしくなってくるなぁ。
 苦笑しながら、クッキーに手を伸ばす。仄かに甘いチョコレート味の其れを楽しみながら、クーナもまた二人と同じように休息時間を楽しむことに決めた。


「インパクトが欲しい。視覚的に」
 十数分の休憩後、控え室でクーナは静かに切り出した。周りにいるのはラピピと様子を見に来ていた、というか先日から巻き込まれている、ヴァントを除くアークスメンバー。
「インパクトねー。とりあえずサンタの時期だしプレゼントまき散らすとか」
 三つ目のスキットルを空にしたリリィが、その言葉を受けて呟く。其れに、ラピピがピンと羽を挙げた。
「ぴぃ!」
「ラピピに配って貰う? 悪くはないけど、それだけじゃちょっと弱いかな」
 案としては通しながら、クーナはそう続けた。
 空から舞う粉雪と、サンタラッピーがプレゼントを投げまくる。受けるとは思うけど、それだけだと少し弱そう。
 静かに首を捻っていると――
「――ゆ」
 思いついた、とばかりにテテテ、とくーちゃんがどこかへと走っていく。
「おや?」
「くーちゃん?」
 周囲の声には耳も貸さず、一目散に走っていく。その先には、部屋の隅に置かれてある、簡易倉庫への接続器具。それを操作し、ザッカザッカと大きな袋に何かを詰めてから、くーちゃんが戻ってきた。
「……寄付」
 そう言って差し出した袋の中には、珍しい武器や防具、マグの姿を変化させるデバイス、アイテムラボで使える補助素材。
「え、え? これ、くーちゃん良いの?」
「ゆ」
「あ、じゃあこれ贈り物ボックスに入れて、あと外れみたいなのでステッカーも用意したら良いんじゃないかな?」
「それならその中にちょっとだけクーナさんのサイン入りも入れてみたらどうだい?」
「ステッカーは帰り際にしたらどうでしょう? プレゼントを貰えなかった人向けに」
「別に全員配布でも構わないとは思うけどもね。まぁ、プレゼントというのは素晴らしい案だと思うよ」
「……そうだね。プレゼントは其れで行こう、楽しそうだしね!」
 軽く手をたたいて、クーナが宣言。周囲も同調して頷いて――
「それじゃ、話を戻すね。どっちにしてもプレゼントだけじゃインパクト弱いんだから」
「ですよねー」
「折角ヴァントさんとライサさんがいるなら、対決でもして貰ったら良いんじゃないかに?」
「ナイトラッピー対仮面戦士、良いんじゃ――あ」
 賛成しかけたリリィがその場面を想像して声を途切れさせた。
「それ、絵柄的にどうよ?」
 血塗れのラッピーと、仮面をつけたアークス。
「そもそも演出というなら、どっちが最終的に勝つのが良いんだい?」
 暴徒化直前のファンに対して無敗を誇るヴァントと、アークス同士の戦いで負けることが珍しいライサ。
「……ちょーっと、難しいかな」
「でもやっぱりそういう派手な演出が良いよね」
「雪を、巻き上げるとかどうでしょう。私かリユイちゃんどちらかだけが雪を降らせて、もう一人は竜巻とか」
「あ、それは採用。途中の曲でやりたい」
「最初は氷とライトの演出、次に風で積もっていた雪を巻き上げて、クリスマスソング系でプレゼント。そんな感じですかね?」
「んー、でもやっぱり派手な演出がもっと欲しい」
「爆発系?」
「待って、普段なら賛成だけど今回は止めて。そこも含めて計算したらお姉ちゃん死んじゃう朱雀さんが結婚してくれないと死んじゃう!!」
「……」
「無反応とか傷ついちゃうもっとやってぇぇぇ!!」
「おねーちゃん他のクラフターさん達困ってるから戻ってあげてー」
 徹夜で疲れてるんだ、そうに違いない。
 そんな態度を貫いて澪の退室を確認後、今度はユキナミが手をあげた。
「派手に何かブッ壊しちゃう?」
「んー、確かに効果的けど、危ないですよ」
 諷雫が柔らかく指摘する。
 そしてそれは、クーナが一番悩んでいる箇所。お客さんの大半がアークスでも、結局アイドルのライブなのだ。安全第一。
 でも、多分そういうのを自分は望んでいるのだ。せめて最初と、あと終盤の曲の一場面で。
 DFに奪われたライブ、其れぐらいの派手さがないと取り戻せない。
「でもさー、どうせなら氷の柱がっしゃーんって壊したいよね」
 リリィも同じなのだろう、彼女らしくもなく食い下がっている。
「とは言っても壊した跡が酷く汚くなるし、壊しきれなかったら、諷雫さんの言う通り危ないよ」
 元々の、クリスマス仕様で用意していた物なら簡単に壊れたのだが、テクニックカスタマイズで作った氷はかなり硬い。万一客席に飛来したら本当に大変なことになってしまう。
「あー……火で溶かす訳にもいかないか。――うん、しないよクラフターさん達、大丈夫ごめんってば」
 会場と繋がっていたモニターの端、計測していた目に隈を作った数名が泣きそうな顔をしていてリリィは思わず謝った。
 その中で、くーちゃんの目が虚空を見始めた。
「あ゛?」
「くーちゃんそんな声出さないの」
 ポヨン、と窘めていたユキナミの端末に反応。
「あれ、メール?」
「誰からですか?」
「くーちゃん、あれくーちゃん?」
「ノー、勝手に使われただけ」
 意味不明、全員がメールをのぞき込む。
 タイトル、『こういうのはどう?』。
 そして内容を一読した面々は、
「これは……出来るかな?」
「フォトンコートを内と外へやってくれるなら、手加減しなくて良いので不可能ではないですね」
「ただ、私と朱雀さん、かなりきつくないかい?」
「私とライサさんも結構重要に」
「私は楽ですね、カスタマイズして貰えば良いので」
 最初の演出は、匿名者の発案で決定となった。
 そして、それでもう一カ所の演出も決まった。
「客席とステージの間にフォトンコートで壁作れるなら、やっぱり氷の柱も良いんじゃないかな?」
「最初は跡形もなく壊しますが、二度目は氷の粒が舞うような物にしたらどうでしょう? それと一緒に雪をまた巻き上げるとか」
「うん、それならよさそう」
 氷の柱の大爆発。一斉にライトが瞬いて、光の霧が舞い満ちて――
「……いけそう。問題は、どうやるかだけどさ」
 想像の中では、全く問題ない――むしろこの上ないインパクト。
 後は、これをどうやって実践するか。
 クーナはもう一度頭を抱えて――どこかで、パチン、と音がした。
「……クーにゃん、今回っていつもの『アレ』やる暇与える気ないよね?」
「あ、うん。そういうのやるとプレゼント争奪戦も起きそうだし」
「なら、一人空きが出るよね?」
「――あ」
 リリィの確信めいた呟きに、クーナは閃いた。
「あのさ、皆、一回目が終わった後なんだけど」
 そんな言葉から始まったクーナの頼みに、周囲は顔を見合わせつつも了承し――。
 あの名物マスコットの出番が決定した。



「はい」
「……何だこれは」
「ライブ用の特殊大剣です。今回はクリスマスなんでホーリーツリーをクラフトしました」
「待て、何だ其れは。今回は俺は護衛役じゃないんだろう」
「ええ、護衛役は別の方にお願いしました。あ、ラピピおまたせー、ユキナミさんと最終打ち合わせしようかー」
「ぴー♪」
「おい待て椿――」
「あ、ヴァントー! ごめん、こっちこっちー! 急いで打ち合わせ始めるよー!」
「……何をするつもりだ」
「ほら、早く早く!!」

 そういうことになった。




 ――ライブ、本番。
「お、おいなんだよあれ……?」
「わかんねぇ、なんだ今回の奴!?」
 ライブドームに意気揚々と入り込んでくるファン達の間に広がったのは、動揺。
 いつもの客席と対比して、ステージとの間に――途方もない氷の壁。
 舞台へと続く世界全てを覆い尽くす、凍てついた境界線。
 次々と会場に入りくるファンの皆が足を止め、反射的にそれを見つめ、困惑のままに割り当てられた場所へと移動していく。
 ライブ開始のブザーが鳴り響くまで、その困惑によるざわめきは止まらなかった。

 そうして、ライブ開始時刻となり、ブザーが激しく鳴り響き――
『――皆、集まってくれてありがとう』
 静かで冷たい、少女の声が、会場に響きわたった。
『DFのせいでさ、こんな風になって、ライブができなくなって、皆本当にごめんね……』
 言下。
 閉ざされたステージの上、氷壁の向こう側。
 膨大なフォトンの光が瞬いて――
『でもね!』
 声が放たれ――
≪Emergency call!≫
 アークスならば聞きなれた言葉が、会場へと響き渡った。
 瞬間、氷壁の前に降り立つ人影達。
≪Destruction!!≫
 言下。
 お茶目なフォルムに似合わぬ整然とした動きで七名のマスコット――トナカイがやはり可愛い系の武器を構え、二つの大砲が大きな祝砲を鳴らした。
 壁に亀裂が入り、大きくひび割れ――八つの影が思い思いのフォトンを炸裂させる。
 一閃、二閃、小柄なトナカイの刀で氷壁が氷塊となり、大きな氷塊を踏み抜いた二名のトナカイが二丁銃とナックルで更に細かい破片へ変えていく。
 客席に僅かでも破片が向けば、地上に留まっていた小さなトナカイ二名が弓を放ち。同じく地上にいる親子ほど背の違うトナカイ達が吹き飛ぶ氷に杖を向ければ、炎の花が咲き乱れ。
 そしてステージと客席の間、一人精神を研ぎ澄ませていたトナカイが氷の彫像――先日戦ったDFを模したそれ――を完全に破壊して見せた。
 数秒にも満たない演武、そして現れた少女に歓声が沸き上がって。
≪Completed!!≫
『皆ががんばってくれたおかげで、思いっきり歌えるよー!』
 吹き飛んだ氷壁の先、光輝くステージの中央。ミュージシャンのメンバーを従え、中央でマイクを手に思い切り叫ぶアイドル、クーナ。
 トナカイ達はステージ前に待機して、思い思いに踊り出す。
『激しく、楽しく、鮮烈に! 盛り上がっていくよー!』
 オォォォッ、と応じたファンの叫びが会場を揺らした。


「――リユっち、大丈夫ー?」
 舞台裏でテクニックを収束させたリユイの元に、テトテトとした歩き方のマスコット――トナカイが近づいてくる。 
 その中身――リリィに対して、リユイは静かに頷き返した。
「うん、余裕はあるわ。細かい雪を降らすの、バラードの間だけにしてもらって良かった、本当に……死ぬところだったわ、冗談じゃなくて」
「ですよねー。リユっち以外のテクニック使いに見せたら大体『殺す気か!?』って返事だったよ」
「五枚羽展開状態って、はっきり言って一般的なテクニック使いじゃ十秒保たずに倒れるわよ」
「それを涼しい顔して三十分続けるリユっちもつくづく異常だよねー」
 そんな二人の視線の先には、リユイに代わりテクニック行使を始めた諷雫。とはいえこちらは演出ではなく、現状の凍った状態を保つテクニックだが。
「うん、すごいよねふーちゃんも」
「支援に近いから一人で大丈夫と言ってたけど、正直助かったわ。あれがないと後半になるにつれ負担が増えるらしいから」
「なるほどねー……うし、そんじゃそろそろあたしも戻るわー。つばっきーも頑張ってねー」
 リユイと共にいる、今まで一切言葉を話さず、放たれているテクニックに合わせて適時調節を行っているスタッフと一緒に座り、諷雫を見守っている椿に声をかける。
 彼は自身の画面から顔を上げぬまま、僅かに頷いて。
「演出とは言えどうしてラッピーじゃダメだったんでしょうか……」
「舌打ちしてんじゃないっての、ラッピー廃人」
 瞬間。
 舞台全体の明かりが、消失した。
「――あぁ、もうこの曲か。マスター驚くだろうなぁ」
「そうですね、急いで下さいよ」
「そんじゃ、また後でねー」


 ――ッ!?
 一人、舞台袖で集中していたヴァントが反射的に顔を上げた。こんな演出、聞かされてはいない。
 照明が一気に落ち、淡い光だけが会場に灯っている。
 その中心で、彼女の弟が愛した曲を歌う、少女。
 ただひたすらに愛おしさを歌う彼女の姿が、青い光となって淡く消え――。
 残ったのは、空から降り続ける淡雪。
 最低限の淡い光を反射させ、ひらりひらりと舞う。
 似合わない、そう思ってた。
 ヴァントの知るアイドルとしての『クーナ』の曲に、チラチラと降る雪なんて似合わないと。
 だが、ただ個人としての『クーナ』には?
 偶像の役目を担うクーナ。人々の記憶に少しずつ欠片を降り積もらせ、それでもやがて記憶から溶けていく彼女。
 刹那を生き、刹那に咲き誇り、淡く消える彼女。
 その姿は、まさに淡雪のように美しい。
 明るく激しく鮮烈に。
 その言葉はむしろ、そんな自分を知っている彼女だからこそ。
 声を出すのもはばかられる、静寂。ただ雪と彼女の歌声だけが聞こえてきて。
 魂を以て歌う彼女の声が、風を起こした。巻き上がる雪と共に現れた彼女に、惜しみない拍手が送られる。
 ――……綺麗、だな。
 ヴァントもまた、美しき少女へと手を打ち合わせた。



『皆、楽しんでくれたかなー!!』
 一通り、歌いたいがままに歌い終えたクーナの呼びかけに、歓声が返事として帰ってくる。
『それじゃぁ、最後まで――』
 そうして、言い終わる寸前に、氷の風が渦巻いた。
 其れは即座にバータとして形を成し、光の中央――クーナへと殺到する。
 明らかにアイドルへと放たれた攻撃に、悲鳴が客席から上がる――されど、彼女は不適に微笑んで。
 氷が直撃する――刹那。
 ――ダンッ!
 天井から飛び降り、少女の前へと躍り出た、歴戦を潜り抜けてきた一匹の着ぐるみ――クリスマス仕様のナイトラッピーが、轟、とツリーを振り回す。
 放たれていた氷の嵐が刹那に溶け、消え――観客席の方へと吹き飛んでいく。
 吹き荒れた剣嵐に舞って、空気に氷の結晶が舞い散る。それ全てが光を帯びて、歌姫を神秘的に輝かせる。
 そうして、彼女は空へと指を向け――大きく、大きく叫んでいた。
『――楽しんでいってねーッ!!』
『ウォォォォォォッ!!
 歓声に合わせて、パン、っとドームの空に花火が舞って。
 ステージには降り注ぐ雪月花。光り煌めく氷月花。
 少女を守る騎士の背後に、鮮烈な輝きを纏って咲き誇る花々は、全てが舞台に舞う歌姫の為に――

 世界を揺るがす歓声が、ライブ会場に響き渡った。




「おー!」
「ぴぃっ!」
 ――よかったー! 皆、楽しそー!
 一際大きな歓声が響きわたったライブ会場の上。
 ワイヤードランスで空を飛び回るユキナミの上から身を乗り出して、ラピピは外の光景を見下ろした。
 ――わぁぁ……!
 きらきらと雪が舞う会場に、沢山の人達の歓声と。
 楽しそうに踊って唄うクーナは、凄く綺麗な笑顔で。
 ヴァントさんは顔見えないけど、きっと楽しいだろうと思うから。
 歓声は響く、喜びが溢れてる。
 そんな世界の上空で、ラピピもただただ楽しくなって。

「それじゃ、僕らも始めよっか!」
「ぴぃー!」
 ユキナミが宣言通りに、空をワイヤーを使って飛び回り。
 彼に肩車をされたまま空を飛び回り、ラピピはただただ思い切り、プレゼントを客席へとまき散らした。

 ――メリー、クリスマースッ!




 3日遅れで開催されたアイドルのライブは、過去最大の歓声に包まれ、大盛況の内に幕を下ろした――



 ーーあとがき。
 七夕前のメリークリスマス! やーっと、やーっと終わったぁぁぁ!!(;; )
 クリスマスまでに大体終わるはずが、殆ど見事に半年以上掛かるとか……;
「いっそのこと9月7日まで待とう、クーナの日だよ」
 とは相方の話であります。ちゃうねん……ちゃうねん……。
 長らくお時間頂いた関係上よりよく書きたかったですが、まぁ、そこまではできなかった、と。
 最後に短いおまけ達をつけて、この物語は終演といたします。
 それでは、またの物語にて。


 おまけ①「後日談」
 ※今回ロクさんの言葉<>はヴァント君が何となく理解している言葉へと変換されます。さもなきゃついてこれません。
「おいロクー、いるんだろう?」
<よー、ヴァントー……>
「おお、やっぱり居たか。どうなった?」
<一応、帰ってくれることになったんだ……>
「そうか、良かったじゃないか」
<……明後日、一緒に>
「明後日?」
<それまで、泊まっていけば良いって言われて>
「ほぉ」
<ここの料理、カミさんの料理よりずっと濃くて、塩っ辛くって>
「……」
<早めに帰るなんて、言いにくくて。でもきつくて>
「……奥さん、頑張って薄味にしてくれてたんだな」
<……うん>
「感謝しとけよ、お前」
<うん……だけどさ、嫁さんって旦那について来てくれるもんだろ?>
「あー、確かにお前の所そういう部分強かったよなー」
<だろ!? お袋だってそういうの全然文句言わなかったし>
「ただな、ロク……この間会いに行ったら、お前の甥っ子あやしてるお袋さんの隣で、親父さんが掃除してたぞ」
<……え?>
「……亭主関白なぞ良いもんじゃねぇよ。大人しく頑張ってこいや」
<……おぅ>


 おまけ②「修理費」
「……そういやヴァント氏、あの修理費どうやって払ったんだい?」
「――ん? 修理費?」
「いやいや、キャンプシップだよ。あれ、恐ろしい額だったんじゃないかい?」
「……あぁ、あったな。通帳一つが飛ぶ程度で済んだから、幸いだった。リリィも慣れた感じで解約手続きを取っていたからな」
「うん、往来で聞いた僕も悪かったがこの話はやめようか。危ないってレベルじゃなかった」


 おまけ③「ライブ前」
 ライブ前日、昼前。
 やることはないけれど心配になって来ていた数名は――。
「ちょ、これグッズ!? 何で箱詰めのまま!?」
「えー、まずいでしょうこれは」
「そうなのか?」
「うん、まずい。他はともかく、こっちのライトとか来た順番で配るんじゃないかな?」
「ああ、そちらは人手が足りてなくてまだ手つかずだったんです。丁度良いのでお願いします。ゲートは三つあるのでひとまず――」
「カスラさん人使い荒すぎにー!!」
 尚、その後にもっと大変な手伝いをやらされることを知る由もなかった。


 おまけ④「ライブ会場の守護神」
「おい、今ってあの鳥いねぇだろ! 今ならクーナちゃんの――」
「いや、止めとけって。あのトナカイ、見ろよ」
「あ? 腹かライト振ってるだけしかしてねぇ奴らが――いや待って何あの殺意の塊」
「寄らば切るどころじゃねぇよ、動けば切るだよあのトナカイ。ナイトラッピーレベルに怖ぇ奴らがあそこで構えてやがるぞ……」
「……大人しくすっか」
「それがいいぜ」
 其の横で。
「ていうかナイトラッピー様はどこ!?」
「ナイトラッピー様はどこなの!?」
 そんな会話もあったとかなんとか。
 鳥も随分ファンを掴んでいるようです。

 尚、トナカイ達の様子。
 禅を組んでたり紳士でいろよと無垢な目で笑っていたりコサックダンス踊りだしたり、色々だったようです。


 おまけ⑤「デスマーチ続行」
 不機嫌を全身で表す彼が、機械に次々と指示を打ち込む。その度に機械は、企業向けのクラフトメイカーが機械言語やアラームで不満を訴える。
「うるさい」
 アークスには殆ど見せない容赦ない返答で以て、彼は機械の苦情を叩き斬る。
 マスター用のカスタマイズの試作品三つと今使っているもののアレンジ五つ、自分用のカスタマイズの試作が六つにアレンジは一つ、リユイへのカスタマイズは二つ。
 そして常に新しいカスタマイズの計算算出に使われてる枠が二十枠、空きは現状三枠はある。
 日程が狂ってしまったのだ、機械本体のクールダウンはもう二日は出来かねる。
 それでもブラック企業と違って本当の警告の時には適切な処理をしてるし外付けもいくつか定期的に交換したり増やしたりしてるのだからマシだろうと椿は心から信じていた。
 人に当てはめてみたら自殺待ったなしの所行である。


 おまけ⑥「砂糖注意報」
「――ねぇ、どうだった?」
「あぁ……凄かったぞ、本当に。見れて良かった――そう思うよ、心から」
「そっか、そっかぁ……なら、わたしも嬉しいよ。ねね、良かったらさ――」


 使用曲:sasakure.UK・Deco*27「snow song show」
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