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あるアイドルのライブ風景~SAN値注意~

いつものように続きから、どうぞ。




「――みんなー! 今日も来てくれて、あっりがとー!」
 きらびやかな舞台に立つ少女の呼びかけに、ワァァァ、と歓声が帰ってくる。
 アークスシップの市街地エリアに作られたコロシウム、その中心。巨大な会場に舞台と共に立つ、歌姫ーークーナの姿。
「今日はいーっぱい、楽しんでいってねー!」



「それじゃいっくよー!」
 少女の宣言と共に、その舞台ーーアイドル、クーナのライブコンサートはスタートした。




「いつもより巻いてるぞー!」
「準備急いで、間に合わないよー!」
 ――なんでオレこんなとこにいるんだろう。
 華やかな世界の裏側。ライブ最中の舞台設営やら小道具の準備やらにバタバタと人が飛び回る中、イオは一人、武器を手にただ居心地悪い空気を味わっていた。
 というか今ノッリノリで踊っているクーナから呼び出されたのが一日前で。
 特に用事もなかったから受けたものの、何がどうしてライブ会場に連れてこられる羽目になるのか。
 ――MCの護衛とか訳の分からないこと言われるし。
 確か、歌だけじゃ飽きさせるからということで、途中で挟むトークショーの筈。その護衛、って何がなにやら。
「……そろそろ、出番だっけ?」
 ピアノのメロディーが聞こえてくる方を見上げて、小さく呟く。十曲目が終わり次第、ステージに上がってこいと――だから何から護衛するのか、という根元的問題には答えてくれなかったけれど。
「イオさん、出番です! 準備の方、お願いしますー!」
「あ、はーい!」
 ――えぇい、考えるのは後々!
 今は仕事をこなさないと。
 イオは軽く頭を振って、意識を切り替えてから、会場の方へと走り出した。

「さぁ、ここでご紹介! 今日はアークスで一番人気の女の子、イオちゃんに来てもらいましたー!」
「ちょ、クーナさん!?」
 そして会場に飛び出した瞬間、とんでもない事を言われて、イオはその場で思わず叫び声をあげていた。
 それでもクーナは止まらない。実に楽しそうにノリノリで、
「なんとなんと、私も参加してたのにアークス内人気投票で一位! 流石にちょっと悔しいんだけど!」
「え、え、え、えぇぇ!?」
 ――何で、何で、何で?
 パニック。パニック。パニック。
 目の前で起きている事が全く分からない。
 というか何で声援とか「かわいー!」とか言われてるんだ。「スレンダー美少女ktkr!」とか「ご褒美ですブヒィ!!」とか、アークスですら翻訳できない言語が一般人席から聞こえてくる。
「今日のこの企画、成功した人はこの子とも写真撮影が出来るよ! あ、上手く行けばお友達になれるかも!?」
「クーナさぁん!!?」
「え、どしたのイオちゃん?」
 ――あ、ダメだなんか目が笑ってない。
 笑顔なのに滅茶苦茶怖い。なんか理不尽な恨まれ方してる気がする。
「さぁ、それじゃ初めて来た人の為に説明始めるねー! 解説役さーん!」
『やぁ、待たせたね』
「クロトさん!?」
「イオちゃんともお知り合い、アークスについてまだまだ分からないことの多い私を助けてくれるクロトお兄さん! アークスでもとっても人気なんだよ!」
 ――え、何これ。
 もう訳が分からない。というかもう考えない方が良いかもしれない。頭痛い。
『ルールは単純。これから事前に申し込んでくれたアークス達がスタート地点から合図と共に走り出す』
 クロトが画面の端へと退けられ、中央に映るのは準備運動をしたり咆哮を上げるアークス。ほとんどが男性だ。
 ――え、まさか。
『もしクーナさんの所までたどり着けたら、その人はその場で握手とツーショット写真が撮れる』
 ――それどう考えてもやばいでしょ!?
 何という恐ろしい企画、というかこんなのアイドル相手にやって良い企画じゃない!
「そんなのずるい!!」
「俺達だってクーナさんと握手したい!」
「アークスばっかりぃ!!」
『うん、その言い分も最も。一般人の人達はクジでしかその機会がないからね』
 それは何となく聞いたことがある。アークスのイメージアーティストに選ばれたアイドル、ということで最近のクーナのライブはほとんどがアークス専用ショップエリア、で行われる事が多いらしい、と。
 実際は各シップを定期的に回る形なので普通のライブと平行だが、何も知らない一般人からしてみればアークスオンリーイベントばかりと思われて仕方ないだろう。
『しかし、この企画はアークスステージ内で達成者は、なんと0!』
 ――アークスでもやってたの!?
『その理由が、彼だ!』

 轟、と。
 アイドルのライブ会場、という甘ったるい筈の舞台に似つかわしくない戦意が溢れ返ったのはその瞬間。
 反射的に武器を構えかけ――
『――待たせたなァ!』
 ――……え?
 瞬時に思考を停止した。
 観客席と、ライブ会場を繋ぐ道の端――まるで守護者の如く立ちふさがった一羽の陰。
 黄色くもっこもこの可愛らしい着ぐるみ――だった筈のその姿は、未曾有の鮮紅の飛沫に彩られ。
 小枝すら持てないような羽のはずなのに、なぜか巨大な冷凍マグロを担いでいる。
 大気を刹那に戦場へと変貌させるほどの戦意は、イオがよく知る先輩の物で――
「え、クーナさんあれって」
「はーいイオ、それじゃ向こうへ移動ね」
 マイクを強制的に切られ、クーナから連行される。
 半分意識も消えかけた中、クロトの声がはっきりと聞こえていた。
『クーナさんのピンチに颯爽と現れる、もうファンの間ではお馴染みの彼、ナイトラッピーだ!』
「うぉぉぉ!!」
「本物初めて見たー!」
 ワァァァ、と何に対する音かも分からない歓声に見送られ、イオはクーナ共々、ライブ会場の片隅に準備されていたイスに座らされていた。



 其れはまさに壁であった。
『ウォォォォォッ!』
 怒濤と化して迫り来る、クーナとの握手、並びにツーショット写真を目当てにしたファン達が。
 会場でレンタルした武器ーー刃を潰したソードやゴム弾のライフルーーを持って、一心不乱に舞台を目指して走っている。まるで津波のごとく押し寄せる其れを、
『――来やがれ小童どもォォッ!!』
 それら全ての終着点に立ちふさがるのは、一匹のラッピーであった。巨大なマグロを手に、アイドルへと繋がる扉の前から微動だにしない。
 右へ、左へ。刃が振り回される度に、武器を持った集団がなぎ倒され吹き飛ばされていく。
 ――……なにこの世紀末。
 そうした訳の分からない光景を、クーナの隣で、画面の中で見届けながら。イオは思わず天を仰いだ。
 イオだけが周囲の展開についていけない中、アイドルと画面の右上にいるクロトの、のんびりとした会話がMCとして流れてゆく。
『相変わらずだねぇ』
「んー、やっぱり今回も無理かなぁ?」
『いやいや、普段より距離がないし、ナイトラッピーも後ろに下がり気味だ。十分チャンスはあるよ』
 ――それって普段より手加減出来なくて、観客席に吹っ飛ばさない為じゃ。
 クロトの巧みな話術の裏を読み、イオは頭痛を覚えた。なるほど、万一に備えてクーナを先輩もといナイトラッピーの流れ弾から守れということか。
 ――まず医療部隊の出動が最優先だと思うんだけど。
 楽屋裏で知る限り見た記憶がない部隊を思いながら、イオは静かに頭を抱えた。
「あれ、どしたのイオ? 頭痛?」
 マイクは切れている――だからこそ呼び捨てなのだろうけども。
「ごめんなさいクーナさん、言いたいことしかないんだけどまず聞かせて。アークスだけのライブでもやってるの、これ?」
 イオの問いかけに、彼女は困ったように首を傾げた。
「んー。むしろ、今回初公式?」
「は!?」
 イオの叫びに、クーナはいやさ、と前置きをおいて、
「前は何て言うか、歌う前とか歌った後とかにステージめがけて突撃されちゃうことがたくさんあってさ。酷い時は歌ってる最中とかもあったんだー」
「え、何ですかその無法地帯」
「アイドルって愛想を売る仕事だけど流石にそういう抜け駆け許す訳にもいかなくて、それでヴァントとラピピがそういう人達返り討ちにしてくれてたんだけどね」
 ――あぁ、なんか超先輩らしい。
「なんかそれが、ファンの間で『ラッピーを倒したら私と交流して良い』って感じになっちゃって」
「率直に言って訳が分からないですクーナさん」
「うん、あたしも訳分かんなかった。え、悪いことしてるから返り討ちに合ってるのになんで挑戦になってんのって思った」
『まぁそれを逆に利用しようと考えたのが、今回の企画。自重してくれたら一番だけど、一般人の前でそんなことされたらアークスの品位に関わるからね』
 個人通信――というか客席には聞こえない通信――でのクロトの言葉にそれはそうだろうと本気で思う。
 イオはオタクと呼ばれる人達を理解できないが否定する気はない。ただ、そういうものはあくまで一文化の中で納めないといけないというのが普通の考え方なのに、アークスが一般人も来るライブでそんなことをしてたら。
 ――アークスみんな馬鹿だって勘違いされそう。
『そこで、アークスの広報活動を兼ねたという形で公式化。彼の方も「馬鹿どもの性根を書き換えるには良い機会だ」とずいぶん乗り気になってくれてね』
「実際今までで一度だってヴァントが抜かれた事はないからね。その上今じゃ一部のファンの中で、ラピピやヴァントに挑むことがステータスになっちゃってるみたいで……」
「……先輩らしいや」
 ――でももっといい方法あった気がするけど。
 イオは静かに心の奥で呟いたーー誰にも聞こえないように。
「さぁ、今日こそ誰か突破してこれるかなー?」




 結果的に、今回のライブは好評の内に終了し、ナイトラッピーの防衛記録は未だ無敗神話を築いていた。
 なお、後日談ではあるが。
 このMC企画中の会話に花を咲かせる美少女二人の様子はしっかりカメラと写真に収められ。
 ライブ終了後即座に売り出された其れは、当日の間に完売したという。
 アイドルではない少女だけのものも含めて、全て。
「もう外歩けない……!」
 などと引きこもる美少女アークスの部屋の扉を物理的説得でこじ開ける先輩アークスがいたらしいが、真相は定かではない。


 更に蛇足。
 クーナライブにはラッピー二匹(クーナ親衛隊所属ラッピー)のグッズも売られており。
 実はナイトラッピーも売り上げにおいて多大な貢献をしているというのは、本人も知らないことである。




――あったかもしれない前奏曲。

カスラ「というわけで、諷雫さんにバックコーラスという形で護衛をお願いしたいんですが」
椿「つまりライブ中マスターに謳いっぱなしを強要すると。お帰りはあちらです」
リリィ「わぁ、相変わらずの鉄面皮な笑顔」
招かれざる客「まぁまぁ、まだお茶も飲み終えていませんから。あ、おかわり頂けますか」
永遠の小姑「沸騰したばかりで申し訳ないです」
予想外の良心「めっ」
不滅の策士「ああ、大丈夫ですよこの程度なら冷ませますから」
リリィ「あんたらそれでいいのか」
童女「ひょーめんちょーりょくが揺れている」
椿「言葉がおかしいですよ。いっそ絶対令でも出したら良いでしょう? オタクなんて訓練されてなかったらただの豚と言われるらしいですし」
クーガ「『歩くオタは訓練されたオタだ、走るオタはいらないオタだ』」
リリィ「何其れ怖い」
椿「そうそれです」
カスラ「中々偏見の固まりですね。絶対令は封印が決定してますから無理です。それにあくまでファンはファンですからね」
偏見の塊「ならもう商売にすれば良いじゃないですか」
経営者「――ほう?」
企画者「公式的にそういう馬鹿騒ぎをして良い時間帯を逆に用意するんですよ。参加券みたいなのでも売り出して」
第三者「参加券は転売の危機」
企画者「なら武器のレンタル、それなら人数もクラスも把握しやすいでしょう」
客観者「へー、中々おもしろそう」
経営者「……椿君」
冷徹な青年「それも守れない暴徒しかいないならライブにアークスは立ち入り禁止とかーー」
実益重視三十路「実に良い案です。もう少し詰めたいのでおかわりをお願いします」


 ――あとがき。
 なんかこんなんできました。
 ヴァントが存在する時間軸における、クーナライブの様子です。
 元々は相方との共通認識として、ヴァント=クーナライブの最強警備員ラッピー という設定があったのです。
 それが巡り巡ってなんでかこんな事になりました。マジでどうしてこうなった。
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