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少し遅れたクリスマス(4)

 春うららなメリークリスマスッ!♪((ノ・・ノ))♪

 続きからどうぞー。
 この更新が終わって決算が完了したら、ちゃんと続き書き出すんだ……。




「らぴぴー、おきてー」
 呼ばれた気がして、ぱちり、とラピピは目を覚ました。
 リリィが割烹着を着て見下ろしていた。
 ――?
 起きて、寒くて少し身震いする。あぁ、そうだ。雪山で、雪に飲まれて――
「おーしおーし、寒かったねー。ほら、体拭いてー」
 びしょ濡れの身体を優しく拭いてもらい、少しマシになる。
 でもまだ寒い。思わずリリィに縋りついてしまう。ここがどこなのかとか、今はどうだっていいや。
「うんうん、寒いよねー。ならさ」
 そういって、リリィはパッと後ろを示した。
 示された先には泡がどんどん出ているお風呂。
 ――ジャグジー風呂、だっけ?
 前に誰かから教わった言葉で。
 確か、暖かい物――ラピピは迷わず飛び込んでいた。
 ――……あっつい!?
 思ったよりも熱かった。というか熱すぎた。
 ジュワジュワという音とともに身体が勝手に水面へ行く。なんか普通のお湯より、凄い粘っこい。
 火傷しそうな位に熱い。
 ――なにこれぇっ!?
 思わずパニックになる。訳が分からない。
 その、瞬間。ふっと、誰かに見下ろされてる気がして。
「わー、美味しそう」
 ――え?
 凄い聞き覚えのある、少女の声。リリィではない、ラピピがアークスで生きている理由の一人。
「ラッピーの唐揚げ、きっと霜降りより貴重だね。嬉しいよ」
 そんな彼女が、とても良い笑顔で笑ってる。
 ――え、何の話? 霜降りって何?!
「ありがとうねー」
 ――違うよ。喜んでもらいたいのは霜降りなんかじゃなくて、ヴァントさんに見せようってクーナが頑張ってた、雪――


「ピィ――!!」
 ラピピは、思い切り叫んでいた。
「やかましい!!」
 その倍位の大声が聞こえてきて、身体がビクって震えた――それから気付いた。
 ――……夢?
 辺りを見回す。凄い見覚えのある、いつも使っているキャンプシップの中。なんか、夢だったみたいだ。
「起きたな、ラピピ」
 声の方を振り向く。瞬間、それが間違いだと理解した。
 簡易な椅子に座って、ラピピをじっと見ている、ヴァントの姿――その背景に、殺意で溢れた般若の顔が浮かんでいるのが、否応なく分からされた。
「ぴ、ぴぃぃぃ……」
「――言いたいことは無数にあるが、一つだけ聞こう。偽りなく答えろ」
 むしろ彼の望む通りのことを言えと言ってるのは、背景の凄みが増した事で分かった。一も二もなく頷く。
「これを見ろ」
 彼が展開した画面を、じっと見る。
 その中に映っていたのは、真っ白な雪原。いや、そこから何かがはみ出してた。なんだか、随分と見覚えがあって――
「このキャンプシップの状態に心当たりは?」
 ゾッ、と血の気が引く声。真後ろで大鎌を楽しげにフルスイングしてる死神がいるような気がした。
 伝えるのを間違えたら。絶対、死ぬ。
 でも、それ以上に、
「ピィ――!!」
 ――やったー、雪だー!!
 ラピピは嬉しくて両手を上げた。今なら呆気に取られる死神と鎌を気にせず一緒に踊れる気がする。
「ラピピ?」
 問われ、時が停止したように感じた。死神も慌てて鎌を構え直す。
 ――いけない、いけない……!
 大慌てでスケッチブックを取り出して、急いで言葉を書き示す。
『どうしても雪持って帰りたかったの。その方法を考えてたら雪崩が起きたの』
「……ほう?」
 般若の気配が、気のせい程度だけ薄まった。まだ首は繋がっている。
 慌てて二枚目を書いて、それも頭上に。
『クーナのライブに雪が必要で、代わりの雪を持って帰ろうとしたの。それでキャンプシップに流し込む方法を考えてたの』
 ――クーナ頑張ったんだもん。ヴァントさんに見せるって頑張ったんだもん。無駄になんかさせたくないもん。
 途端。
 般若の気配が消えて、ヴァントが諦めたようにため息をついた。
「――そう、か。雪を、クーナの為に、か……」
 後ろで踊っていた鎌を持った死神が、舌打ちして消えた。
 死神と入れ違いのタイミングで来た誰かが、ヴァントに何かデータを渡して「修理費はまた後で」とか言っていた。
「ラピピ、このキャンプシップは修理に回ることになった」
「ぴっ!?」
「そしてその責任は悪意がなくともお前にあることが確定して、罰金と修理費負担が発生した」
「ぴぴぴッ!?」
 雪が入って結果オーライと思っていたが、どうやらそれは良くなかったのかもしれない。
「その金は全て、俺が払うことになってる」
「ぴぃぃ!?」
 ――そんな、なんでヴァントさんが!?
「椿が言ってただろう? お前はクーナのサポートパートナーだが、表向きは俺のサポート扱いになると。当然、サポートパートナーの責任はマスターであるアークスが負う」
 言ってた。そうだ言ってた、クーナのサポートパートナーになれたことは秘密だからマスターはヴァントって言うんだよって何回も何回も。そう言わないと二人とも困るって。
「だがな、俺が怒ってたのは修理費ではない。お前の行動だ」
 ――行動?
 どういうことだろうか。首を傾げるラピピにヴァントがため息を吐く。
「どうして誰にも相談せずに雪を取りに行った。寒くて帰った時にどうして椿達に相談しなかった。思いつきで行動して、もしあの場にドンナとクーガがいなかったらどうする気だった」
 言われて、全く考えていなかったことを聞かれて驚く。
 簡単だと思って、すぐ済むと思った。でも、寒くて戻って、それであったかくなったからまた行った。雪を入れたら良いと思ったけど、どうすれば良いかは分かってなくて――。
 雪崩が起きた時、まずバンサ奥さんが投げてくれて、羽で掴んでたけど離れてしまって、そしたらくーちゃんが杖と剣で助けてくれた、と思う。ラピピは足だけ掴まれて振り回されたからすぐに気を失ってしまったけど。
 ――でも、もしも二人がいなかったら。
 ラピピはすぐに雪崩に飲まれた。そして、雪の中で寒い思いをしてひょっとしたら動けなかったかもしれない。
 ――もしもそのまま誰も助けてくれなかったら……。
 ガクガクブルブル。暖かいのに寒い時みたいに震えが止まらなくなる。
「……今度会った時、オングとクーガ、それにライサやリン達にもお礼を言ってから謝れ」
 ――ライサさんとリンさん?
 会ったことは何度もあるけど、どうしてその二人なんだろう。
「ライサはお前とクーガが雪に埋もれかけたのを助けて、リンはお前を助ける為に雪まみれになってた」
 ガーン、と頭を殴られた気分だった。 
「ぴぃぃっ!」
 涙がこぼれて止まらなくなった。


 ――さて。
 目の前で泣き出すラピピを見ながら、ヴァントは頃合いだと見て、次の行動を決めた。
 ラピピは今までの言葉を説教だと感じているのかもしれない。しかし事実は違う。
 ヴァントはただ本当のことを言っただけで、ラピピがそれを自覚しても尚、お仕置きが必要と考えている。
 ――俺もそうだったし。
 喧嘩をするのはよくない、ましてや相手を治療行きにさせるなんて以ての外。
 そんなことは分かり切ってる。が、それで抑えがきくはずもなく。
 最終的にダーカーの巣の上に二日間逆さ吊りにされて反省しろと言われて、ダーカーを食って飢えをしのいだ。
 因果応報は必要だ。だからヴァントはこれから行うことに躊躇いは微塵もない。



「――ついてこい」
 そういって、ヴァントが音もなく立ち上がる。
 慣れた手つきでハッチを開けて、外に出ていく――ワープゲートではない出入口――のに、ラピピも涙を拭いて、慌ててついていく。
 キャンプシップの外には、一面の銀世界――ではなく。
 無骨な鉄の臭いや金属音が闊歩する、まるで工場か何かの中だった。
 何をしてるのか分からないけど、沢山の人が色々な作業をしてる。端末と金属を見比べたり、金槌でキャンプシップの表面を叩いてたり。
 ――修理、してるのかな?
 キャンプシップ、みたいな機械は時々メンテナンスしないといけない、っていうのは椿から教わった。もしかしたら、ここはその為の場所なのかもしれない。
 足下にいろんな線が走っていて、椿から貰った雪山用の靴だと、少し歩きにくい。なんとか、金属音の中をおっかなびっくり付いていって――
 急にヴァントが立ち止まった。
「待たせた、迷惑をかける」
 彼の声にあわせて、ラピピも顔を上げる。
 さっきまでと余り変わらない、機械の音が響く中――視界の真ん中に鎮座している、キャンプシップ。其れと、髭が濃い男性と、その部下みたいな人達。
 ヴァントの声に、髭の男性――なんだかロックベアが人になったみたいな筋肉隆々な人――が笑って言った。
「他ならぬあんたの頼みだからな、聞いてやらん訳にもいかねぇよ。ちょうど外見も終わったとこだしな」
 其れから、少しだけ言葉に詰まって。
「そんで、見せて良いのかい? ショックだと思うぜ、聞いてる話だと」
「構わん、開けてやってくれ――ラピピ。雪はそのままにして運んできたお前のキャンプシップだ。良く見ておけ」
「ピィッ!」
 ――雪!
 ヴァントの言葉に、少し浮かんでいた疑問なんか一気に消し飛んだ。
 雪があれば良いって、クーナは話していた。ちゃんと、取って来れたんだ。
 ――これで、クーナ喜ぶ! それに、きっとヴァントさんだって喜んでくれる!
 誰よりも大好きな二人が、きっと笑ってくれるーーそんな光景を思い描いて、ラピピは自然と笑えていた。
「――そんじゃ、開けるぜ」
 髭の人の言葉と一緒に、ゆっくりと、まるで宝石箱が開くみたいに後部ハッチが開いていく。
「ピィ……!」
 ――雪、雪、雪……!
 ハッチが開き、中から溢れだしてきたのは、雪――
 じゃ、なかった。
 ドォッ、とバケツをひっくり返したみたいな勢いで外に出てきたのは――冷たい、冷たい水だった。
 ――……え?
「よぉしお前等急いで修復するぞォォッ!」
『おぉぉっっす!!』
 そこにいた人達が、一斉に中に入り込んでいく。直後に聞こえてくる悲鳴の嵐――
「……ぴ、ぴ……?」
 ――え? え? え、雪、じゃ……?
「――ラピピ」
 何が起きているのか分からずに混乱するラピピに、ヴァントの声が降ってきた――とても、悲しげな。
「普段乗ってるキャンプシップの中……暑くもなく、寒くもなかったのは覚えているか」
 コクン、と頷く。外に出たら寒かったり暑かったりしても、どうしてか、乗ってる間は凄く過ごしやすかった。
「キャンプシップには温度調節機能がオートで発生している――どんな状況で有っても、故障していない限りは常に一定の温度を保つ。例え『氷点下の雪に覆われようが、雪を溶かしてでも常温へと戻そうとする』」
「……ぴ……?」
「そして、雪は氷点下以下の大気でなければ、やがて溶けて『水』へと変わる――」
 ――……そ、んな?
「ぴ、ぴ……」
 ――だ、ったら。頑張った、雪、は――
 続いている彼の言葉も、何一つ頭に入ってこなくて。
 カクン、と。足から力が抜けて、両の羽が床につく。雪だった筈の物に触った。
 とても、とても、冷たかった。
 ――でも、これ、雪じゃ、なくて……。
「――ぴぴぃぃぃぃぃ……!」
 ボタボタと、涙が溢れていく。止めどなく流れる其れを止める術は、ラピピには何一つなかった。



 ――さて、修理費合計はどうなることやら。
 諦めの境地に入りながら、ヴァントは流れ来る雪解け水を無言で見つめた。
 隣で動く気配を見せずに佇んでいるラピピに、静かに言葉を続ける。
「少なくとも、お前の気持ちは有り難い。其れはクーナも喜んでいる筈だ。だが、今回は先走り過ぎだ。せめて、俺やリリィに相談してから――」
 パシャ、と水音。思わず、そちらを見やる。
「――ぴぴぃぃぃぃぃ……!」
 床に羽をついて、前のめりになったまま。
 大きな瞳を丸くして、ラピピがボタボタと涙を流していた。
「……やりすぎたか?」
 その様子に、思わず呟く。やった事の結果を教えるのは間違いではないと思ったのだが、これでは――
「――ヴァント氏ー、どうなっうわぁ」
「――おぉう」
「わーお、予測はしてたけど」
「……ヴァントさん、流石に擁護出来ません」
「ヴァントさーん……やりすぎにー……」
「……何故だ」
 背後から聞こえてきた、同行者達の声。振り返れば結構な非難の目を向けられていた。
「このぐらい仕置きに入るだろう」
「いや鬼だって」
「ヴァントさん達の為に雪を持ってきてあげたかったんでしょ? そのヴァントさんが必殺仕置き人しちゃダメだと思うお」
「というか、そもそも仕置きですらないような」
「……こう、おもちゃを没収するだけでは飽きたらず没収したおもちゃを目の前で叩き折る昔ながらの父親のような」
「間違いなくやりすぎと一発で分かる例えだね」
「……そ、そこまで行くのか?」
『行ってる』
「……むぅ」
 全員一致の返答は、珍しくヴァントに二の句を告がせなかった。
  
「……分かった、取り合えず方法を考える」
 ラピピを慰める声と修理音だけが響く空間、クーガが席を外して数秒後にヴァントはようやく言葉を発した。
「だねぇ」
「それがいいでしょう」
「……ぴー?」
 ボタボタと涙を流したまま、ラピピが縋るように見上げてくる――答える言葉を持たないため、放置。
「えーと、問題として空調とかがクリスマス仕様じゃなくて、ライブで使う予定だった雪がない、かな」
「確かな」
 イリスの問題確認に、ヴァントはただ淡々と頷いた。
「それ、根本的に設備をどうにかしないと無理じゃないですか?」
 怒濤の修理作業に目をやっていたライサの何気ない一言は、死神の断罪に似ていた。
「ぴっ!?」
「ライブ会場なんて熱の固まりですから、雪なんて持ってきてもすぐ溶けるでしょうね」
「まずライブ会場の温度をクリスマス仕様まで落とさないと」
「んー、ん? ――ごめん、ちょっと離れるねぇ」
「あ、はーい」
 凜に頷きながらも、朱雀はラピピを撫でる手を止めない。
「でも雪を運ぶ問題が残らないかい?」
 ただ、ラピピの震えが酷くなっているのに気づいている様子もない。
「アークスシップ内で作るとか?」
「ならやっぱり温度ですねぇ」
「でも調整無理って言ってるなら、多分もう一回温度下げるのに数日かかっちゃうだろうね」
「まぁ、初めから詰んでますよね」
「運営を訴えるしか手がないね」
 ライサ、朱雀、リン、イリスの四人が問題を口々に音にする。ヴァント以外震えまくっているラピピに気づくことなく。
 ヴァントは静かに、ただしはっきりと呟いた。
「……お前ら、もう俺のこと責める資格はないからな」
『えっ?』
「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
 ラピピの今までにない大号泣が響き渡ったのは、その刹那の事だった。
「わ、わわわ!?」
「ラピピー!?」
「……あぁ、それはそうですね。少し、配慮が足りませんでしたか」
「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「ただいまにゃー、どしたにゃー?」
「――鳥やかましい」
 泣き叫ぶ声が響く中、連絡から帰ってきたらしい凛・クーガの声。ついで、
「くーちゃん来たよー!」
「こんにちは、ラピピはどこに……!?」
「ラピピー? ……ラピピ!?」
 とんでもない剣幕で泣くラピピに駆け寄るのは、彼を探していたユキナミとリリィと椿。
「――さて、どうしたもんか」
 それぞれの感想とこの先に待つ面倒くささと泣きわめくラピピからそっと目を反らして、ヴァントは静かに呟いた。


 ――あとがき。
 まだ、おわら、ない、だと……?!
 人間、頑張ったことが全部徒労に終わったらそりゃぁ凹みますよね(・・ )
 次こそ、次の更新こそ、終わらせられる筈……もう雪も解けて桜が咲いてるんだけどね!
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