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存在しうる時間軸――Fighter――

 先に言っておきます。勝手な捏造です、実際どうなのかとかは知りません。
 EP-3-3段階の情報で書き上げています(・・ )





『――――、愛してるよ。ずっと、ずっと――』
 忘れられない、最後の言葉。
 最後に残った、ただ一つの欠片――

「――オォォォォ!!」
 視界を覆いつくさん程に荒れ狂う、膨大な紅闇の内側。
 強大な蜘蛛が、命を刈る蟷螂が、棍にて潰し来る巨人が、巨大な怪鳥が、輪を操る四足獣が――
 無尽蔵に襲い来る敵性存在の波を、あらゆる全てを切り裂き続けて、必死に先へと歩き続ける。
 進み続ける中で、もう引き返す事も他の道へと進むことも出来ない嵐の中で。
 帰る道も失って、ただひたすらに敵を――道を阻む全てを斬り続ける。
 全身を裂傷や打撲痕で彩られ、灰色の外套は紅黒に染め上げた。
 持ち物は全て使い果たして、鞄の中身は何もない。

『――――なら、これ似合うよ! 私が保証する!』

 それでも、記憶の匂いを詰めた其れを、離しはしないと抱き締めて。
 ただ、先へ――彼女が待つ、其の先へ。


 世界を崩壊させた暴風に呑まれ、自身の居場所も奪い取られた。
 時の感覚も失って、大切な人達が見えなくなって、名を呼ぶ声も聞こえなくなった。
 六芒の欠片も全てが散って、存在しない六芒も闇へと果てた。
 共に過ごした戦友達も、焔の惑星で刃を交わした龍族達も、海の惑星で出会えた友も、白黒の惑星で出会えた友も、宇宙を旅する巨大船団も、其の全てが闇へと呑まれ――
 ただ一人。
 たった一人、だけ。
 果てる事無く生存した、自分だけ。其の身体だけが、自動で働いて。
 泣きそうな心を、必死に庇って、魂を失ったように、けれども懸命に前へと進んだ。
 足を止めれば、消えてしまいそうになって。
 心身に響く激痛を、己の中に呑み込んで。
 今有る位置を振り返れば、心も意思も闇に吸い込まれて行きそうで――
 其れ全てを拭い捨て。途切れ途切れの今を紡ぎ合わせて、彼女へと到達する為に。
「――オォォォォ――!!!」
 牙を、爪を。己が持つ刃を振るって。





≪――貴様との闘争も、此処が終点であるか≫
「――お前か」
 暴風を全て切り伏せた世界の先、辿りついた戦場の上。
 ただ独り立つ、闇色に輝く巨漢の戦士。
 鋸の様にささくれだった巨大な刃を背負った、巨躯――ファルス・ヒューナル。
≪あれは、もうお前と共に有った女ではない。其れでも、向かうと言うのだな。我以外の全てのファルスを打ち破り、尚も≫
「無論」
 若人も。双子も。他にも、自身が出会った全ての眷族を打ち破って。
 彼女の為に、此処まで辿りついた。約束を果たすために――共に、ある為に。
≪――使え≫
 放り投げられた何かを、空中で受け取る――体力の、回復薬。もう、この世界には存在しない筈の回復剤。
「――何の真似だ」
 半眼で睨み付けると、ヒューナルは楽しそうに笑った。
≪貴様との闘争だ。どちらが終わろうと、悔いを残したくはない――
 我からの、最初で最後の頼みだ。全力で、闘おうではないか≫
「――そうだな。お前とも、もう、随分と長くなった」
 受け取った其れを、一息で飲み干す。身体の傷が修復されて、体力が元へと戻る。
 空になった其れを投げ捨てて、笑みを浮かべる。そうして、己の刃を――世界が壊れても持ち続けていた、古樹の大剣を引き抜いた。
≪――そうだな、随分と長い闘争になった≫
 ヒューナルもまた、楽しげに笑いながら、其の刃を引き抜いた。
「酒を飲み交わしたこともあったな、そう言えば」
≪フハハハ、良く覚えているものだ。我も長く生きてきて初めてであったぞ、好敵手と酒を飲むことになるとはな≫
「認めた敵に対しては良くある事だろう――お前以外と交わした事はなかっただろうがな」
≪無論であろう。我のように闘える者が、早々存在されても困る≫
「そりゃそうだな――」
 轟、と。
 互いの気配が、膨大に膨れ上がって。
≪――始めようぞ、――――!! 永きに渡った闘争、其の最後の決着を!≫
 世界を壊しうる剣舞の嵐が、凪いだ闇へと荒れ狂った。



『……――――』
 初めて、出会った時。
 初めて、名前を呼ばれた。

『ありがとう、――――。わたしを助けてくれて……』
 言葉を交わした。
 大切な言葉を、初めての想いを。

『わたし、待つだけしかできないから……だから心配だけは、させてほしい』
 彼女から、心配された。
 誰一人関わってこなかった、心配される事なんてなかった中で。
 たった一人だけ。彼女、だけが案じてくれて。

『おかえりなさい、――――!』
 彼女の声は、流星のように心の奥で瞬いて。
 凍てついた心の中で、暖かさと一緒に輝いた。

『一緒にこんな景色が見られるなんて、思ってもいなかったよ。ありがとう、――――』
 自分だけでは気付かなかった、吹雪の夜に広がったオーロラ。
 仄かに紅かった少女の頬が、楽しそうに色味を増して。
 二人触れ合って見上げた夜空は、知識として持っていた其れよりも遥かに綺麗で。

『わぁ! 見てよ――――、ほら! 凄く綺麗な蝶々がいるよ!』
 森の中で足元を飛んでいた蝶を見て、何よりも楽しそうに彼女が笑う。
 其れを見て、自分でも笑いかけられた。いつもなら気付かなかった輝きは、彼女が居たから見つけられた。

『えへへー。二人でゆっくり散歩するの、私はすっごい大好きだよ!』
 コツ、コツと冷たく響いた自分の足音と。
 テク、テクと暖かく伝わる自分のじゃない足音で。
 二つが重なって聞こえる音は、何故か心の奥まで響いて聞こえて。
 其の全ては、彼女の声が教えてくれた。


 人と、関わる事が苦手だった。
 どうすればいいか、全く分からなかった。
 どうすればいいのか分からなくて、立ち尽くしていた自分の手を、彼女は――マトイは、何の躊躇いもなく掴んでくれた。
 一人になって、幾度もの夜を過ごして冷たくなった身体でも。かつて差し出された彼女の掌が、未だ燻る己の熱を脈打たせる。
 彼女を失って、空虚へと変わり逝く意思。
 全てが失われる前に、彼女への想いを注ぎ足して。
 大切な想いが、自分を追い詰め苛んでも。
 それでもこの想いだけは、手放さない――
 ――今度こそ、掴んでみせる。
 轟、と荒れ狂う闇に囚われた、愛する少女。
 其の闇を引き裂くための、爪も、牙も、刃も、まだ残っているから――



≪――見事。良き、闘争で有った――≫
 ザァ、と漆黒の体躯が闇へと溶けていく。
 どこか満足そうに笑っていたヒューナルが消えていく様を、膝をついたまま見送って――
 全身を覆う裂傷もあれど、未だ身体は前へと進む。精魂尽き果てるには早過ぎる。
「――待って、いろ」
 彼は、一人立ち上がった。
 引き裂いた闇の向こう側――ただ一人、世界全てを滅ぼした、愛する少女の隣へと。





≪そう。ここまで、来たの≫
「――あぁ。随分と待たせたな、マトイ」
 深く暗く冷たい紅。愛している少女の顔で、彼女がしないように笑う最後の敵。
 一糸纏わない、神秘すら感じさせる佇まいで笑っている闇――
≪この身体が、それ程大事? もう、死んだ子が?≫
 侮蔑的に此方を見据える彼女へと、同じように笑い返す。
 ここまで辿りついた、全てを持って――
「違うな――まだ、マトイの意思は生きている。俺の、中に」
≪何を世迷い事を――≫


『ねぇ、あなた? もし、もしだよ』
 彼女が崩壊する――深遠なる闇へと変わり果てる、その一週間前に交わした言葉。
 寝床で睦言を交わした中で、零れ落ちた彼女の想い。涙を零しながら紡ぎだした、その言の葉。
 月明かりを受けた、一糸纏わぬ姿で震えていた彼女を抱き締めた感覚は、幾年を越えて思い出せる――
『私の中の、深遠なる闇、が、出てきた時は――』


 自らの世界が崩壊して。友人も、知り合いも、生きてきた船団も、自らの名前すらも、認識できずに忘れ去った。
 存在していた、何もかもを失って尚。ここに居る為だけに、命の全てが叫んでいる。涙で出来た想いが、今を生きる呼吸を紡いでいる。
 いくつも失くなった後に、強く残った一つの想い。
 一つ残った、最後の想い――

「『あなたに、私を、殺して欲しい』――最後の願いは、誰にも壊させない」
 その為に、ここに居る。其の想いを守れるように――全てを失くして尚も、此処に居る。
 少女の姿をした、深遠なる闇へと。
 彼は、其の刃を向けた。
 ――だから、終わらせてやる。お前の、望んでいた通りに。

「マトイ。お前を、愛している――この世界の、誰よりも」




 未曾有の、時を潜り抜け。
 全てを賭けて、辿りついた最後の時――
「――未来永劫、離れない。いつでも、俺は傍に居る。誰よりも、お前を愛している――マトイ」
 終わりゆく世界の中で、共に倒れた愛する者への告白。
 全てを失って尚も残っていた、最後の想い。
 滅ぼした闇の中、最後に残った消え逝く意志の一欠片。
 終わり逝く時の、一番最後。
 愛する少女が、最後まで守り抜いた想いの言の葉――

「……私、も――愛、して、る。大、好き、な、あな、た――」





 幾許もの空間を、時間を移動して到達した、彼女が生きている時間軸――彼女が、彼女のままで生きている時間軸。
 それだけで、失った筈の心が、何よりも温かい。だから、こそ。
『ここで死ねば、安らかなる終焉を迎えられる。……ゆっくりと、眠れ』
 ――貴様は、知らない。彼女が何を想っているのか。どれほどにお前を愛しているのか。
   だから、終わらせてやってくれ。彼女が、彼女のままで終われるように。

 ――マトイ。お前を、未来永劫、愛している――



 ――あとがき。
 という訳で『仮面』物語です!!
 何で思いついた自分、何でこんな想い紡ぎ出した自分!
 何で一日で書き上げてしまった自分!

 元々は、BUMPの新曲『ファイター』を聞いて思い浮かんだ話なのですが、曲調から何故かペルソナの物語が浮かんでしまって。
 故に、時間軸上、彼が到達していた世界感を書こうという事で。
 書き出したらこうなりました。

 自分の中ではハッピーエンド的なイメージで書き上げたのですけれど、相方から『所によりってつけなさい』とお言葉を頂きました。何でや(・・?)
 それでは、また次なる物語にてお会いしましょう。

 使用曲:BUMP OF CHICKEN『ファイター』
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