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クリスマスって何だ

 寄贈作品です、よろしければ続きからどうぞ(・・ )




 昔々、具体的に言うと十年よりちょっと前、ナベリウスの森にはヴァント君という少年がいました。

 深い深い青髪と目、まだまだ小さな可愛らしい男の子――のはずでしたが、生来なのか目つきの鋭さと友人との喧嘩っぱやさでなかなか末恐ろしい子でした。

 そんな彼の一番の友達は、熊さんでした。いえ、実際は熊は熊でも体の部位に岩石のある不思議な岩熊さんでしたが。当時の長老さんの六番目の子どもの子どもだったからか、ロク君と呼ばれていました。

 当時の森は熊さんと狼さん、鳥さんがそれぞれ住む場所を決めていました。ダーカーという恐ろしい生き物も時々出てきましたが、ヴァント君のお父さんとお母さんはダーカー退治がとっても上手で、また退治の仕方を教えるのも得意だったので皆そこまで気にしていませんでした。

 ご飯は皆で果物や魚を沢山食べていましたが、やっぱり皆お肉も大好きでした。でも皆で話し合って自分や家族を食べようとする悪い奴だけご飯にしようと決めていました。
 元気いっぱいな熊さんや、とっても足が速い狼さん、空を飛べる鳥さんの中には自分が一番強いと信じて暴れん坊をしている子もいましたが、
「井の中の蛙、胃の中のおかずになるってことね」
 とはヴァント君のお母さんの言葉でした。この言葉の意味はヴァント君や子ども達には分かりませんでしたが、大人達はヴァント君のお母さんの言葉をとっても誉めていました。当時の森の流行語になった程です。森には当然文明なんてありませんでしたが、ヴァント君のお父さんとお母さんのせいか動物達は大変世俗的でした。

 そんなある日、ヴァント君とロク君は二人で遊びに出かけていました。

 ヴァント君は森の子どもの中で一番小さい子でしたが、小さな体に似合わぬパワーを持っていました。十年とちょっと後仲間達から「ないないない」と言われて仕方ない程度に強かったのです。
 ロク君は熊の子ども達の中では大分大人に近い子でヴァント君のお父さんよりも大きかったのですが、おじいちゃんが最初の男の子の孫ということで大変可愛がったのと、一年程度では全然大きくならないヴァントの影響かちょっと子どもっぽい所がありました。

 そんな二人ですから、一度出かけると帰ることを考えずにどこまでも行ってしまいます。その日も狼さん達の遊び場まで行ってしまい、ファングの子ども達と喧嘩をしたりしていました。
「何だお前、女の子を戦わせるのか」
 そこにいた狼君と狼ちゃんはとっても仲良しで、でもヴァント君とロク君はその様子に意地悪を言ってしまったのです。
 これに怒ったのは狼君だけではありません、実はとっても怒りん坊だった狼ちゃんの怒鳴り声は落ちていた葉っぱを揺らす程でした。
 狼ちゃんは最初に狼君をバカにしたヴァント君を殴り、狼君は狼ちゃんを投げたロク君に噛みつき、ヴァント君は棒を振り回して暴れ回りました。
 狼ちゃんはどんなことでもすぐに怒ってしまい、狼君は心配して止めたり助けてあげたりしていたことをヴァント君達が知った時には皆ボロボロで、お日様は山に隠れ始めていました。

 大変だ、夜になってしまう。慌てたヴァント君とロク君は狼君と狼ちゃんと仲直りをしてからすぐに走り出しました。お父さん達は怒るととっても怖いのです。

 とにかく近道、と二人は獣道にもなっていない場所を進みました。暗い場所も恐れないヴァント君とロク君は暗い茂みも構わず進んでいました。
 その暗さが顔を出した月や星の光の下でも薄れないこと、水が濁っていたこと、葉っぱが変な色をしていたことに急ぐ二人は気づけるはずがありませんでした。

 暗さに慣れた時には、もう遅かったのです。

 暗い場所の真ん中には、真っ黒い蜘蛛がいました。虫なんて全く気にしない二人でしたが、ロク君と同じ大きさで宙に浮かぶその蜘蛛は明らかにおかしいと足を止めます。
 蜘蛛は赤い目をギロリ、と二人に向けました。熊さん達とも狼さん達とも、鳥さん達とも違う何かは気持ち悪くて不気味でした。
 
 カサカサ、と嫌な音がそこかしこで聞こえます。ヴァント君とロク君はすぐにお互いに背を向けました。そうすれば、宙に浮かぶ蜘蛛よりは小さな黒い蜘蛛達が二人を見ていました。
 これはまずいぞ、とヴァント君達はようやく自分達が黒い虫達の住処ーーダーカーの巣に入ってしまったことに気付きました。

 実は、ヴァント君もロク君も喧嘩っ早い子達でしたがダーカーに会うことはほとんどありませんでした。
「こいつらすぐに喧嘩売ってあぶねーよ」
 とお父さん達がダーカーが出るとすぐに退治してしまうからです。
 退治の為の力の使い方を知っていても、慣れていなければ大変です。ましてや二人は疲れていたので普段の半分も力が出せませんでした。
 小蜘蛛は何回か叩いて殴って倒せます。問題は宙蜘蛛です。飛んでいるので木を登ったり石を投げたりしてどうにかしようとしますが、すぐに逃げられたり邪魔されてしまいます。
 その上、ああなんということでしょう。宙蜘蛛がぐぐっと小さくなったかと思うと不思議な種が幾つか飛ばしてきました。慌てて避けますが、そこから赤黒い小蜘蛛が出てくるではありませんか。
 赤黒い小蜘蛛は黒いだけの小蜘蛛よりもずっと速くて危険でした。ヴァント君は素早く、ロク君は身体が丈夫でしたがそれでも何回も小蜘蛛の刃の生えた足を避ける内にどんどん怪我をしていきました。

 ダーカー退治が上手な大人なら。
 一人が小蜘蛛をおびき寄せ、もう一人は宙蜘蛛を狙います。宙蜘蛛を倒せなくとも変な種子に見える卵を生ませませんし、卵が外に出てきたら小蜘蛛が出てくる前に壊してしまいます。
 でもヴァント君もロク君も小蜘蛛と戦うのも慣れてませんでしたから、とにかく近よってくる小蜘蛛を先にどうにかしようとしてしまい、どんどん卵を出されて赤黒い小蜘蛛が出てきてしまいます。

 まずいぞまずいぞ、と大人達がいれば飛び出す程にダーカーの群が増えていきます。
 辛いぞ痛いぞ、負けず嫌いで頑張り屋のヴァント君とロク君もフラフラになってしまいました。
 今だー、と宙蜘蛛が小蜘蛛達に命令し、小蜘蛛の群が突風のように二人に襲いかかったその瞬間。
 夜空に綺麗な虹が生まれました。

 とても綺麗な虹だったと、ヴァント君はその時のことを振り返ります。
 虹の光線はダーカーの群を焼き、宙蜘蛛も逃げ出す間もなく倒れました。
 虹は雨となって、暗くなった森を明るく照らしました。ダーカーが倒れても暫く光が散り、その場所にあった木はどんどん倒れてしまいました。
 ロク君に守られながら、ヴァント君は必死に叫んで安全そうな場所へ逃げます。彼らが離れた場所はどんどん光に呑まれていきました。
 ようやく光がなくなり、ヴァント君とロク君は倒れ込むように地面に膝をつきました。
 光がなくなった場所は緑がなくなり茶色の地面が広がっていました。ダーカー退治が得意な大人達もびっくりです。
「大丈夫?」
 熊さんとも狼さんとも、鳥さんとも違う言葉がヴァント君の耳に届きました。
 それは、ヴァント君とお父さんとお母さんが使う言葉でした。

 不思議な杖に導かれた少女は、ダーカーの群を喰らい尽くした場所にいた人間の男の子と岩熊の子どもに大変驚きました。
 この森に住む人間はいない。そう聞いていたのに、目の前にいるのはアークスシップで遠目に見かけた子どもと同じように見えます。
 実は先住民族がいたのだろうか、それともアークスなのだろうか。そもそもどうして岩熊と一緒にいるのだろうか。
「大丈夫?」
 聞きたいことは沢山ありましたが、少女はまずそれを聞きました。
「大丈夫」
 返事はすぐにありました。ボロボロで痛々しい状態に見えましたが、男の子はきちんと人間の言葉で答えました。
 それ所か、岩熊もきちんと頷きました。人間の言語を理解している、そう思える程きちんとしたタイミングでした。
 そして、今度は男の子が質問してきました。
「アークス?」
 その質問は、確認でした。そして、正しくもありました。
 でも、だからこそ少女は困ってしまいました。
「えっと」
 少女はアークスです。でも、秘密のアークスでもありました。導きの杖はこっそり少女に告げています、男の子はアークスの子どもだろうと。
 それは子どもながらにアークスをしているのか、親がアークスなのかまでは少女には読みとれませんでした。間違いなく親がアークスなのですが、少女も混乱していたのです。
 でも、とにかく秘密のアークスな少女は男の子に本当のことは言えません。言えるはずがありません。
 では何と答えたら良いのか。少女はすぐに杖に心の中で尋ねました。
 黙る少女を、ヴァント君とロク君が真っ直ぐ見つめます。せせらぎや葉音が促します。
 そして、杖が少女に素敵な言葉を伝えます。
「私はね――」


「――それで、そいつは言ったんだ。『自分はサンタクロース』だと」
 十年と少し後、ヴァント君は君付けするのを躊躇う青年へときちんと成長しました。ロク君もロクさんと言いたくなる位に偉くなっていました。
「「「「は?」」」」
 でも、その二人の思い出は聞く者にとってはカオスです。
 久しぶりにヴァント君がアークスシップに戻ると、クリスマスというものの準備でショップエリアは大変賑わっていました。丁度ロク君とお酒を飲んで帰ってきたので、すぐに少女のことを思い出したのです。
 ――なんだ、サンタクロースは有名だったんだな。
「俺もナベリウスの森にいたから知らなかったが、子どもをダーカーから守る為に白と赤の服を着て戦う奴らをそう呼ぶんだろう?」
 ヴァント君の語りはそんな一言から始まり、そして聞き終えた者達は顔を見合わせました。
 反応は様々です。驚く人、天を仰ぐ人、何も聞かなかったフリをする人。自分の知っているサンタクロースの話を思いだそうとする子もいれば、涙目になって違う違うと呟く子、サンタクロースについて説明された絵本を買ってくると言いつつ逃亡した子もいます。
「――集合」
 こういうヴァント君のある意味天然発言を聞いた時に音頭を取るのは、彼のサポートパートナーちゃんの役目です。
「どういうことよこれ」
「えっと、つまり自分の正体を言えなかったアークスの誰かが、サンタクロースさんって言ったってことですよね?」
「サンタに迷惑」
「んー、でもさ、逆にそれをずっと信じるってのも凄いよねー」
「違う違う、クリスマスはダーカー虐殺の時間じゃなくて、もっと素敵な恋人達の時間だもの」
「ヴァント氏ってそういう所純粋だねー、擦れてないっていうか」
「でも本当に何者だったんでしょう? 実は本当にアークスじゃなかったとか?」
「うーん、それはないかな。裏の人間ならともかく、アークス以外の人じゃキャンプシップにそもそも進入できないもの」
 まじめに整理する人達から離れた所で、ヴァント君ととある少女が話を続けます。
「すごいねぇ、サンタさん」
 その少女は、真っ白い髪に澄んだ赤い目をしていました。
「ああ、本当に強い奴だった。ただ親達にこの話をすると何故かいつも笑われてな、集まる度に何故かネタにされていた」
「不思議だねぇ」
「その後も何度か会うことがあったが、暫くして見かけなくなってな。何度目かの春に俺もこのシップに入れられてそれきりだ」
「そっかぁ、サンタさんって冬にしか来ないもんね。あ、でもそれなら」
 少女はとっても嬉しそうにしていました。
「私が春までにアークスになれたら、サンタさんに会えるかな?」
 その言葉に、ヴァント君はしばし黙り込みます。
 周囲の人々の喧噪は、まるであの日の森の音のようです。
 やがて、
「――そうだな」
 ヴァント君は、穏やかに笑いました。
「お前がアークスになれば、きっとまた会えるだろうな」




 今作はトッキーからのクリスマスプレゼントでした(・・ )
「クリスマスにふさわしい夢と希望がギュギュっと詰まったメルヘンです★」
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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