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アークスとサポートの交流記録「ヴァント&マンルーン」

 山なし落ちなし意味なし短編です。
 続きからどうぞ。


 ――どうしてこんな事になっているのだろう。
「ん、どうしたマンルーン」
 グゥ? と。
 隣に座る、蒼髪の青年の疑問に合わせるように、白髭の生えた巨大な岩熊が、不思議そうに顔を向けてくる。その手には、アークス製の木樽。
 たぷたぷに中身が入った其れからは、はっきりとしたアルコール臭。ついでに岩肌が、若干赤い。
「いえ、何でもありません」
「そうか、まぁ飲め。どうせたんまり準備してある」
 ウォゥ、とそれに同意するように、正面にいた、番の巨大な狼達が小さく吠える。
 彼らの前にも岩熊同様の匂いがする液体が、大きな皿に並々と注がれていた。岩熊以上に顔は真っ赤だ。
 背後では、パチパチと肉の焼ける匂い――ただし、猪。くるりと振り向いてみると、小さな狼達が、まだかなまだかなと、涎と共に其れを見ている。
 隣では、平然とした顔――ただ普段よりは幾分柔らかい笑顔――で、放浪者が杯に並々と入った酒を飲んでいた。
「――やはり清酒は良いな、落ち着く。リリィもつくづく良い酒を知っている」
 グゥォゥと、肯定するように白髭が笑う。片手の樽の中身を減らしながら。正面では巨大な狼達が嬉しそうに笑い合っていた。
 待ちきれなかったか、後ろから子供狼の楽しげな悲鳴が聞こえてくる。
 空は世界の果てまで透き通るような晴天。時折小鳥達が歌いながら飛び回る、ナベリウスの森エリア――その、かなりの最奥の地。
 正面に湖を望む、大きく開けた平原にて、白熊――ロクベルトと巨大な狼――ファング夫妻とその子供達――に、放浪者――ヴァントが集った、世にも平和な宴会場にて。
 ――本当に何故だろう。
 眼前で繰り広げられている光景が未だに信じられず、マンルーンは渡されたカップを握ったまま、冷や汗と共に内心で呟いた。





「――ん」
「あ……こんにちは」
 事の発端は、単なる偶然からだった。
 マスターから与えられた仕事――採取作業をこなしにナベリウスの森に降りたって暫く行った所で、偶然見知った顔を見かけた事。
「マンルーンか。仕事か何かか?」
「はい、こちらは落ち着きました。ヴァントさんも仕事ですか?」
「そういう訳じゃないな――あぁ、終わったなら、もし良いならついてくるか?」
 何気なさそうな彼の誘いに、少し考える。
 今日の仕事は全部終わったから、後は報告作業だけ。それも量は少ないし、報告期限にもまだ数日の余裕はある。
 それに、彼と共にどこかに行く事などそうはない。
 ――折角の機会だし。
「はい」
「分かった、はぐれるなよ」
 素っ気なく言って、森の奥へ向けて歩き出す。
 迷いもなく深い道へと分け入っていく彼に続いて、マンルーンも獣道を駆けだした。


 彼が向かっているだろう方向に向かうに連れて、周囲のフォトン濃度が上がっているのを感じた。
 いや、ダーカー因子が感じられなくなってきた、とするべきか。周囲の原生生物達の気配にも、見事なまでに敵意という物が感じられない。
 ――ナベリウスの森に、こんな場所が有ったなんて。
 てっきり、ナベリウスに安全な場所など無いのだと思っていたのだけれど。
「ここだ、眩しいから気をつけろ」
 言下、木々の向こうから光が飛び込んでくる。
 思わず目を瞑って、それから、ゆっくりと開く――
「――凄い」
 思わず口からこぼれ落ちたのは、感嘆の声だった。
 鬱蒼とした森林から変貌した光景は、遠く果てまで開けた平原と、その果てに見えた透き通った湖。
 ダーカー因子など欠片も感じられない、またアークス達の姿すらない――
 純粋な、美しい世界。
 隣で同じく世界を眺めていただろうヴァントが、楽しそうに笑うのが見えた。
「俺が見つけた場所だ。他の奴と来たことは殆どない――ここの空間を壊されたくはなかったからな」
「そうですね……こんな、綺麗な場所――」
 瞬間、がさりと遠くで大きく木々が揺れる音がして。
「あぁ、来たか」
 ヴァントがそちらを向いたのに、マンルーンも続いて。
 凍り付いた。
 森林を揺らしながら現れたのは、巨大な――白髭の生えた岩熊。ロクベルト。
 普段出会うよりも遙かに大きな個体。群の長、と呼ばれても納得できるレベルに強大な。
 マンルーン単独で相手をしても、正直、勝つ自信など欠片もなくて――
 が、マンルーンの胸中など知らないとばかりに。
「よ、遅かったな」
 ヴァントが片手を軽くあげて、
「グゥォゥ」
 ロクベルトが其れに合わせるように手を上げた。
「……え?」
「ロク、酒は良いのを揃えてきたぞ。そっちは?」
「ゴォゥ!」
 景気良く突き出された腕先には、巨大な猪――そういえば時々見かけた気がするーーの死体である。
「ゴゥ、オゥ!」
 次いでとばかりに、ロクベルトが遠くを示すように腕を振る。その先、湖畔近くに、何故か巨大な流木――座りやすいように工夫がされた――と、近くで何か準備している巨大な狼夫婦。ファングバンシー、バンサー夫妻と、その子供らしい小さな子らが。
 ――訳が分からない。
 マンルーンは胸中でそう呟くのが限界だった。




 ――ふむ、緊張しているか。
 隣で若干体を強ばらせながら食事や飲み物を取っているマンルーンを横目に見て、ヴァントは酒を煽った。
 知り合いのアークス――歩く緊急事態、常時危険な法撃幼女、均衡を崩す者、等々、悲惨かつ物騒な二つ名が山ほど付いている少女、クーガ。そのサポートパートナーである少女。
 褐色の肌に金髪をサイドに分けていて、アイスグリーンの瞳。生まれつきか目がつり上がっていて、無表情――はっきり言って見た目は若干きつい印象の人間だ。緊張するとそれが顕著になるので誤解も多いが内情はその真逆、見た目で思い切り損をしている。
 マスターの性格が、知り合い以外には常に丁寧語を使う強烈な人見知りであり、幼女――子供のままに好奇心旺盛な、破天荒かつトラブルメーカーな性格であるのに対し、マンルーンの性格は真逆の真面目であり、かつ器用貧乏。
 人見知りはしないし丁寧な言葉遣いを主とするが、其れは有る程度以上の線引きをきっちり行っている、というべきか。仕事についてもきっちりと行うが、馬鹿正直に規定通りに行うために、はっきり言って要領は悪い。そして、慣れると心情がわかりやすいという事。
 ――こうして眺めているとよく分かるな。
 ここに誘ったのは気まぐれだったが、おもしろい反応が見れたので良しとすべきか。
 ちらりと横を見やる。わたわたと慌てながら、子供狼達が持ってきた焼けた肉――無論噛み跡が付いている――を受け取っていた。
 連れてきて、既に一時間ほどは経過している。カチコチの緊張は、まだ取れそうにない。
 ――そういえば、諷雫に話でも通しておけば良かったか?
 もう一人のアークスの名前を思い浮かべながら、追加の酒を注ぐ。そろそろウイスキーにでも変えようか。
 マンルーンの正式なマスターはクーガではあるが、現在の実質的なマスターは別になる。
「ウタ」を唄い、通常の術ではあり得ない膨大な火力を叩き出す、優秀なアークスの女性――諷雫。普段は、彼女のサポートパートナーとして、マンルーンは活動している。クーガの側から申し出て、諷雫側が受け入れたという事らしいが、正確に何があったのかはわからない。
 ただ、長時間離れること位は、流石に伝えておくべきではないか――今更遅い気もする。
 ――まぁ、いいか。今はただ、酒を楽しもう。
 後は野となれ山となれ、と感情のままに、ヴァントは隣のロクと何回目か分からない乾杯を行った。




「――ヴァントさん」
 焼き上げた猪の肉を全員分切り分けながら、マンルーンは背後に居るだろう放浪者に問いかけた。
「何だ?」
「――あの、どうしても気になったことがあるんですが。聞いても良いですか?」
 ヴァントと自分を除いて、他の岩熊や狼達には配り終えている。
 最後に残った二切れにさっと塩胡椒を振りかけて、彼の元まで運んでいく。
「ありがとう。あぁ、何でも聞いてくれ」
 酒が入っていて心地が良いのか、普段よりも柔らかい声の彼に焼けた肉を手渡しながら、マンルーンは彼の隣に腰掛けて、
「どうして、その、こちらの皆さんの言葉が分かるんでしょうか? ……翻訳機能はまだなかったと思うんですが」
「あぁ、俺はここで生まれ育ったからな、大体分かる」
「はい?」
 ――聞き間違いだろうか。
 ここで、生まれ、育った?
 二度ほど瞬きを繰り返す。其れに、彼は不思議そうに首を傾げた。
「ここで生まれ育ったから、大体内容は推測できるが――其れがそんなに奇妙な事か?」
「訳が分かりません!」
 思わず叫び声が漏れていた。まるで諷雫のように。
 アークス――というか、一般人を含めても、シップ内で生きている限りは絶対に出生から育てられるまで、アークスシップ内で行われる筈だ。
 そんな宇宙船団オラクルに属する者が、どうしてナベリウスで生まれることができるのか――
「俺も初めて聞いたときは訳が分からなかったがな。俺の親は、俺と同じように放浪するのが好きだったらしくてな。アークスシップで産むことで、どちらかが確実に育成の為にアークスシップに居なければならないことを嫌ったらしい。故に外で生んで育てれば、と」
「故に、って」
 ――そんな、簡単に。
 話を聞く限りヴァントが第一子だろうに、森の中で妊娠・出産、育児を行うなんて。いくら以前のナベリウスがダーカー汚染が少なかったとはいえ、流石ヴァントの両親というべきだろうか。
「アークスシップに連れてこられた当時は突然狭い場所に押し込められて森へ戻れないだのなんだの言われて窮屈だったな。アークスの素質が認められなかったらどうなっていたことやら。最悪周囲皆殺しにしてと考えていたが」
「才能が有ってほんっとうによかったです」
 心底ほっとしながら、マンルーンは小さく呟き、自分用の肉に口を付けた。


 ――あとがき。
 というわけで、アークスとサポートの交流記録的な短編です。
 こちらのマンルーンは本編での描写通り、相方のキャラクターのサポートパートナーとなっています。最近出現率が高くなってきましたので、こうした短編でキャラの様子やどういった性格をしているのか、などを表現してみようかと。
 内容の半分程度はアークス・ヴァントのぶっ飛んだ生活になりましたが。
 彼は大体、アークスシップに帰っていない時はナベリウスで生活してます。多分最もナベリウスを楽しんでいるアークスだと思います。

 一部のナベリウス森エリアにおいてダーカー因子が存在していない理由として、ヴァントの両親が一部のロックベア・ファングバンサーの長にフォトンの使い方を教えたせいで一割程度の部分は自衛出来ているとか、今のロクについては昔からヴァントの友達だったとか細かい設定は幾つかあったりしますが、短編ですのでまぁいいやと。

 では、また次の物語にて。多分次も説明的な何かです。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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その切り口は斬新w

猪...?

巨大なダンゴムシはいるが...w

はっ!
焼き鳥出来るじゃん!
アギニスとラッp...

Re: その切り口は斬新w

<り~ぜさん
 其れ以上は背後から二丁拳銃持ったラピピが飛び掛ってくるので危険です(・・ )
 猪とかの通常生物も森なんだから普通はいるだろ、と。
 アギニスに関してはマジでおいしそうだけど、多分普通に小鳥とか打ち落として食ってるんじゃないかなヴァント(・・ )
プロフィール

ヴァント

Author:ヴァント
 PSO2世界を旅する、気楽な放浪者の綴り草です。
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