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Possible world~ある逢瀬~

 ある逢瀬。
 一人と一人の物語。
 よろしければ続きから、お付き合い下さいませ。

 ※6/17日:序盤の表記の一部を変更しました。後半で初めて、っていってんのに……orz


「うわー、なんか随分盛況だねー」
 ストリートエリアの中心にある、ショッピングモールの一角――薄暗い光源の中、所々から香ばしい匂いが漂い、年端も行かぬ子供らの泣き声が響いている、映画館のエリアにて。ユキナミは周囲の群集を見回して、ただ呆然と呟いた。
「そうですね、随分と人が多いです。マスター、迷子になっちゃ駄目ですよ」
 視界を埋め尽くす程度には多い人込みの中だから、リユイの進言も確かに理解できる。ただ。
「いや、まぁ其れはいいんだけどさ。あの、リユイ? 右腕に何でそう抱きついてくるのかな?」
 両腕でぎゅっと抱きしめるように、密着してくる隣の少女に対し、ユキナミはただ呆れ顔を見せた。
 ユキナミとリユイの背丈は比較的近い。こうして密着されていると、顔の位置は非常に近い。吐息すら聞こえそうな程度に。
「離れたら嫌ですから。どこかに行っても嫌ですからね、いつもみたいに」
 お陰で、随分と頬を朱に染めたリユイのはにかむような笑顔が間近で見られたけれど。
「あーうん、否定はしないよ。こないだも先行しすぎたからねー」
「結果としてファンジで一人遠くに連れて行かれましたからね。これなら一緒について行けますから」
「いやそもそも巻き込まれないように気をつけるって発想は――」
「――ん、あれ? ユキナミ氏?」
「へ?」
 人ごみの中から聞こえた、酷く特徴的な敬称付きの女性の声。ユキナミが知る限り、この呼び名を使うのは一人しかいない。
 人の間をすり抜けるようにして近づいてきたヒューマンの少女に、ユキナミは左手を振った。
「あー、朱雀さん! どしたの、ってホントどしたの目あっかいよ?!」
 そうして思わず叫んでいた。
 紅髪をポニーテールに纏めている、どこか中性的な面持ちをした少女の瞳には、幾つかの涙の粒が見え隠れしている。
 ――あ、そういえば。
 思い当たって、周囲を――今映画を見終えたばかりだろう人達の様子を眺める。やはりというか、朱雀同様に涙を目に貯めている人々がいるのが分かった。
 全員が泣いている、という様子こそ無いが、所々に散見される。恋人やら家族で来ているようだが、女性の方が感受性が高いのか、若干女性の方が涙を流している率は高そうだ。
「あぁ、ユキナミ氏。いや、今しがた見てきた映画に心揺さぶられてね。久方ぶりに泣いた物だよ――ところで、君とリユイ氏がこんな所に来るなど珍しいね。槍でも降るのかい?」
「いきなり無茶苦茶言うね……いや、リゼットさんからチケット貰ったんで、デートに来てみた」
 隣の少女が顔を真っ赤にして俯いた。
 朱雀は意表を突かれたように真顔になって、それからニヤリと口元を緩めた。
「なるほど、デートか。映画の選択は悪くないよ、ユキナミ氏。この物語は比較的カップル向けの物。更に言えばユキナミ氏、君らにとっては間違いなくね」
「というと?」
 彼女は答えず、ただ笑って背後を指し示した。
「其れは見てのお楽しみという奴だよ。上映は十分後、行ってみるがいいんじゃない?」



 其の物語は、ごく有り触れた、アークスとアークスの物語。
 ヒューマンの少年ラウドと、ニューマンの少女リント。
 最終試験での一時的なコンビとして出会った二人だが、ヒューマンハンターとニューマンフォースという互いを補い合う形で好成績を残し、同期として行動を共にし、激戦を潜り抜け、互いへの信頼を紡いでいく成長記。
 少なくとも、前半はそんな話だった。
 お互いへの想いを募らせていく、二人の心情を彩りながら話が進みーー二人が生きるアークスシップに、ダーカーの群が襲来したのは、そんな時だった。
 必死に戦い抜く二人を描く物語は、クライマックスへと進んでいくーー


『――忘れない。絶対に、忘れないから』
 スクリーンに大きく広がった夜空の中、少女の慟哭だけが木霊する。
 パァン、と大きな、そして悲しげな戦火の花が、真闇のキャンパスへ咲き誇り、夜へと消えていく。
 涙に濡れたリントの先で、ラウドが静かに笑っていた。全身を刃に抉られ、身動きすらも出来ない中で、其れでもただ、満足そうに。
『――』
 口元が小さく揺らいで、そうして其の姿が光へと変わっていく。消え逝く少年に、少女は抱き付いて――血まみれの口元に、口付けた。
 ――例え世界が終わっても、私は貴方を、ずっと、想ってる――
 悲しい、強い少女の独白。そうして、抱かれた腕の中で、少年が光へと消えて行く。
 夜空に咲く戦火の花はいつまでも、少年に捧げられる献花の如く、輝かしいばかりに瞬いて――



 ――あぁ、うん。
 誰かを守り抜いた少年と、守り続けられた少女の二人。
 死に呑まれながらも大切な人を守った彼の姿と、守り続けられた少女の対比は、見る者の涙を誘う物ではあるのだろう、きっと。
 事実、周囲から所々、嗚咽を堪える音や涙を拭う音が聞こえてきていた。ユキナミ自身は、そうでもなかったのだけれど――彼はきっと満足したのだろうから。この結末は、ラウドが望んだ物だろうから。
 ちらりと隣を見る。リユイも何だかんだと涙脆いから、きっと――
 ――あれ?
 ハンカチを取り出そうとしていた手を止める。彼女は、ただ真っ直ぐにスクリーンを見つめていた。涙など一切見せず、どこか怯えたように体を震わせながら、されど決して目を離さずに。
「リユイ、大丈夫?」
 小声での問いかけに、彼女は静かに此方を振り向いて――
 ぎゅっと、腕を掴まれた。不器用なまでに力が篭っていて、少し痛みすら覚えるほどに。
「――何か、怖い?」
「――後で、話します。だから、今は」
 そういって、少女は握る手を強くして。
 エピローグが流れ出すスクリーンに視線を戻せず、ただ握り返すしか出来なかった。




 朱雀と出会った時と似たような光景になっている映画館ロビーを足早に出て。
 そのまま、ショッピングモールを後にして。
 テクテクと、リユイに手を引かれるまま、無言のままに歩き出す。
 ――こっちの方は、殆ど誰もいない市街地の外れじゃなかったっけ。
 空を映すスクリーンは、朱から闇へと変わりつつある。いつもなら帰り支度をしている頃だけれど、彼女は決して帰ろうともせず。
 ユキナミも言葉を発さずに、ただ少女と共に歩き続けた。


 彼女が足を止めたのは、ストリートエリアの最奥――寂れたベンチと、草臥れた公園だけが残っている場所。
 アークスはおろか、一般住民すらも早々訪れる事のないような、誰からも忘れ去られた世界。
 ただ、ユキナミはこの雰囲気は気に入っていた。リユイと二人で過ごす事も、何度となく繰り返してきた場所――とはいえ、此れほどまでに沈んだリユイと来た事は、流石にないのだけれど。
 リユイに従い、近くのベンチに腰掛けて、軽く息を吐く。ちらりと見やった彼女の表情は、やはり変わらず暗いまま。このままだと、埒があかない。
「――リユイ、本当どしたの?」
 故に、即座に直球を投げつける。
 元より、彼女がどうしてこれほど沈んでいるのか、ユキナミには想定もできなかった。だからこそ、彼女に尋ねるしかない。
 其れに彼女は、心を落ち着かせるように、息を大きく吸い込んでから――
「――消えませんよね」
 そう、言葉を紡いだ。怖がりな、震え声で。
「――リユイ?」
「私を、残して、行きませんよね?」
「えっと、リユイ――」

「――絶対に、嫌です。一人は、嫌です」
 言下。
 思い切り、リユイに抱きしめられた。
 震える腕で、ぎゅっと。
 強く、強く。
「あのお話は、私には凄く怖かったです……とても、怖かった。私が死ぬのは構わないんです。私はマスターが生きていてくれたら、其れ以上は何も要りません」
 抱きしめている彼女の腕が、一度、大きく震えた。
 抑えきれないように、離れたくないと叫ぶように、少女の力が強くなる。
 正面から抱きついていたリユイが、ゆっくりと顔を上げる。怯える瞳は、雫で僅かに揺れていた。
「ごめんなさい、急に言い出してごめんなさい。でも、凄く怖いんです。マスターが――ユキナミさんが、居なくなるのは嫌です」
 ――あ、今、名前。
 初めて呼んで貰えた。今まで、一度たりとも呼ばれなかった名前を。
 少女も気づかぬ無意識のうちに発していたのだろう。抱きしめる腕は変わらず、表情も曇り空のまま。
「あの映画では、男性だけが――ハンターだけが死亡しました。其れも、フォースを守り抜いて。自分だけが、ぼろぼろに、なって」
 其れでも尚、彼女は言葉を紡ぐ。
 紡がれる声が、震えて。
 握られている手が、震えて。
「たった、独りで。フォースだけ、生き残って――もし、それが私だったら、って考え出したら、もう、止まらなくなって」
 怯えて、怖がって、抱きしめて。
「嫌です。私だけ、生きるなんて、嫌です」
 彼女は、一人、泣いていた。
 必死に、叫びを上げていた。
 一緒が良いと。最後まで、隣に居たいと。
「――私は、ユキナミさんと、一緒に、生きていきたいんです。最後まで。この世界が滅びるとしても、その最後まで、ずっと二人で――」
 ハンターと、フォース。守る者、守られる者。其れは、ユキナミとリユイにも、マスターとサポートということなれど、何一つ変わらなくて。
 映画のヒロイン、リントもまた、最後まで叫んでいた。
 彼を助けられないことを理解するまで、必死に力を使い続けた。
 もしかしたら、彼女もまた、共に死にたかったのかもしれないけれど――
 リユイが、其れを思ってしまったのなら。
 共に死にたいと、願っているのなら――
 共に生きたいと。一人で生きたくないと、そう願うなら。

 ――泣き顔は、見たくないかな。
 それに、死ぬつもりもない。
 ユキナミ自身、死にたい事はないのだから。
 怯える少女の手を取って、ぎゅっと、その体を抱きしめる。
 未だに震える少女の肩を、軽く叩いて。
「大丈夫、リユイ。一緒だよ、ずっと」
 聞きようによっては、告白にも等しい其れを。
 少年は、想いのままに声とした。
 彼女と共に生きたいと願う、本心のままに。
「――本当に? 本当に、ずっと一緒に居てくれますか? 私を置いて、行きませんか?」
 少女が顔を上げる。ボロボロとこぼれ落ちる大粒の涙を苦笑しながら指で拾って。
 ユキナミは、そっと彼女の体を包み込んだ。そうして――
「大丈夫。僕は、リユイと――」



 其の、刹那。

 ――ガシャァァッ!
 激しく鼓膜を乱打する、暴力的な轟音と。

<緊急! 緊急警報発令!!>
 切羽詰まった、絶叫のようなオペレータの叫びと共に。

『ギァァァッ!!』
 夕焼けの空を砕きながら溢れだした血色の闇が。

 平穏だったソーンの世界を、瞬時に絶望へと塗り替えた。




【さぁ、害虫退治は任せたよ、下僕達――】
 薄暗く閉ざされた世界の片隅で、其の男は一人、笑っていた。





――あとがき。
 本編中のフレンドさん元にしたキャラクターなのですが、本人そんな涙脆くはないと思います。多分。
 ※私が書いてる物語では、サポートパートナーとアークスの身長については殆ど大差ないです。
  以前どこかで描写したかとは思いますけれども、もししていなかったらアレですので、ここで改めて描写しておきます。

 物語の転換点。
 存在しえた物語。
 今回はあとがきは短く行きます。
 よろしければ、また、お付き合い下さいませ。
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うぉっ!

勝手に一人で逝くんじゃないよ!
って、あたしはキレるわw
やっぱり、一緒が良いよね(^_^)
残された側の気持ちを考えろやっ!
ってなるものw

何にしても、あたしはしおらしくはならない気がするwwwww

Re: うぉっ!

<り~ぜさん
 一人置いて逝かれると辛いものがあるよね実際(;; )
 キレてもいいと思う、自分も切れて暴れまわって首を吊るイメージガガガガ
 しおらしくならずに暴れて暴れて次に進めば一番だと思います(・w・)
プロフィール

ヴァント

Author:ヴァント
 PSO2世界を旅する、気楽な放浪者の綴り草です。
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