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Possible world~ある休日~

 唄へと繋がる物語。
 もし良ければ続きから、お楽しみ下さい。




 きら、と視界のどこかで光が走る。
 眩しく思いながら、瞼を開く。ユキナミが部屋から見つめた外の景色は、既に朝の日を迎えていた。
「――ふぁーあ……」
 ぐ、と大きく体を伸ばして伸びをする。軽く全身の骨を鳴らしてから、そっと隣を見やる。
 抱き枕に抱きついて、柔らかい寝息を立てている少女に布団を掛けなおして、ベットからそっと抜け出す。
 テクテクと部屋の外に出て、晴れ渡った天空世界を眺める。シーナリーパスによる気分だけの物だけど、其れでも、大きく晴れ渡った世界は見ているだけで心地良い。
「――んー、今日はどうしよっかなー」
 特に空いても居ない腹を押さえながら、思いつくままに呟いた。
 いつもならナベリウスかウォパル辺りの調査依頼をこなしている所だけれど、現在、アークス側から届いている調査依頼は全部終わらせた後。ふらっと一人旅に出るのも面白そうだけど、全部終わった後にリユイから説教されるのは確定している。
 いっその事リユイを起こそうかとも思うけれど、昨日は夜遅くまで色々してたから、休ませてもあげたいし。
「……お小遣い幾ら残ってたっけな」
 財布を開いて、メセタ残額を確認。そういえば昨日の依頼料からお小遣い抜くの忘れてたっけなー、と思いながら、数千メセタあった中身に安堵する。
 依頼料はリユイが管理してくれているから、確かに無駄遣いはしなくなったけど――ジュースすら飲めなくなる事も度々あったので。
「ちょっと朝早すぎるかなー……ま、いいや」
 パチン、と財布の口を閉じ、寝巻きをさっさと脱ぎ捨てる。いつもの南瓜色の外套を身に纏い、部屋の隅の洗濯機に服を放り込む。
 今日は何処に行こうかな、とそんなことを思いながら部屋を出る。カードキーを通して施錠を終え、ユキナミはワープホールへと足を進めた。




 朝方のゲートエリアは、比較的人の入りはまばらである事が多い。
 というより、朝早くから好き好んで仕事に出掛ける人間など殆どいないというべきか。窓口こそ24時間空いてはいるが、暇そうにしていることが殆どだ。前にブリギッタが話していたが、爪の手入れやら雑誌を読みふけって時間をつぶしてます、という暇を持て余した状態だと言っていた。
 ただ、中にも例外はいるもので――
「やっはろー、ユッキー!」
 閑散としたゲートエリアに、朗々と響く少女の声。其れが聞こえた方――アークスの為にと併設されたカフェテリアに視線を向ける。
 その一角で手を振っているポニーテールの少女へと、ユキナミもまた手を振り返した。
「ヘロー、リゼットさん。また朝早いねー」
 狐色の髪と勝ち気な顔をした、フォースの少女――リゼット。彼女は比較的朝方、他に誰もいない時間帯を中心として活動するアークスだ。どうにも気に入った相手以外とは組まないという事らしく、大体の場合はソロでいるところをよく見かける。
 以前、ひょんな縁から知り合ったけれども、今まで繋がっている事を思えば、比較的気に入ってくれてるみたいだ。
 お金あってよかった、とそんなことを思いながら、ユキナミはカフェテリアの扉を潜った。
「あ、いらっしゃいユキナミ君。いつもの?」
「いつものでお願いしますー」
 こちらに気づいた顔なじみの店員に注文しつつ、彼女の居る対面の椅子に腰掛ける。
「仕事帰りか何か?」
 席に置かれている琥珀色の液体――カフェテリアではあるが、アークスからの要望でアルコール類も販売している――とチーズ。彼女の仕事終わりは大体軽く飲んでいる事が多いから。
 其れに、彼女はにんまりと笑った。
「久しぶりに割のいいクエストだったよー。殆どダーカーも出てこなかったし、軽く採掘しておしまい。毎回あんな楽だったらいいんだけど。つーか一生ここで飲んでいたい、お酒最高」
 見た目は明らかに未成年の域だが、彼女は既に成人体だ。アークスにアルコールに関する縛りは特にないから、元々問題はないのだけれど。
「相変わらず自堕落っぷり発揮してるね・・・・」
「そっちはどーなの? いつもの恋人ちゃん居ないけど。喧嘩でもした?」
 ニヨニヨと笑いながら――出来上がっているのもあるだろうけど――笑う彼女に、ユキナミは嘆息しつつ頭を振った。
「まだ寝てるだけだよ、ってか恋人じゃないって……」
「お似合いよ? なんならこのおねーさんが直々に教えたげるよ? あの子を悦ばせられそうなテクとか――」
「おい酔っぱらい、子供にいらんこと教えてんじゃねぇよ」
 酷く凍てついた男性の声。聞き覚えのある野太い声に、ユキナミはリゼット共々そちらを振り返った。
 ロビー側に立っていた、黒目黒髪の赤マフラーを巻いたヒューマンの男性。若干呆れたように笑う、テクターの青年に、ユキナミは軽く手を挙げた。
「やっほー、スウさん」
「何よスウ、折角面白くなりそうなとこだったのに」
「よ。面白くも何もねーよ、余計なことでからかうな。まーた保護者から殺されんぞ」
 言いながら、彼もこちらへとやってくる。彼も仕事終わりだろうか、若干草臥れた感がある。アイスコーヒー、と気だるげにウエイトレスへと言葉を投げて、隣のテーブルに座る。それから、四肢を思い切り投げ出した。
「もうほんっと疲れたわー。頼むからユッキー替わってくれよ、ヴァーダーの全火力相手に正面から囮になれとか……俺だって死ぬんだぞ」
「いや、あれまともに喰らってピンピンしてる時点でおかしいことに気付きなさいね、あんた」
 半眼でリゼットが嘆息と共に呟く。隣でユキナミも同意して頷いた。

「不死なる男」――スウの通り名として、どこかで聴いた言葉。実際ユキナミ自身、目の前で其の由来をはっきりと見た。
 地獄竜の火炎を浴びながらも笑って突撃していった挙げ句、大した傷も残っていない時点で色々とおかしい。
「スウさんだけだよ、あれ耐えれるの。普通病院送りだからね一撃目の時点で」
 最も、其の強固さが原因で、誰かとクエストに出る場合、確実に先遣隊かつ囮役にされてしまうらしいが。
「あんなんガードしてれば誰だって耐えれるわ」
「昨日、他のアークスさんガードごと吹き飛ばされて送還されてたよ」
 半眼で続けた所で、コトン、と目の前に橙色の液体がなみなみと注がれたグラスが置かれた。
「お待たせユキナミ君、いつものオレンジジュース。其れとおまけのクッキーどうぞ」
「あ、ありがとー」
 併せるように置かれた、モザイク模様のクッキーに手を伸ばす。そういえば朝ご飯もまだだった。
「リゼットさんもどうぞ。あんまり、お酒ばっかりでも体によくないですよ?」
「分かってるよー。も一杯ちょーだい」
「ほんとに分かってるの、それ?」
 呟きながら、おまけしてくれたクッキーの皿を前に出す。彼女も其れに手を伸ばした。
「はい、スウさんもお待たせしました。何か食べないと体によくないですよ」
「さんきゅー……トースト頼み忘れた、それで」
「はい、少々お待ち下さいね」
 二人分の注文を受けて、にこやかな顔で去っていく女性を見送りながら、ユキナミは二枚目のクッキーに手を伸ばした。
 バリボリと喰い荒らしながら、ストローをくわえる。そのまま吸い込むと、よく冷えた甘美な液体が、心地よく喉を滑り落ちていく。
「あー、幸せー……」
「ほんとに幸せそうな顔すんな、お前」
「だってねー、ジュースだよ? 其れにクッキーだよ、最高じゃない。リユイも起こしてくればよかったかなー」
「眠ってるなら眠らせておいてあげる方がお姉さん良いと思うなー、死にたくないし」
 グラスを傾けて琥珀色の其れを飲みながら、若干冷や汗と共にリゼットが言う。スウは楽しげに口元を持ち上げて、コーヒーを口に含んだ。
「そんな苦いの良く飲めるね、スウさん」
「お前も年喰ったら分かるわ、この美味さ。最高に落ち着くぞ」
「そんなのよりウイスキーの方が良いに決まってるじゃない、馬鹿ねぇ」
 ケラケラと楽しげにリゼットが揶揄する事に、スウは呆れたように言った。
「ウワバミが何言ってんだ。そーいやユッキー、お前恋人との仲は進んでんの?」
 そうして突然に話の矛先が変わり、ユキナミは静かに肩を落とした。
「スウさんまで其れ言うか。リユイとは別に恋人でもなんでもないって」
「そー言うって事は全く進んでねぇんだな」
 ――なんか、可哀想なモノを見る目で見られてる気がする。

 と。
「あんだけ分かりやすいのも珍しいのにねぇ……あ、そうだ。ユッキー、これ」
 何かを思いついたように、突然にリゼットが自分の荷物に手をやった。中をごそごそと探し回ってーー取り出したのは、二枚分のチケット券だった。
「何それ?」
「ほい、プレゼント」
 ぽい、と放り投げられた其れを慌てて受け取る。
 長方形の紙に、綺麗なイラストと何かのタイトル。
 ――映画のチケットか何かかな?
「それねー、前になんかの景品で当たった映画のチケット。あたしは面倒でスルーしてたんだけど、よかったら彼女と行ってきたら?」
「えー、でもいいの? これ、リゼットさんが当たったんでしょ?」
 問い返すと、彼女はつまらなさそうに肩をすくめた。
「真昼間にしか行けないようなチケットに興味はないわよ。お昼は美容と健康の為に寝る時間だし」
「つくづく真人間とかけ離れた生活してんのな、お前」
「夜に寝る方がいいんじゃない?」
「あーもー、そんなのはどうでもいいの。其れで、どうする?」
 リゼットの質問に、チケットを手にしたまま思考する。
 ――映画、かぁ。どんなのだろ?
 そもそも、映画というのが一体何なのか、ユキナミは知らなかった。
 くーちゃんから話を聞いたことも有ったけれど、実際に行ったことはない。わざわざ出かける用事を作った事も無かったし、リユイと二人だけで行動するということも、余り無かったから。
 そういう意味で考えれば、丁度いいのかもしれない。今日のスケジュールは、初めから空いている。
「――それじゃ、折角だし貰うよ。ありがと、リゼットさん」
「どーいたしまして。デート、楽しんできなよ?」
「デート?」
 何のことやら、と小首を傾げる。其れがおかしかったのか、彼女は楽しそうに笑って、
「デートよ、デート。男と女が二人っきりで出かけるんだからね」
「へー、そんな言葉があるんだ」
「ん? あぁ、そうだ。恋人誘う時もそう言ってやれ。なんなら今日誘ってやれよ、きっと喜ぶぞ」
 スウが呟き、コーヒーを啜る。口元は楽しそうに笑っていた。
 実際の所、言葉の意味は余り理解できてはないけれど――少なくとも、悪い意味ではなさそうだから。
「了解、リユイが起きたら一度話してみるよー」
「おっけい、そんじゃ前祝いだ。こいつにジュースのおかわりしてやりたいんですけど構いませんね!」
「勿論ですよー」
 何時の間に来ていたのか、トーストをスウの前に置いて、ウエイトレスがにっこりと笑う。
「え、スウさんいいの?」
「あぁ。その代わりまた二人で遊びに来な。でもって、軽く飯でも付き合えや、それで十分だ」
「そーそ。其の時はあたしも呼んでね、どーせ暇してるからさー」
「私が当番の時間帯に来て下さったら、また何かおまけしますよー」
 ニコニコと、三者三様に笑う彼らを見回す。
 其の笑顔には汚れたものはなく、ただ楽しそうにしているだけで。
 ――よくわからないけど、まぁいっか。
 ユキナミは心の中で呟きながら、グラスに残った液体を一息に飲み干した。



 ――あとがき。
 という訳で簡単にお送りさせて頂きました物語、如何だったでしょうか?
 今作中に出てきた「リゼット」「スウ」のキャラクターについては、「この物語の登場人物はフィクションではありません」的な形で元ネタがあります。
 いや、元ネタというか、平たく言ってしまえばフレさんですね。
 ヴァントと絡ませる事は基本的に難しいのですけれども、ユキナミの方はシップでも色んな人と出会って楽しんでいる世界観ですので、全力で書かせて頂きました。
 次は何時頃書けるか分かりませんが……またの物語にてお会いしましょう。読了、ありがとうございました。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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非公開コメント

びっくりしたわw

あたしまんまだねえw

違うのは、下ネタの割合が8:2だって事だねw

Re: びっくりしたわw

<り~ぜさん
 色々洒落にならんわい(・・ )
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ヴァント

Author:ヴァント
 PSO2世界を旅する、気楽な放浪者の綴り草です。
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