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戦闘――喰われ果てた岩熊と

「――見つけた」
 緑良く生い茂る、惑星ナベリウス・森林地帯の一角。左右を木々に囲まれた、自然の通路が伸びる先。
 其の、視界の端に捉えたモノに対し、少年は端的にそう告げた。
 彼の言葉を受けて、今まで彼の隣で楽しげに笑っていた少女の表情が凍て付いた。
 怯えではなく、仕事前の戦人の其れに。
「侵食はどう?」
「随分と綺麗な花が咲いてる。間違いなくターゲットだ――クーナ、準備は?」
 呟きながら、少年が背中へ手を伸ばす。背負われた古木の刃が引き抜かれ、放たれるフォトンに木の葉が舞い散った。
 少女――クーナは、両腕に沿うように所持した蒼黒の刃を示して笑って見せた。
「六芒均衡に随分な言い様ね、ヴァント」
 若干、にこやかに笑うクーナの台詞に、少年――ヴァントは軽く肩を竦めた。
「誰だろうが聞くだけだ。どうする?」
「先行するよ。援護、よろしく」
 告げるや否や、クーナがその場から掻き消える。一陣の風となって、標的目掛け駆け出していく。
 フォトンの残滓を見届けながら、ヴァントもまた彼女の後を追った。


 生来、彼は粗暴ではあった。岩の如き肉体を新緑色の毛で包み込んだその大熊は、されど自然の中にあって、無為な殺生を行うことはなかった。誰かに教わる訳でもなく、このナベリウスに生きる者として。
 されど、今は――
 必要がなくとも、命を奪った。腹が満ちて尚、血肉を喰らった。其れが何故なのか、最早彼には分からない。怒りを、飢えを、
 ダーカー――宇宙を喰らうモノに巣喰われた成れの果て。己が変わり逝く最後まで、彼は何も分からない。
「ぴー!」
 彼の足下で、一匹のラッピーが怯え、震えていた。赤い林檎を手にした、弱々しい姿の獲物。
 其れへと向けて、彼はゆっくりと手を伸ばす。握り潰した肉片がこびり付いた掌を、哀れな標的へと向けて――
 ――ガギィッ!
 その腕に痛みを覚えて、反射的に其れを引っ込めた。
 驚愕と困惑が、そして、痛みへの憤怒が、全感覚を燃え立たせた。
 そうして、彼は気がついた。腕を伸ばした先、弱々しい鳥の前――蒼い髪を延ばし、刃を構えた敵の姿に。
 彼は、吼えた。


 ――何してるんだろ・・・・・・ホントに。
「ぴ、ぴ?」
 後ろに庇った鳥の声に、思考へと落ちていたクーナの意識が今へと戻る。普段なら見過ごして、否、その隙を利用して奇襲を仕掛けている所だったが、何故かこのラッピーは、見過ごすことが出来なかった。
「早く逃げて」
 言葉が通じるか分からないが、手振りでささっと逃げるように指示しながら、改めて思考を敵へと戻す。
 間合いにしてほんの数歩の、接近距離で吼え猛るロックベア。
 その瞳に意志はなく、頭には紅黒く濁った華が咲いていた。ダーカー因子に飲まれ、戻れなくなった存在の証。最後には姿形も意志も記憶も、何もかもを失って一匹のダーカーに成り果てる、その間際。
 破壊の感情のみに苛まれた、最も狂暴な状態。
 一撃は全てが強大で、避け損なえば即死する。クーナは両腕の刃を強く握り直した。
 ――来い。

<<グォォォッ!!>>
 内心を知ってか知らずか、鼓膜を引き裂く叫びと共に、ロックベアが大きく右腕を後ろへ振った。
 即座に放たれる致命の一撃を、体を横へと揺らして回避。遅れて吹いた暴風に髪を遊ばれながら、前へ。
 腕の真下を駆け抜けざまに刃を這わせ、抉りながら懐に。接近に気付いたか、岩熊の顔が僅かに歪む――その顔面に、存分に刃を振るう。
 ガガガッ、と激しく岩肌が削れる音と共に、標的が悲鳴を上げた――されど。
 ――ちっ。
 舌打ち。斬撃が浅い。ツインダガーでは、早々この堅い体を崩せない。
 ロックベアが呻きと共に左腕を振り回す。その腕を蹴って、更に上へと。
 ――まだまだ。
 空中に留まったまま姿勢を変え、ロックベアの背面へと飛びつき、無防備なその背を思う存分切り刻む。

 双小剣の本質は、空中における圧倒的な機動力と、未曾有の斬撃。空中戦においては他の追随を許さず、地に囚われることなく休ませることなく、ひたすらに斬撃を叩き込む。
 非力なクーナにとっては、最も性に合った戦闘スタイルである。

 着地、直後に後ろへ。今まで居た場所に、無茶苦茶に振り回されたベアの腕が落ちてきた。
 大地を揺らす一撃も、当たらなければ如何なる意味もない。振り下ろされた衝撃が抜けると同時、地を蹴って再度懐に。もう一度、斬撃を叩き込む。深く入ったか、表情が明らかに歪んだ。
 小蠅を払うように腕が激しく振り回されるのに合わせて後ろに。僅かに切れた息を整え、標的を見据える。
 紅く、歪んだ瞳は、明らかな怒りを叫んでいた。ロックベアは大きく天を仰いで、憎悪に満ちた叫び声を上げ――

 クーナは、静かに微笑んだ。
「――後はお願いね」
 誰に聞こえることもない呟きに、少女と岩熊の狭間に舞い込んだ影は、
「――無論だ」
 黒き外套を身に纏った放浪者、ヴァントは、たった一言を告げると共に、神樹の大剣を振り上げた――


 天を仰いでいたロックベアは、その変化に気付かなかった。 闇色に塗り潰された怒りのまま、感情を叫んでいた岩熊は、その瞬間に気付かなかった。
 全てを見定めていた少年が、全ての幕を引きに来たことに。
 叫びを終えて、敵を見下ろそうとしたその頭上から、蒼き刃が振り下ろされていた事を、彼は終ぞ理解することはなかった。


 其れが振り下ろされた瞬間、鼓膜を引き千切るような衝壊の音と共に、重力から解き放たれたかの如き勢いで土煙が大空へと舞い上がる。巻き散らされた衝撃に木々が吹き飛び、爆心地に近い場所など根本からへし折られていた。
 そうして、周囲の生態系に甚大な被害を放った張本人は、何の気もなしに振り下ろしたカグダチを背負い直して、ただ静かに言葉を紡いだ。
「これで依頼も完了だな」
「――相変わらず桁違いだよね、ヴァントが撃つその技」 実に涼しげな顔で笑う少年に、クーナは冷や汗を拭って呟いた。

 人の背丈ほどもある大剣に、其れを悠々と上回るフォトンを流し込み、形成した蒼き大剣を力尽くで振り下ろし、敵を切り裂く技――オーバーエンド。
 通常は一撃叩き込むと同時に消失する――其れほどまでに自らのフォトンの消費が激しい。並のハンターでは放つと同時に膝を突く程度には。
 が、彼は至って涼しいままだ。ロックベアが激昂した瞬間は数秒となかった――その間に、クーナとベアの狭間に飛び込み、秒にも満たない狭間に刃を形成。そしてベアが顔を下ろすと全く同時に振り下ろした。
 その膨大なフォトンの衝撃は、頑強な肉体を二つに切り裂き、大地へと沈め――世界ごと爆散させた。最後の爆発も、普通に撃ったオーバーエンドには一切存在しない。
 ――普通は、切り裂くどころか深手を与える程度なんだけど。
 それでも及第点には十分すぎる。彼の一撃は、もはや別の技にも等しいまでに昇華されていた。其れは、偏に彼がテクターとしても最上位の実力を有するからこその先述でもある。
 挙げ句、全力を出した戦い方ですらないのだから。
 ――つくづく自信失くすなぁ、別に大型相手が苦手だっていってもさ・・・・・・。
「――クーナ、どうした?」
「え? あ、あぁごめん、ボーッとしてたよ。何?」
 慌てて、彼に言葉を返す。すると、彼は困惑したように目を細めて、
「――其れはどうした?」
 す、とクーナの後ろを指し示す。併せて視線を逸らし――
「え?」
「――ぴー♪」
 少し変わった、嬉しそうな声を上げてすり寄ってくる一匹のラッピーがいた。
 ――あ、さっきの子だ。
 そんなことを思いながら、足下に顔をすり寄せてくる幸運の鳥を見やる。彼か彼女かわからないが、敵意はない――所か親しみしか湧かない。
 どうにも、さっき助けたことで親しまれたか。ついでにいえば、後ろにどこかでみたような林檎が転がっていた。
「・・・・・・随分懐いているようだが、どうする? 倒す気にもなれんが、放置もし辛い」
 普段から、依頼でもなければ一切を無視する相手が向けてきた感情に、困惑しかない顔で彼が呟く。
「そだねー・・・・・・どうしよっか?」
 きっと同じ顔をしているんだろうな、と思いながら、クーナもまた足下の鳥を見つめるしかなかった。


 ――あとがき。
 以上、自分にとっては久々の戦闘風景の描写でした。
 下手になってるなー、と失望しながらも、まぁ、とにかくも書き上げられたので満足です。
 暫くは旅風景描写や戦闘描写の練習を兼ねて、色々書いてみようと思います。
 よければまたの物語に、お付き合い下さいませ。
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