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挿話――幸運の黄色い鳥

「ピ、ピー」
 空から暖かい光がほわほわと落ちてくる、朗らかな小春日和の森の中を、其のラッピーは一匹で歩いていました。
 お気に入りの鼻歌を口ずさみながら、誰かに狙われる事もなく、悠々自適に優雅に気楽に。
 道端の木に生えたお気に入りの実を齧って、森の中を宛もなくふらふらと。
「ピー♪ ピー……ピィ?」
 そんな彼でしたが、不意に、歩みを止めました。黄色の手羽を目の上にかざして、大きな目を開いて、少し遠くを見てみます。
 木々の隙間から見えたのは、彼の仲間に良く似た、けれど少し大きくて、背中に変な物が付いた一匹の鳥でした。
 誰だろう、と興味を持って、ちょっと小走りに駆け寄ります。そのまま、真後ろまで近づきました。
 けれど、其の鳥は気付いてもくれません。反応もしません。
 つまらなくて、前に回って、顔を覗き込もうかなと考えた時――
「……なんで、アイツは気付いてくれないんだろ……」
 良く分からないけれど、なんだか泣いているような声が、其の鳥から聞こえてきました。
「『クーナ』に生きていて欲しい、って言ってくれたのにねー……何回も誘ってるのにねー……なーんで付き合ってもくれないかなー……告白に、気付いてもくれないかなー……」
 少し、ドロドロとした重たい何かが、声に混ざり始めたみたいです。彼は、思わず回り込むのを止めました。
「確かにさ、支えてはくれてるよねー……一緒に暮らしてはくれてるけどさー……別に何かある訳でもないしー……マトイちゃんもたまに一緒に寝るしー……期待しても何にもないしー……どーせ耳年増ですよーだ……」
 切り株に腰掛けている後姿が、凄く悲しげに沈みます。それ以上に、周囲の空気が暗く黒く沈みます。切り株に生えている茸が、ゆっくりと伸びている気がしました。
「『好き』とか『愛してる』とか言えないあたしも駄目なんだろうけどさー……なーんで、なーんで気付いてくれないかなー……言ってくれないかなー……」
 ヤサグレた声に、暗澹と、光すらも飲み込まれていきそうです。黄色かった筈のその背中が、何故だか黒く歪んで見えました。
 彼はそっと、後ろに下がります。それから、きょろきょろとあたりを見回しました。そうして、お目当てのものを見つけて、
「こんなスーツまで着てさー、頑張ってるのにさー……ヴァントの馬鹿ー……馬鹿ー……」
 空ろ空ろと、泣き声と呪いとが混ざった言葉を吐いている鳥の後ろに、其の果実を置きました。
(ピー……ピー!)
 気にしないで、いつかは良い事あるよ。そんな事を考えながら、彼はまたテクテクと歩き出しました。


「すまん、今戻った。今日の分はこれで――クーナ? 其の果物は?」
「……え? あ、ごめん、あれ? 林檎? 二つ有る――ねぇヴァント。折角だし、一緒に食べない? ゆっくりするのもいいしさ」
「ふむ……そうだな、頂こうか」
「うん!」


 いつかの未完成作品のおまけのようなものでした。
 鳥人気だったので、つい。
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